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その1

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「…見つかったら殺される…」
男はタンスの中で息を潜めて隠れていた、体は小さく震え、足も動かない。
下からドンドンと階段を登る音が聞こえてきた。ガチャりとこの部屋のドアが開き
それは入ってきた。
男の目からそれは確実に“ヤバい奴”とわかった。
全身を黒い服で身を包み、鉄の仮面を被り、一目見て3メートルを超えそうな巨体で棺桶を担ぎ
手にはピッケルを持っていた。
「あのガキどもが言ってた噂は本当だったのか…、私の猫をあいつは…」
と男はそいつの担いでいる棺桶に目をやった。
「確か、ガキどもが言ってた言葉は…、そんな暇はないすぐに警察に…」
恐怖で動かない手を無理に動かしてポケットの携帯を取り出し警察へ連絡しようとした
しかしそれは落ちてしまった。
その音がそいつの耳に届いた時、確実に“男が死んだ”ことは考えるもなくわかっただろう。



「だめだ…完全に脳天を砕かれている」
タンスの中の原型をとどめていない死体を見てスーツの男は言った。
「これで五件目だ、前は養鶏場が襲われたし…」
そこで現場検証をする警察官はそう言って周りの家具などを調べていた。
「この事件に何か情報はあるか?」
「ありません一つあるとすれば…」
警察官は確実である事をスーツの男に言った。
「ここの住民が飼っていた猫がいなくなったという事でしょう」
腕組みをしてふぅーっと息をついて彼はつぶやいた。
「犯人は一体何が目的なんだ、人を殺すだけでなくペットや家畜をさらうなんて…」
「強盗にしてはおかしい話ですね」
外には野次馬が集まり、事件現場をまるで動物園のパンダでもみるように
彼らは見ていた。
少年マイケルもまたその一人だった。
彼は知っていた、理由はわからない…けど何者か知ってる事を。
今日起きたこの事を話題にするために彼は学校へと向かった。
このアメリカの小さな町であっても、スクールバスは出るはずだが。マイケルはそれに乗らずに
ほとんど毎日歩いて学校に行っていた、
数日前から起きる奇妙な事件が起きるまでは乗っていた。
学校へつきロッカーに荷物を詰め込み、自分の教室へ向かった
教室のドアを開けてすぐに2人が彼に気づいた、一人は大柄の黒人の子で、もう一人は
白い肌のロングヘアーの女の子だった。
「おう、マイケル」とその黒人の少年は彼に挨拶した。
「ご機嫌よ」ともう一人も挨拶をした。
「ボブ、エミリー、昨日もまた出たらしいぞ」とマイケルは言うと。
「ああ知ってるよ、さっきから噂になってたし」
「ええー、んだよー先に見てきたと思ったのによお」
と彼は残念そうに話した、すでにテレビのニュースになっていたのでみんな知ってるのは
わかっただろうと彼の友人たちも思っていただろう。
しかし気を取りなしマイケルは語った。
「まあ知ってるのはいいとして出たんだよまた…」
「“ブラック・ボーン”が」
とわざとらしく怖い感じで話す2人。
「今度は俺のとこの近くで現れたぜ、あそこの親父のとこで、そんでそいつの猫が
さらわれたらしい」
すると横にいたエミリーは言った。
「あの時“アップル”って言えば助かったのに大人ってバカだね」
「警察も動いているけど、どうにかなるわけないだろな、噂では銃撃ち込まれても
死なないって聞くし」
と彼らはワイワイ話していたその席の前にある席から誰かの声が飛んできた。
「知らないのかい、そいつの事」
前にいる体の小さいメガネをかけた少年は本を読みながら彼らに意見したのだ。
するとボブは彼の座ってる席のテーブルに座り詰め寄った。
「なんだ弱虫ルイス、何が言いてえんだよ」
それにビクッと縮こまりながら彼は言った。
「…いや僕が言いたいのは、そいつは何者かって事、なんでペットさらうかも気になってて…」
「じゃあお前が行けよ、まあお前では無理だけどな」
と笑うボブにエミリーは
「ボブ!、ルイスをあんまいじめないの!」
と注意をした、すると後ろのマイケルは彼らにこう言った。
「じゃあ俺が調べてみるぜ、そいつの何かを知れたらそいつをやっつけられるし」
「えー、やめときなよ、絶対殺されるよ」
こうやって不謹慎でありながらもこの辺の殺人事件の話で盛り上がっていると。
ジリリリっとベルがなり教室の生徒たちは席に座った。
「おはよう諸君、今日の授業は前のようにイージーじゃないぞ」
と陽気に先生が入ってきて授業は始まった。
退屈にノートに落書きをするマイケル、誰かの情報からそのブラック・ボーンを描いてた。
“全身黒い服で鉄仮面をかぶってる” “身長は3メートルいきそうな大男”
“大きな棺桶を担いでいる” “もう片方の手でピッケルを持つ”
それからイメージを膨らませて、描いたのはいかにも子供らしい落書きで描かれた
それだった。その絵を隣のエミリーに渡し、そしてボブへルイスへと回したが
「君たち、そこで何してんの!」と先生に見つかった。
「マイケル、すぐに職員室へ行きなさい」と席を立たされて、マイケルは職員室へ行った。
しばらくして授業終了のベルが鳴った。
先生からは「変な事を流さない、事件の話をしない」と叱られてマイケルは教室へ戻った。
「あっマイケルおかえりー」とエミリーは茶化しながら言う。
「君は本当に怒られるの好きだね」とルイスも言う
「好きで行ってるんじゃねえよ」と半分怒りながら彼らに返した。
他も回して読んでたのに怒られたのは自分だけと不満はあっただろうが、まあそれは
置いておいて「さっきのやつ見ただろ、どうだった」聞いた。
「あんた絵が下手ね」
「そうじゃねえよ!、“イメージはどうだ”と聞いてるんだ」と大声を飛ばした。
「うーん確かにこんな感じかも知れないけど…、実際はこんな感じではないのかも知れないよ」
元がクラスメイトが流した噂からだったので、信憑性がなく実際とは違うという事をルイスは
言いたいのだろう、それに対してマイケルは。
「いいや、俺はこうだと思っている、誰がなんと言おうと」と答えた。
「それはそっちの勝手だけど」とルイスは論した。
噂話にまた花ひらく所、次の授業のベルがなりまた授業を彼らは受けた。
そして放課後、マイケルは友人たちと学校前で別れて一人家へ帰って行った。
外は夕暮れ、太陽はオレンジの光がマイケルの目に飛んできた。
そんな夕日を見てマイケルは
「もうすぐ〇〇リーグの試合がある、あと母ちゃんが飯作ってるだろうし」
と早足で自宅へ向かった。
この小さな町で起きる奇妙な殺人事件はまた今日の夜にやってくることは
彼は知ってるか知らずか。
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