アメトフラジール

土間礼文

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第1章 僕とフラジール

僕とフラジール(3)

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「僕、本人、。ごめんなさい。話が急すぎて全然わかんないです。もっと詳しくお願いできませんか?」

「それもそうか。すまない。じゃあ、ここがどこなのかから説明するね。ここはそちらの世界でいう夢の中ってやつだ。」

 僕は馬鹿にされて面白がられているのかと思った。でも、石山さんの顔はいたって真面目で、嘘は1つも言っていないように思えたのでもう少し話を聞いてみることにした。

「夢の中、、、ですか?」

 石山さんは引きつった顔の僕を見てニヤリとした表情をしながら説明を続けた。

「君は今まさに夢の中だ。眠っている。人間っていうのはその日に起こったことを夢の中で整理するといわれている。
 しかし、それは違う。夢の中では喜怒哀楽のそれぞれの感情を持った4人の君がこの世界に住んでいる。その中でその四人の君が現実で起こったことと戦っている。そうすることで君を浄化しているんだ。
 そして、それを円滑に進めるために人の夢を監視し、管理するのが俺の役目ってこと。わかるかい?」

 戸惑いの中頭をフル回転させて理解をしているが、1つだけわからないことがあった。

「つまり、夢の中で僕のために4人の僕が戦っているってことですよね。でも、現実で起こったことと戦うってどういうことですか?」

「それはね。現実世界で君が受けた刺激は夢の中でイーターと呼ばれる敵となって4人の君を襲っている。そのイーターの勢力が近頃強大になってきていてね、、。」

「僕が1人やられた。」

 ため息をついた石山さんの言葉を補うように僕は呟いた。

「残念ながら、そういうことだ。俺がついていながら、力になれずに本当にすまない。フラジールが倒されてしまうと君からその感情が消える。全て倒されてしまうと君は何も感じない、空っぽの抜け殻になってしまうんだ。だから、」

 悲しそうな顔をした石山さんは一呼吸置いて僕に尋ねた。

「ここまできたら、理由はもうわかっているよね?」

 山中さんも僕の方を向いて首を縦に振っていった。

「僕が僕たちを守るために戦う。そういうことですよね。」

 よし。という風に石山さんは頷き、パッと表情を戻した。切り替えの早さに僕は思わず背をピンと立てた。

「理解できたなら早速本題に移ろう。俺たちは残念ながら喜怒哀楽のどいつがやられたのかわからないんだ。だから今から簡単な検査をさせてもらう。」

「その検査って、具体的に何をするんですか?」

「今から片桐君に4パターンの日常で起こる出来事を体験してもらう。そこで何も感じない部分が出てくると思うんだ。」

「それが、僕が失ったフラジール。わかりました。どうすればいいですか?」

 正直、どんな検査がくるのかと恐怖を抱いていたが、大したこともなさそうでとても安心した。

「では、こっちへ」

 石山さんはバーの奥にある部屋の前で僕を手招きしていた。真っ白なその部屋の中には真ん中にポツンと黒のリラックスチェアが置いてあるだけだった。
 
 ここに座ってと石山さんに連れていかれるがままにその椅子に座って、上を向いた状態になった。

「目を閉じて、充分リラックスしてくれよ。準備はオッケーかい?」

 僕が頷くと、石山さんの大きな声が響いた。

「いくよ。『夢現空間』発動」

 急に眩しい光に囲まれた。
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