異世界の恋人

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第一部完

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村に戻ると、村長であるジェフリーが出迎えてくれた。

「おぉ!無事じゃったか!!」
ジェフリーは安心した様子で言う。

「えぇ、なんとか倒すことができました」
夏樹は笑顔を浮かべながら言う。

「倒した……?一人で戦ったのか!?」
ジェフリーは驚いた表情をする。

「えぇ、まぁ……」
夏樹は照れ臭そうに答える。

「無茶をしすぎだ……!!」
「すみません……」

夏樹は頭を下げる。「まあよい。無事に帰ってきたんじゃ。まずはゆっくり休んでくれ」

「ありがとうございます!」
夏樹は礼を言うと、エリスを見る。エリスは、申し訳なさそうな顔をしながらも微笑んでいた。

「なっちゃんが無事でよかったわ」
「エリスさんのおかげだよ!」

夏樹はエリスに感謝する。
「さて、これからどうするか考えないとね……」
夏樹は真剣な顔つきになる。

「えぇ……そうね。まずは、ワイバーンのことを村の人たちに伝えるべきだと思うわ……」

「うん……そうだね。でも、どうやって伝える?」
夏樹は首を傾げる。

「私がワイバーンに乗って、空を飛びながら、村の人に呼びかけましょう」

「えっ!?」
夏樹とミリアが驚く。

「大丈夫よ!ワイバーンには乗れるし、私なら魔力を使って、風を起こして飛ぶことができるから」

エリスは自信満々に答える。
「いや、でも……」
「そうよ!危ないよ!」

夏樹とミリアは反対するが、エリスは引き下がらない。

「でも、他に方法はないでしょ?」
エリスは冷静な口調で話す。

「それは……」
夏樹は言葉を失う。

「私は、なっちゃんと一緒に行くわ!!」
ミリアは夏樹の腕を掴む。

「ミリアまで……」
夏樹はミリアの顔を見つめるが、彼女の目は本気だった。

「私だって、なっちゃんと同じ気持ちよ!!私だって、なっちゃんのことが好き!!だから、なっちゃん一人だけ危険な目に遭うなんて嫌よ!!」

ミリアは必死に訴える。

「ミリア……」
夏樹はミリアの言葉を聞いて、胸が熱くなる。

「それに、エリスさんのことも心配だし……」
ミリアは小声で呟く。

「ミリア、あなた……」
エリスはミリアの言葉を聞いて、驚きの声を上げる。

「そうね……ミリアちゃん、ありがとう」
エリスは優しく微笑む。

「いいえ……そんなことないです」
ミリアは恥ずかしそうに俯く。
「じゃあ、早速行きましょう!!」
「えっ!?今すぐ?」
「善は急げっていうでしょ?」
「いや、でも……」
「なっちゃん、お願い!!私にも協力させて!!」

ミリアが懇願するように言う。
「う~ん……」
夏樹は迷う。

「じゃあ、決まりね!!」
「ちょ、ちょっと待ってよ!!まだ、俺は何も言ってないだろ!?」

夏樹は慌てて言う。「あら?なっちゃんは行かないのかしら?ミリアちゃんだけに任すつもり?」

「そ、そういうわけじゃないけど……」
夏樹は戸惑った表情をする。
「ほら!なっちゃん!早くしないと日が暮れちゃうわ!」

「そうよ!行こう!なっちゃん!」
「わかったよ……」
夏樹は観念したようにため息をつく。

「そうと決まれば、早速準備をしましょう!」
エリスは笑顔を浮かべながら言った。

夏樹たちは、村長の家に戻り、村人たちに事情を説明した。

「なるほど……それは大変だ」
レオンは腕を組みながら深刻な顔つきで言う。

「それで、これからどうするんだ?」
ライアンは夏樹に尋ねる。

「はい。俺たちはこれからワイバーンに乗って、ワイバーンの巣に向かいます」
夏樹が答えると、ミリアが驚く。

「えっ!?ワイバーンに乗るんですか!?」
「あぁ……そうだよ」
「大丈夫なんですか?」
「多分ね……」
夏樹は苦笑いしながら答える。

「本当に大丈夫なのか?」
レオンが心配そうな顔をして夏樹を見る。

「はい!大丈夫ですよ!いざとなったら、私が何とかしますから!」
ミリアは胸を張って言う。

「ミリアちゃんが?」
「はい!私はボウガン使いですから!」
ミリアは自分の武器であるボウガンを見せる。

「そういえば、そんなことを言っていたね」
夏樹はボウガンを見ながら言う。

「そうよ!私だって戦えるわよ!!」
ミリアは腰に手を当てて、得意げな表情をする。

「でも、危ないよ……」
夏樹は不安な表情でミリアを見つめる。
「何言っているのよ!!私だって、エリスさんと一緒に戦うわよ!!それに、夏樹だけ危険な目に遭うなんてずるいわよ!」
ミリアは頬を膨らませながら抗議してくる。

「別に俺だけってわけじゃ……」
夏樹は言いかけるが、「夏樹くん、お願いできないかな?ミリアちゃんやエリスさんのことも頼んだよ……」

村長が申し訳なさそうに頭を下げる。

「は、はい……わかりました。
夏樹は村長に頼まれると、断りきれずに承諾してしまう。

「ありがとう……君たちのおかげで、村の皆が助かるよ……」
村長は涙ぐむ。
「そんな大袈裟な……」
夏樹は照れくさそうに頭を掻く。

「じゃあ、早速準備しようぜ!!」
レオンは立ち上がり、嬉々として言う。
「レオン、あんまり調子に乗るんじゃないぞ!!」

ライアンが釘をさすように言う。

「わかっていますって!!」
レオンは笑顔を浮かべたまま言う。

「全くお前って奴は……まぁいいか」
ライアンは呆れた表情をしながら呟いた。
「とりあえず、俺は食料を集めてきます」
夏樹は立ち上がる。
「俺も手伝おう」
「私も行きます!」
レオンとミリアは名乗り出る。
「私も行くわ!」
エリスが名乗るが、夏樹はそれを断る。

「いや、今回は、ミリアちゃんだけに頼むよ」
「えぇ!?どうして!?」

ミリアは不満げな声を上げる。
「だって……、ミリアちゃんはまだ戦いに慣れていないだろ?だから、まずは俺が先に偵察に行くよ。もし何かあったらすぐに逃げるよ」

「そっか……わかった」
夏樹の言葉を聞き、ミリアは納得する。

「じゃあ、早速行こうか」
「ええ!!」

夏樹とミリアは家を出て、村の入口へと向かう。
「ミリア、気をつけてね!」

「うん!大丈夫よ!」
ミリアは笑顔を浮かべながら答える。

「本当に大丈夫なのか?」
夏樹は不安そうな顔を浮かべながら尋ねる。

「大丈夫よ!任せておきなさいよ!」
自信満々なミリアを見て、夏樹は心配そうな顔つきのまま、村の外へと歩いていく。
夏樹たちは、ワイバーンの巣に向かうため、村の外に出て、森の方に向かって歩いている。

「ワイバーンの巣までどのくらいかかるんだい?」
夏樹はミリアに尋ねる。

「うーん、多分1時間ぐらいじゃないかな……」
ミリアは地図を見ながら答えてくれる。その言葉を聞いて、夏樹は驚く。

「そんなにかかるのかい?結構遠いね……」
「そうね……でも、仕方ないわよ。空を飛ぶ魔物だしね」
ミリアは苦笑いしながら言う。
「そうだね……」

夏樹はそう言いながら、自分の左手を見る。そこには、銀色に輝く指輪がある。それは、エリスから貰った魔力増幅装置である。

「ねぇ……夏樹くん……」
「何だい?」
夏樹はミリアの顔を見ると、彼女は頬を赤らめている。「どうしたんだい?」
「あのさ……今更だけど、夏樹くんって、好きな人いるの?」

ミリアは上目遣いをしながら尋ねてくる。
「いるよ……」
夏樹は、恥ずかしげもなく答える。
「そっか……やっぱり、セリアさんかな……」
ミリアは寂しげな表情で言うが、夏樹はそれを否定する。

「違うよ」
「えっ!?」
夏樹の言葉に、ミリアは大きな瞳を見開く。
「じゃあ、誰なのよ!?」
ミリアは不機嫌そうに言う。

「内緒だよ……でも、俺にとって一番大切な人なんだ」
夏樹は、笑顔を浮かべながら言う。

「ふぅ~ん、そうなんだ」
ミリアは不満そうに呟く。
「まぁいいや……夏樹くんも頑張ってね!」

ミリアは笑顔を浮かべながら夏樹にエールを送る。
「ああ!」
夏樹も笑顔で答える。

「そういえば、夏樹くんは、エリス様のことが好きじゃないの?」
ミリアは不意に疑問を投げかける。

「好きだよ……、でも、俺には身分が違いすぎるよ」
夏樹は俯きながら言う。

「そんなことないと思うけどな~」
ミリアは、夏樹の言葉を聞いて微笑む。
「いや、俺は普通のサラリーマンだからね」

夏樹は自嘲気味に笑う。「そうかしらね?私から見たら、夏樹くんは立派な勇者だと思うよ」

ミリアは笑顔を浮かべながら言う。
「そうか?俺なんてまだまだだよ」
夏樹は照れながら頭を掻く。

「あっ!あれじゃないかしら?」
ミリアは指をさす。その先には巨大な洞窟があり、入り口には2体のワイバーンの姿が見える。

「ミリアちゃん!危なくなったら逃げるんだよ!」
「うん!」
ミリアは元気よく答える。

「じゃあ、行ってくるよ!」
夏樹はそう言って、ワイバーンの巣へと入っていく。巣の中に入ると、そこには卵を守る親鳥がいた。夏樹は左手に装着している指輪を見て、自分の魔力を確認する。
(魔力はまだ残っているな……)
夏樹は自分の手を見ながら考える。

指輪からは銀色の光が溢れ出しており、まだ十分に魔力が残っていることを知らせてくれている。

「私が援護するわ!」
ミリアはボウガンを構えて叫ぶ。
「わかった!!」

夏樹は叫びながら、剣を抜いて駆け出す。
「グギャアァーーーーーーーーーーーー!!!」
親鳥は夏樹に向かって口から炎を吐き出す。

その攻撃を、左手を前に出して防御の呪文を唱える。すると、盾が現れて、夏樹を炎から守る。

「今だ!!ミリアちゃん!!!」
夏樹は大声でミリアに指示を出す。
「任せて!!」

ミリアは返事をすると同時に、矢を放つ。
放たれた矢は、一直線に飛んでいき、親鳥の眉間に突き刺さった。

「ギヤャャーーー!!!」
親鳥は断末魔を上げながら倒れ込む。
「やったぜ!」

夏樹はガッツポーズをして喜ぶが、油断はできない。夏樹はすぐに剣を構え直す。

「大丈夫?」
ミリアが心配そうに尋ねてくる。

「ああ……」
夏樹は笑顔を浮かべながら答えたが、内心はかなり動揺していた。

「やっぱり、夏樹くんは強いね」
ミリアは笑顔を浮かべて言う。

「いや……、俺なんかまだまだだよ」
夏樹は苦笑いを浮かべながら答える。

「そうかな?私から見たら、夏樹くんは立派な勇者だよ!」

ミリアは笑顔を浮かべながら夏樹に話す。
「ありがとう。そう言ってくれて嬉しいよ。でも、俺はもっと強くならないといけないんだ……エリスを守るために」

夏樹は真剣な表情で答える。
「そう……。じゃあ、頑張ってね!応援してるよ」

ミリアは微笑みながら言う。
「ああ!」

夏樹も微笑んで返す。

「じゃあ、行きましょう」
ミリアはそう言うと、巣の奥へと進んでいく。

夏樹もその後に続く。

奥に進むにつれて、ワイバーンの数は増えていき、中には強力な個体も存在した。夏樹は、その度にミリアに助けられながら、ワイバーンを倒していく。

「夏樹くん!気をつけて!そいつは、今までの奴とは比べ物にならないくらいに強いわよ」

ミリアは夏樹に注意を促す。
夏樹が対峙したワイバーンには、他の個体よりも一回り大きく、鱗の色は赤黒く変色しており、その眼光は鋭く、こちらを見据えていた。

「こいつは、俺が相手になるよ!」
夏樹はそう言って剣を構える。

「わかった。無理しないでね!」
ミリアはボウガンを構えながら答える。

「わかってる!危なくなったら逃げるよ」
夏樹はそう言って、目の前のワイバーンに向かって駆け出す。

ワイバーンは翼を広げ、威嚇するように吠えると、口から炎のブレスを放つ。夏樹はその攻撃を、左手を前に出して防御する。盾が現れて、炎を防ぐ。

「今だ!!」
夏樹は叫ぶと同時に剣を振り下ろす。

「ギャャャーーー!!」
ワイバーンは断末魔を上げて倒れる。

「やった!!」
夏樹はガッツポーズをして喜ぶ。

「おめでとう!!」
ミリアは拍手をしながら、夏樹に近寄る。
「ありがとう!!」

夏樹は笑顔で答える。
「これで、夏樹くんも一人前の勇者だね!!」
ミリアは嬉しそうに言う。

「そうだね。でも、俺はまだ未熟だから、これからも頑張らないとね!」

夏樹は照れ臭そうに頭を掻きながら言う。
「じゃあ、帰ろう!」
ミリアはそう言って、歩き出す。
「ああ!」
夏樹はそう答えて、ミリアの後に続く。

こうして、夏樹たちは、無事に村に帰り着くことができた。

村に戻ると、村人たちが出迎えてくれた。その中にはセリアの姿もあった。

「やったね!!二人とも!!」
セリアは笑顔を浮かべて話しかけてくる。
「ああ、なんとかな……」
夏樹は苦笑いを浮かべて答える。

「夏樹くんのおかげだよ!本当にありがとう!」
ミリアは笑顔を浮かべて話す。
「そんなことないよ……」

夏樹は照れて頬を掻く。
「いや、夏樹がいなかったら、私達全滅してたよ!それに、夏樹がワイバーンを倒した時の雄姿はカッコよかったよ!」

ミリアは興奮気味に話し続ける。
「もう、いいよ!恥ずかしいだろ!」
夏樹は顔を真っ赤にして答える。

「あははっ!ごめんね!」
ミリアはそう言って笑うと、夏樹はため息をつく。

「さぁ、村長さんのところに報告に行くぞ」
夏樹はそう言うと、先に歩いていく。
「待ってよ~!!」

ミリアは慌てて追いかけていく。
こうして、二人の初めてのクエストは終わりを告げる。

しかし、これは始まりに過ぎない。
彼らの戦いは、まだまだ続く……。

【第一部 完】
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