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第十一話 女王の休日
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この話は、南ローミリア決戦を終えた後の話である。
「どういう事ですか・・・・それじゃあ陛下の力は・・・・・・!」
戦いを終え、帝国に帰還して、彼の軍務がようやく落ち着いた頃、その話は始まった。
この時彼は、何気なく思いついた事を口に出した。
女王ユリーシアの特殊な能力、未来を見通す力。その力について、彼は自分の尊敬する女性相手に、思いついた事を口にしてみた。
彼は言った。「陛下の能力が自由に使えたなら、どんな戦争も有利に戦える」と。
だが、その言葉を聞いた彼女から返ってきた言葉は、彼が予想もしていないものであった。
「だって陛下は!俺に何も・・・・・」
「あの方がお前に教えると思うのか」
「それは・・・・・、でも!」
信じたくないという、彼の悲痛な叫び。
何故ならこの真実は、女王ユリーシアにとって、あまりにも残酷な現実であるのだ。
「未来を見通す力が、いつか陛下自身を殺す?そんな事って・・・・・!!」
女王が秘密にしている能力を知る、数少ない人物の一人、帝国騎士団長メシア。
リックがこの時まで知らなかった、女王の能力の真実を、彼女は語ったのである。
「事実だ。陛下の未来を見る力は、恐らく特殊魔法の一種だ。あの力は陛下の命を削り、未来を見させている」
「・・・・・・どういう事ですか」
「陛下の本当の御姿を、お前は知っているか?」
本当の姿。そんなものなど当然知らない。
まるで今の陛下の姿が、紛い物であるかのように彼女は語る。リックはメシアと比べれば、ユリーシアと過ごした時間は短い。知らないのも無理はないのだ。
「私が陛下の騎士となった時、彼女はまだ目が見えていた」
「!!」
「だが一年経って、陛下は視力を失った。そして盲目となった後、陛下の肌は血の気を失くしていった」
「まさか・・・・・」
メシアの話はまだ途中だ。だがリックは気付く。
彼女が何を言いたいのか、何を伝えたいのかを。
「・・・・・・わかりましたよ。陛下の力は、自分自身を削って発動している・・・・・・。しかもあの力は、制御できるわけじゃなくて、勝手に発動してしまう」
「そうだ。未来を見通す魔法は、使用者の意思に関係なく発動し、その命を奪っている。魔法が発動するたび、あの方は死に近付いている」
知りたくないという想いが溢れる、残酷過ぎる真実。
だが、知らなければならなかった。この真実は、今後必ず帝国に、何らかの苦難を齎すだろう。
そしてこの魔法は、ユリーシアに取り付いた呪いだ。
「宰相に聞いた話だが、陛下は昔、美しい黒髪であったそうだ。ちょうどお前の専属メイドの様な、綺麗な黒髪をしていたのかもしれない」
「力が発動して、髪から色が抜けた。そういう事なんですね」
「陛下から髪の色を奪い、肌の血色も奪い、光まで奪った。それだけでは飽き足らず、今度はその命すら食い物にしている。陛下の体調がこのところ優れないのは、私たちの知らない内に、魔法が発動しているからだろう」
メシアの予想は恐らく正しいと、真実を知ったリックは思う。
元々身体の弱い彼女に、命を削る魔法は身に過ぎたものだ。もしかすれば、身体の弱さも魔法が原因なのかもしれない。
「陛下の魔法は未来を見る力・・・・・。強大なその力は少女の身体に負担をかけ過ぎる。未来を見る何ていう能力だから、その代償も大きいわけですね・・・・・・」
「これでわかっただろう。陛下は魔法を発動させてはいけない、絶対にだ」
メシアの強い言葉は、リックの心に大きく響き渡る。
残酷な真実は、彼の心に最悪の陰を落とす。
「あの方はいつ命を落としてもおかしくない。それを忘れるな」
ユリーシアの神秘的な美しさを見て、メシアに教えられた真実が思い出される。
儚い少女は、その内に呪いを秘めていた。
国の未来のために、その大き過ぎる力を利用し、代償として命を払う。まだ十四歳の少女が・・・・・・。報われない。世界は彼女に残酷過ぎる。
この世界では、彼女だけが不幸というわけではない。そうとわかっていても、この世界を許す事ができるだろうか。皆同じだからと、世界を憎む事なく生きていけるだろうか。
ユリーシアは世界を憎まないだろう。でも彼は違う。彼はこの残酷な世界を許さない。
リックは世界を憎み続ける。彼女の幸福な未来を手に入れる、その日までは・・・・・・。
「どういう事ですか・・・・それじゃあ陛下の力は・・・・・・!」
戦いを終え、帝国に帰還して、彼の軍務がようやく落ち着いた頃、その話は始まった。
この時彼は、何気なく思いついた事を口に出した。
女王ユリーシアの特殊な能力、未来を見通す力。その力について、彼は自分の尊敬する女性相手に、思いついた事を口にしてみた。
彼は言った。「陛下の能力が自由に使えたなら、どんな戦争も有利に戦える」と。
だが、その言葉を聞いた彼女から返ってきた言葉は、彼が予想もしていないものであった。
「だって陛下は!俺に何も・・・・・」
「あの方がお前に教えると思うのか」
「それは・・・・・、でも!」
信じたくないという、彼の悲痛な叫び。
何故ならこの真実は、女王ユリーシアにとって、あまりにも残酷な現実であるのだ。
「未来を見通す力が、いつか陛下自身を殺す?そんな事って・・・・・!!」
女王が秘密にしている能力を知る、数少ない人物の一人、帝国騎士団長メシア。
リックがこの時まで知らなかった、女王の能力の真実を、彼女は語ったのである。
「事実だ。陛下の未来を見る力は、恐らく特殊魔法の一種だ。あの力は陛下の命を削り、未来を見させている」
「・・・・・・どういう事ですか」
「陛下の本当の御姿を、お前は知っているか?」
本当の姿。そんなものなど当然知らない。
まるで今の陛下の姿が、紛い物であるかのように彼女は語る。リックはメシアと比べれば、ユリーシアと過ごした時間は短い。知らないのも無理はないのだ。
「私が陛下の騎士となった時、彼女はまだ目が見えていた」
「!!」
「だが一年経って、陛下は視力を失った。そして盲目となった後、陛下の肌は血の気を失くしていった」
「まさか・・・・・」
メシアの話はまだ途中だ。だがリックは気付く。
彼女が何を言いたいのか、何を伝えたいのかを。
「・・・・・・わかりましたよ。陛下の力は、自分自身を削って発動している・・・・・・。しかもあの力は、制御できるわけじゃなくて、勝手に発動してしまう」
「そうだ。未来を見通す魔法は、使用者の意思に関係なく発動し、その命を奪っている。魔法が発動するたび、あの方は死に近付いている」
知りたくないという想いが溢れる、残酷過ぎる真実。
だが、知らなければならなかった。この真実は、今後必ず帝国に、何らかの苦難を齎すだろう。
そしてこの魔法は、ユリーシアに取り付いた呪いだ。
「宰相に聞いた話だが、陛下は昔、美しい黒髪であったそうだ。ちょうどお前の専属メイドの様な、綺麗な黒髪をしていたのかもしれない」
「力が発動して、髪から色が抜けた。そういう事なんですね」
「陛下から髪の色を奪い、肌の血色も奪い、光まで奪った。それだけでは飽き足らず、今度はその命すら食い物にしている。陛下の体調がこのところ優れないのは、私たちの知らない内に、魔法が発動しているからだろう」
メシアの予想は恐らく正しいと、真実を知ったリックは思う。
元々身体の弱い彼女に、命を削る魔法は身に過ぎたものだ。もしかすれば、身体の弱さも魔法が原因なのかもしれない。
「陛下の魔法は未来を見る力・・・・・。強大なその力は少女の身体に負担をかけ過ぎる。未来を見る何ていう能力だから、その代償も大きいわけですね・・・・・・」
「これでわかっただろう。陛下は魔法を発動させてはいけない、絶対にだ」
メシアの強い言葉は、リックの心に大きく響き渡る。
残酷な真実は、彼の心に最悪の陰を落とす。
「あの方はいつ命を落としてもおかしくない。それを忘れるな」
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リックは世界を憎み続ける。彼女の幸福な未来を手に入れる、その日までは・・・・・・。
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