最強のチート『不死』は理想とはかけ離れていました ~ 人と関わりたくないので史上最強の家族と引きこもりを目指したいと思います

涅夢 - くろむ

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97話 - 王様パワーすげぇ

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「うっし。待たせた。じゃ、行くか」

 そこにはさっきまでの赤いマントを脱ぎ捨て装備を装着しとても軽装になった王が立っていた。

『いや、うん。……あれ?』

「なんだよ」

『いや、ほら、「大臣!すぐに調べさせよ!」とか「兵を集めよ!いざ出陣じゃ!」とかじゃないの?』

 これが一般ピープルが創造するの王の姿です。たぶん。

「なんで?俺が見てきた方が早えじゃん」

 あっれぇ……王様ってこんなフッ軽だっけぇ……

『大丈夫なの……?王様が勝手に城開けて……』

「……あんま大丈夫ではねぇかなぁ?」

 ですよね!?あ、よかったぁ……
 僕の常識がおかしいのかと思った……

『それ……僕達に責任問題来たりしない?僕の仲間一応人種だけど……』

「あぁ!お前使い魔なの!?」

『まぁそういう部分もあるっちゃあるかなぁ……』

「あ~じゃあその子にちっと悪いか……。俺のせいで怒られたりしたら申し訳ねぇよなぁ……まぁ大丈夫だとは思うけどよ……」

『やっぱ可能性はあるよね!?』

「いや、お前スライムじゃん?普通に野良の突然変異か何かだと思ったんだわ。で、偶然獣人が捕まってんの見つけて俺に知らせに来てくれたのかなってよぉ……。じゃあ俺がお前のこと助けても俺が偶然知ったことにすりゃ問題ねぇじゃんか。いつも通り街に脱走したくらいの騒ぎで済むかと思ったんだけどよ……」

 あぁ、完全に考えナッシングな人ではなかったんだ……
 よかった……そういう理由か。
 いや、よくはないか。

「ちなみにこの件は急ぎなのか?」

『多分3日後朝には別の街に連れていかれちゃうらしい……』

「3日か……こいつにはかなり煮え湯飲まされてんだよ。証拠でなくて捕まらねぇだけで絶対クロだとわかってたんだ。少数で捕えにいくなら明日には馬だせるか……?」

『いや、それで充分。元々話すつもりなかったから適当に書類ばらまいて帰ろうとしてたし。僕たちは子爵の悪事を知らせるだけで精一杯だと思ってたからな。それに絶対間に合わないと思ってた』

 まず3日後に出立とか知らなければきちんと裏取ろうとするだろうしね。
 話さなければ”今捕えられている”とは伝えられなかったからな。
 書類ぶん投げても調べはするだろうけどそんなすぐ動いてくれるとも思えなかったし。

 あ、いっそ……運び屋とか全部捕まえてもらった方がいいのか……

『っていうかむしろ3日後の方がいいかも。奴隷とか孤児運んでるやつが来るみたいなんだけど、そいつらの仲間が国の重要な機関に入り込みまくってるらしいぞ』

「なんだと!?」

『あと検問とかも抜け道あるとか?一回そいつらから洗いざらい吐かせたほうがいいとおもうぞ。だから一網打尽にしたいなら3日後の朝から張り込んでたほうがいいと思うな?それまでは僕達が監視しててやるよ』

「囚われたやつ助けりゃいいって話じゃなくなってきたな。わかった。お前の言う通り3日後になんとか騎士引き連れて間に合わせるようにする」

『あ、あとその子爵領、搾取されまくって農村とかボロボロだから。僕からは領主を絶対にいいやつに変えてくれってことと、あとは子爵邸の中の違法奴隷も助けてあげて欲しいこと、子供たちは子爵邸の納屋の裏に地下牢への入り口があるから救出してあげて欲しい。それを頼みたい。』

「そんなことまで調べてくれたのか……。全員助ける。あと子爵はこの件が明るみにでれば確実に爵位剥奪、ってか処刑だろうよ。その後釜にいいやつをつけろっていうんだな。わかった。俺とお前の約束だ。ありがとう。助かった」

『そうか。安心だ。じゃあ帰る!僕の役目はこれくらいだろ?あとはよろしくな王様』

「なぁ!また話せるか!?俺はガウルってんだ!お前の名は!?」

 王の名前は名乗られんでもわかるって(笑)

『僕の名前はクロムだ。また機会があればな』

 ・
 ・
 ・

『って感じで色々もう大丈夫そうだ』

 あれからすぐクルードの街に帰ってきた。
 もう日は沈んでいるので2人は外で野宿の準備をしていた。

「そうですか……はぁ……気が抜けました……よかったぁ……」

『よかったねぇ~』

 まさかあんなことになるとは……だったけどな。
 変な謁見の時間だったなぁ……

「それにしても……クロムさんから話しかけるなんて珍しいですね?よっぽど好きな王様だったんですね♪」

『……そうだな。好きなやつだった。まぁ王と話す機会なんかもうやってこないさ』



 -----



 その後念の為2日間は様子を見ながら張り込んでいた。

 3日目のまだ日も上がっていない早朝からかなりの人数の騎士たちが集まりだした。
 事態を相当重く受け止めてくれたんだろう。

 日が開けて運び屋が子爵邸に入ってきた瞬間潜んでいた騎士に子爵邸は包囲された。
 僕が言ったこともすべて伝わっているようですぐに地下牢の子供たちは解放。
 馬車に乗せられて食事等を与えられていた。

 子爵邸の中も捜索されていたのでこれであの子爵は終わりだろう……
 あ、ちなみにあの王様はやってきていなかった。
 まぁさすがに事が知られた状態で王様が出張ってくるのは無理だよな。

 あの王様なら「俺も連れていけ!」とか言ってそうだなぁ……

 そして僕らは今茂みからその様子を見守っている。

『はぁ、やっと終わった。終わってみればこの上なくいい結果だったんじゃないか?まさか王と話せるなんて想像もしなかったからな……。こんなにスムーズに進むと思わなかったよ』

「みんな無事に助かって本当によかったですね。これからこの領の皆が安心して過ごせるようになればいいのですが……」

『あぁ、それについてもこの子爵の後釜にはいいやつをつけてくれるって約束してくれたぞ。あの王様なら大丈夫だろう、きっとな。王様パワーすげー!一瞬で片付いちゃったな』

「そうですね。直ぐ終わっちゃいました。この領の今後まで約束してくれたならそれも安心ですね♪」

『じゃあ、王都行くかぁ。しばらくゆっくりしようぜ~。凡人に似合わないことしたからもう疲れちゃった……1週間は動きたくないなぁ~』

「あ……護衛依頼終了の手続きしてないです……」

『ねーねー』

『あ……忘れてた……やばいな……怒られるかな……』

『ねーってばー』

『お、どうしたクラム。ごめんごめん』

『ばしゃからしろい子逃げたよ~?』

 ……白い子って何?白い服着てるの?

「あ、あの時の白い魔物ですか!」

 あ!言ってたな!その魔物もよかったじゃん。解放されて。
 どんな子なんだろ……?使い魔ではなかったってことか?

『ん?どこどこ?』

『あれー!すごいけがしてるよあの子……いたそう……』

「ほんとです!入っていく時にはあんな怪我なかったのに……」

 よく目を凝らして望遠で見てみると……
 白い……犬とか猫とか言ってたけどあれは狐っぽいかな?
 この世界に狐がいるのかはわからないけど……

 いや、ひどいぞ……ムチで打たれたような後が体中に……
 フラフラだ……
 あの地下牢でなにかあったのか!?

 急がないとやばいんじゃないか?
 ……”鑑定”!げっ!?

『クラム、エステル!!あの子もう死にかけだ!急げ!』

『え!?は、はい!わかりました!!』

『あの子は獣化できる獣人だ!魔物じゃない!!』


 ・
 ・
 ・

 馬車から脱走した白い狐っぽいやつは街から離れた藪の中に入っていったそこに倒れ込んだ。
 もう抵抗する力も残ってないようでそのまますぐに意識をなくしてしまった・

(パチパチパチ)

 あまりに状態がひどかったので僕らも移動をやめてここでもう1泊することにした。
 夜になり……狐が目を覚ました。

『起きたか?体だいじょうぶか?治したけど……まだ変なとこあるか?』

『だいじょうぶ~?クラムのごはん食べる~?』

「あ!まだ無理して動こうとしちゃダメですよ!」

(Woooo……)

 狐がうなっている……ってかなんでこの子人にならないんだ?
 この子さ……獣化ってスキルが入ってるんだよ。
 獣化でその姿になってるなら人の姿あるよな?

 カテゴリ的には獣人ってなってるぞ?

 獣化持ってる獣人には初めて出会ったけど……こっちがデフォなのか?

『なぁなぁ、お前獣人だろ?僕ら敵じゃないから姿だしても大丈夫だぞ。とりあえず体弱ってるし食えるならご飯食べな?』

(Wow……)

『人になれない~?』

「まだ体の調子がわるいのでしょうか……」

 でも、なんか言葉理解してる感じするよな。

『あ、そうか!スライムの僕らが急に念話で喋ってるわけだし怪しいか……。もう緊急だったから喋っちゃったわ』

『あ、わすれてたぁ~』

「大丈夫ですよ?このスライムさんが気付いて助けてくれたんですよ?」

 すると……体に光の粒子が集まり出し……
 男の子……だ。見た目10歳くらいの男の子に変身した。
 白い狐耳の……しっぽの生えた獣人の男の子……

「……ありが……と」



 うん。まぁとりあえず服着よっか。
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