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209話 - 回帰
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『ごめん、色々取り乱したね。少し冷静になるよ』
「落ち着ける状況じゃねぇよ……。冷静になれんのがおかしいんだよ」
「えぇ、この状況で落ち着いているクロムちゃんを見て居る方が心配になるわ……」
「言いたいことは気にせず吐き出してください」
『ありがとう……。と言うより冷静なんだけどさ……、まぁいいや。これ考えても話が進まなくなるな』
いま心が2つある感じがするんだ。
人の自分と魔物の自分。
人の自分は焦れって言っている気がする。
でも魔物の自分は冷静なの。
二重人格になってるのかな。
それとも体と記憶が完全に分断されちゃってるのか。
しかも人間の自分がどんどん減っていく。
その度に焦らないといけない気持ちが消えていく……
「……家族には話してないの?」
『まだ話してないよ……』
「とてもいいにくいと思うけど、話した方がいいと思うわよ……」
それは分かってるよ。
怒られたからね。
言わないつもりではない。
『話すよ。秘密にしたかったわけではないんだ。話す為に少しだけでもとっかかりが欲しかったんだよ。話を投げてただ困らせるのが嫌だっただけ。それにまだ気付き出して2週間程しか経ってない。そして今、みんなの話を聞いて現状が確定した訳だから』
認識を確実にする為に情報を得たかった。
僕と他者を比較したかったんだ。
それも、家族でない誰かと。
「確定させる材料が欲しかった、というわけですね」
『そういうこと。話すにしてもきちんと話したいからさ……』
僕が魔物に近づいている件。
人間の記憶が失われている件。
エステルとの恋愛のことで気付いた。
記憶をさかのぼると高所恐怖症の件から既におかしかったことに気付いた。
ふと、気づくと前世の記憶が朧気になっていた。
で、今日だ。
まだ全然時間経ってない。
時間が経っていないのに急速に事態が進んでいることが問題なんだ。
「問題は……もう猶予がない、と言う事ですか」
『うん。……というより猶予が無くなったから気付けたって方が正しいかな』
「もう少し早く気付いていればゆっくり考えられたのだけれどね……」
『そうだけどね。考えても仕方ないよ。それは結果論だもん。変だな、と思う事があってもそれに違和感を感じなかったんだ。いや、違うね。違和感があるのが当然。そもそも前世の記憶をもって転生って事から変な事じゃん。僕のこの世界の生活って違和感がある事しかないんだ。他の人と同じように生きられる訳がないよ』
他の人と同じように過ごしたかっただけのはずなのに……
よく考えてみれば前世の記憶をもって転生した時点で無理だよ。
最初から同じように過ごせるわけがなかったのかもしれないな……
「……そうね。違和感があって当然。……そう考えると完全に人の記憶を失う前に気付けたことが奇跡ね」
『別に人間でも魔物でもいいかなって思ってたんだよ。その時には違和感に気付かなかったのにね。人間を失いだしてやっとこのままじゃマズいことがようやく見えたんだ。そうならないと気付けなかったんだよね。それも偶然だ……』
スライムに睡眠が必要ないって気付いたのなんか寄生してすぐのことだ。
でも、スライムだしまぁそりゃそうか。としかならなかった。
植物の時なんてもはや眠れなかったんだもん。
街の人見て美人だと思わない、とか論外だ。
こんな危険な生活してて優先順位めちゃくちゃ下でしょ?
気にも留めたことなかった。
エステルのおかげで偶然気付けただけだ。
「仕方ねぇよ。それに昔の記憶消えた瞬間なんかわかんねぇよ……。そんなもんいつの間にかとしか言えねぇ……」
本当にそう。
そんなもの明確にここからって……
ここから……
『あ、いや。それは分かるかも』
「そんなもん徐々にじゃねぇのかよ?きっかけはなんなんだ?」
『えっと、記憶は多分徐々に消えて行ったんだよ。それは間違いないと思う。ただ、急に加速した時は分かる。……ハイエルフの救出後からだ』
「何故そう思われるのですか?」
『今までにも思ったことはあったんだよ。王城に忍び込めた時にスライム便利だな。とかさ?こうやって皆と過ごせるのもスライムのおかげじゃん、って言ってたでしょ?』
「あぁ、それは事実だからな。お前が人だったら知り合えてねぇよ。城に入れてねぇ。ただの不法侵入だ」
そう、それはただの事実なんだよ。
スライムでよかった、って話。
『……ただ、スライムのままでいたい、とまで思わなかった。それがハイエルフ救出後くらいからふとした瞬間にこのままでいい、と何度も思うようになったんだ……。体を変えようと考える度にね』
「ちなみにクロムちゃんはいつからハイエルフを救出する計画を練ってたの?」
『……エステルと旅に出た瞬間からずっと。それこそスライムに成りたて位の時から……。あぁ、きっと張り詰めてた気が緩んだんだな……』
そうだ。
僕このスライムの体になってからずっとハイエルフの救出を目的にしてきた。
その目的が今無くなったんだ……。
僕のスライム生活はずっとハイエルフと共にあったんだ。
「それはそうでしょう。100人近くの命がかかっているんです。プレッシャーは甚大なはずです」
「あぁ、クロムならあっさりやるだろうとは思ってた。ただ、それとお前自身のプレッシャーの問題は別だ。ただでさえ、お前がただの魔法も使えない人間だったんならな……」
『うん、僕の体の問題なんかよりハイエルフの……エステルの家族の救出の優先順位の方が僕の中で遥かに高かった。だからここ最近だよ。次の体どうしようって真剣に考えだしたのって。チラチラよぎってはいたけどすぐに頭から消えちゃってたもん。僕の人としての記憶はハイエルフのおかげで保ってたんだと思う』
それこそ真っ当に考えたのはクラムの寿命の問題の時くらいだ。
でもそれもクラムのレベルの問題に落ち着いた。
さらにそれは時間の問題になったんだよ。
クラムがいつでも進化する準備が整ったらその後はいつでもいいって思ってた。
実際いつでもいいんだから。
僕もクラムもスライムに困ってないんだよ……
それにさ?
『僕もクラムも寿命200年あるんだよ!?今すぐ体変える必要全くないじゃん!こんなに便利で心地いい体なんだ!王都にも気軽に入れる!分裂作ってダンジョンも安全に攻略できる!みんなと電話も出来るんだ!王様達にボタン贈ったのだって……
「クロムっ!!……お前また頭ン中そのままで良いって考えでいっぱいになってるぞ」
『……あぁ、もう本当にダメだなぁ』
「事態は深刻ですね……」
「えぇ。それにきっとスライムの体が快適すぎることが輪をかけて事態を加速させているのね……」
『うん……。生存すること1点だけに考え絞ればスライムの上に出るものなんて中々いないよ……』
「本来スライムはそれほど強い生物ではないのですが……。強くなればそれほどに融通がきく体もないということですか……」
『ほんと何も困ってない。街に行く時くらいだよ。それもエステル、クラマ、おばあちゃんに迷惑かけてるなぁって思うだけ。僕自身の問題じゃない……。でもそれもスライムじゃなかったら街にも気軽に入れない訳で……
「なぁ。解決策にはならねぇが……。もう適当に体変えてみればどうよ?」
『は!?適当!?体だぞ!?』
「ガウルちゃんそれは……」
「違うって!俺自身が適当に言ってるわけじゃねぇって!」
『……どういうこと?』
「お前その体便利すぎるんだろ?だからそのままで良いって思うんだろうよ」
『そうだね……本当に……』
「じゃあ絶対そのままで過ごしたくない体になれば魔物に馴染む進行は止まるんじゃねぇのか?」
……体を適当に?
そんな馬鹿げた話ないぞ……
便利な体ってこれ以上ないじゃんか……
退化しろって言ってる!?
毎回ちゃんと理由があって寄生してきたんだ。
植物の時は体が限界だったから寄生した。
しかも寄生先が動ける体だったから尚のことだ。
行動すらできなかったんだから。
カニからスライムへの寄生はもっと強くなれるように、がきっかけだ。
そこから進化の可能性が多方面にあるって事に強く惹かれた。
その可能性は僕が無くしたんだけど……
でもその時はレベルに囚われてたからさ。
レベル上限が高いおばあちゃんの加護付きスライムが凄く魅力的だったんだよ。
だから基本今の体より快適にする為に進化や寄生ってするものじゃ……
「……王が言う事は一理あるかもしれません。さらに馴染む前に、また体を変えてしまえばよろしいのでは……。ただ、根本的な解決にはなりませんね。その問題はきっと最終的に人になるしか……。クロムさんはそれに抵抗があるんでしょう?」
体を適当に変えまくるって!?
嘘だろ……。
でも、今の現状よりはマシなのか……
『そんな考えもある、か。全く頭に浮かばなかった……。あぁ、うん……。人への寄生はない』
「盗賊でもか?クロムの前の世界のことは知らんがこっちでは犯罪者は魔物扱いだぞ。人から外れた行動すんなら人じゃねぇって考えだ。殺されても文句は言えねぇ。だから実質俺ら目線では魔物に寄生することと同じだが……」
そういう考えに基づいてるのか。
シンプルだな。
こんな危険な世界じゃそうもなるか……
『そうなんだ、参考になるよ。でも僕の持っている倫理観を除いても無しなんだ。人に寄生するということはそいつの人生を背負わなければいけなくなるって事だろ?既に周りとの交友関係があるはずだ。その交友関係が煩わしいことになる。そして寄生先の人の記憶が入ってきたりしてみなよ。ちょっとあるんだよ前のカニの記憶。ずっと海漂って飯食ってただけのやつだったからどうでも良かったんだけどね。人になったら人の記憶が入ってくるんだよ?』
「……あぁ、嫌だな、それは。俺がお前の立場でも無理だわ……。いい記憶持ってそうな善人になるのはもっと抵抗ある……。言われて見りゃ確かにそうか」
「記憶を引き継いでいるのですか……」
『うん。さらにそれで僕自身の人格が変わってしまったりしないか……。多分多少なりと影響受けるでしょ……。魔物のまま人の記憶失うより無しだ。もし家族に危害を加えるようなやつだったらどうするんだよ……』
「そうだな。それならスライムの方がまだマシって考えになるか……」
さっきは家族のこと忘れたらどうしようって話した。
多分……それは大丈夫だと思うんだ。
無くはない、でも可能性は低い。
確率の問題だ。
僕の家族への認識が今と少し変わっちゃうかもしれないけれどね。
認識そのものが無くなる、という確率は低いとは思っている。
クラムは一応半分スライムだ。
でも家族を大切にしているからね。
ただクラムの場合進化だから。
貝の本能そのまま引き継いでいる線が濃厚なんだよ。
群れで暮らす種族だもん。
家族愛は強いじゃんか……
僕とすこし状況が違うんだ。
安心はできないんだよね……
そしてクラムに恋愛観があるか……
と言われればわからない。
まだ精々幼稚園か小学生くらいなもんだろうから。
無いのかもしれないしこれからかもしれない。
おばあちゃんの種族は必要ない、って種族。
無くはないけど要らない、って種族だ。
エステルは薄い。
本当に必要な人だけって話。
ただ、これに関しては少し優先順位は低い。
僕も覚えていけるかもしれないしさ。
それでいいかな、と今思ってるんだよ。
極論交配する種族に寄生すれば状況は変わるかもしれないってわかっているからね。
……ダメだ。それでも決め手がないな。
スライムよりいい種族って思い浮かばない……
それならこのままのほうが、がどうしても頭に残る……。
「この前人化できる魔物を探してるって言ってなかったかしら?体を変えながら探せばいいんじゃないかしら?」
『そうだな……その線の方が有力候補だね。でも……』
間に合わなかったらどうしようってなるんだよ……
贅沢言っている感じするかもしれないけれど僕の体ってクラムにも作用するからさ。
絶対スライムの方がよかったよ?
って思っちゃったら……
「ちなみに別の生物になったとしてスライムには戻れないのですか?最悪スライムが1番よかったとなればスライムに戻ればよろしいのでは?」
『戻ってくるって!?え……。考えたことない……』
なんだその考え!?
寄生って強くなる為にするんじゃないの!?
新たな体になる為に……
「クロムさんは進化ではなく、寄生をするのですよね?戻れない、という決まりはあるので?」
『ない……。多分無いと思う』
戻るなんて聞いたことない……
そんな解決策1人じゃ考え付かないよ……
でも……
……誰が戻ってきちゃダメって決めたんだ?
そんな決まりない……
「スライムなら私が捕まえてきてあげるわ?と言うより、1階層にいくらでも居るわよ?ダンジョンの魔物はダメなの?」
『あ、いや、このスライム……おばあちゃんの魔力の残滓なんだ……』
「では、最悪ティア様にお頼みすれば宜しいのではないでしょうか?」
ダンジョンの魔物に寄生……?
出来るのか……試したことない……。
ここの生物は魔力生物って……
え、もしできるなら、
ここの生物って寿命ないんじゃないのか。
あ、ただ……出られなくなる可能性があるか……
でも外から魔物を連れて入る事は可能なはずだ。
僕がそうなんだから。
じゃあ外に出るときはスライムになって、
中の間はダンジョンの魔物に寄生すればいいのか……
それができるなら何も気にする必要ないじゃん……
『そうだよ……はは……え?嘘……そんなことで……』
「んじゃ、それで決まりだろ!クロムが失うもんなんもねぇよ!」
『別の魔物に寄生出来たとして、きっと弱くなるよ……? ……それにボタン消えるよ?』
「そんなもん気にしてんじゃねぇ!いらんし弱くなってもいい!」
『いや……でも……』
「氷魔石が無くなってもいい!こんなもん湧いて出てきた話だろ。俺らはクロムに頼りすぎだ。っつーかお前氷魔石大量につくれんじゃねぇのか。気にすんなら体変える前に作り溜めておいてくれればいいだけの話だろうが!お前の家族も絶対そう言うぞ!そんなことでお前の人生潰すな!」
『いや、多分冷蔵庫は大丈夫だ。魔法が使えなくなったことはない……。体の能力が引っ張られるだけの話だから……』
「じゃあ尚のこと気にしなくていいわね。またクロムちゃんにゆとりがでたら、違う能力を使って便利な道具は考えてくれたらいい話。というより私達それぞれで考えればいい話だわ」
「然様ですね。そこまで気を使う必要はないかと」
とりあえず適当に寄生する……
人化できる魔物を探しながら……
最悪何もなければスライムに戻ってくる……
人の記憶が消えるのかはわからないけどそれは今も同じだ。
何も失うものがない!!
『いいんだね?甘えるよ?』
「おう!もちろんだ!こっちのことは気にすんな!」
「えぇ、それでもエデンには休日にちゃんとくるわ?」
「私も夜釣りがしたいので。店も作ってもらったことですしね」
『わかった!ごめんッ!僕帰るね!本当に助かった!このお礼は必ず!!みんなは好きにくつろいで帰って!』
バシャッ!
サイレントルーム解除ッ!
『みんな帰るぞ!僕の話を聞いてくれッ!』
いいよ~!!
……わかった
わかりました~!どうしました~?
なんじゃ?緊急か?
ピョンピョンピョン……
「礼なんかいらねぇっての。ふぅ……うまく事が運べばいいんだが……」
「心配だわね。私達も何かお手伝い出来ることを考えましょうか」
「ええ、難儀しそうですが、協力は惜しみませんよ」
「落ち着ける状況じゃねぇよ……。冷静になれんのがおかしいんだよ」
「えぇ、この状況で落ち着いているクロムちゃんを見て居る方が心配になるわ……」
「言いたいことは気にせず吐き出してください」
『ありがとう……。と言うより冷静なんだけどさ……、まぁいいや。これ考えても話が進まなくなるな』
いま心が2つある感じがするんだ。
人の自分と魔物の自分。
人の自分は焦れって言っている気がする。
でも魔物の自分は冷静なの。
二重人格になってるのかな。
それとも体と記憶が完全に分断されちゃってるのか。
しかも人間の自分がどんどん減っていく。
その度に焦らないといけない気持ちが消えていく……
「……家族には話してないの?」
『まだ話してないよ……』
「とてもいいにくいと思うけど、話した方がいいと思うわよ……」
それは分かってるよ。
怒られたからね。
言わないつもりではない。
『話すよ。秘密にしたかったわけではないんだ。話す為に少しだけでもとっかかりが欲しかったんだよ。話を投げてただ困らせるのが嫌だっただけ。それにまだ気付き出して2週間程しか経ってない。そして今、みんなの話を聞いて現状が確定した訳だから』
認識を確実にする為に情報を得たかった。
僕と他者を比較したかったんだ。
それも、家族でない誰かと。
「確定させる材料が欲しかった、というわけですね」
『そういうこと。話すにしてもきちんと話したいからさ……』
僕が魔物に近づいている件。
人間の記憶が失われている件。
エステルとの恋愛のことで気付いた。
記憶をさかのぼると高所恐怖症の件から既におかしかったことに気付いた。
ふと、気づくと前世の記憶が朧気になっていた。
で、今日だ。
まだ全然時間経ってない。
時間が経っていないのに急速に事態が進んでいることが問題なんだ。
「問題は……もう猶予がない、と言う事ですか」
『うん。……というより猶予が無くなったから気付けたって方が正しいかな』
「もう少し早く気付いていればゆっくり考えられたのだけれどね……」
『そうだけどね。考えても仕方ないよ。それは結果論だもん。変だな、と思う事があってもそれに違和感を感じなかったんだ。いや、違うね。違和感があるのが当然。そもそも前世の記憶をもって転生って事から変な事じゃん。僕のこの世界の生活って違和感がある事しかないんだ。他の人と同じように生きられる訳がないよ』
他の人と同じように過ごしたかっただけのはずなのに……
よく考えてみれば前世の記憶をもって転生した時点で無理だよ。
最初から同じように過ごせるわけがなかったのかもしれないな……
「……そうね。違和感があって当然。……そう考えると完全に人の記憶を失う前に気付けたことが奇跡ね」
『別に人間でも魔物でもいいかなって思ってたんだよ。その時には違和感に気付かなかったのにね。人間を失いだしてやっとこのままじゃマズいことがようやく見えたんだ。そうならないと気付けなかったんだよね。それも偶然だ……』
スライムに睡眠が必要ないって気付いたのなんか寄生してすぐのことだ。
でも、スライムだしまぁそりゃそうか。としかならなかった。
植物の時なんてもはや眠れなかったんだもん。
街の人見て美人だと思わない、とか論外だ。
こんな危険な生活してて優先順位めちゃくちゃ下でしょ?
気にも留めたことなかった。
エステルのおかげで偶然気付けただけだ。
「仕方ねぇよ。それに昔の記憶消えた瞬間なんかわかんねぇよ……。そんなもんいつの間にかとしか言えねぇ……」
本当にそう。
そんなもの明確にここからって……
ここから……
『あ、いや。それは分かるかも』
「そんなもん徐々にじゃねぇのかよ?きっかけはなんなんだ?」
『えっと、記憶は多分徐々に消えて行ったんだよ。それは間違いないと思う。ただ、急に加速した時は分かる。……ハイエルフの救出後からだ』
「何故そう思われるのですか?」
『今までにも思ったことはあったんだよ。王城に忍び込めた時にスライム便利だな。とかさ?こうやって皆と過ごせるのもスライムのおかげじゃん、って言ってたでしょ?』
「あぁ、それは事実だからな。お前が人だったら知り合えてねぇよ。城に入れてねぇ。ただの不法侵入だ」
そう、それはただの事実なんだよ。
スライムでよかった、って話。
『……ただ、スライムのままでいたい、とまで思わなかった。それがハイエルフ救出後くらいからふとした瞬間にこのままでいい、と何度も思うようになったんだ……。体を変えようと考える度にね』
「ちなみにクロムちゃんはいつからハイエルフを救出する計画を練ってたの?」
『……エステルと旅に出た瞬間からずっと。それこそスライムに成りたて位の時から……。あぁ、きっと張り詰めてた気が緩んだんだな……』
そうだ。
僕このスライムの体になってからずっとハイエルフの救出を目的にしてきた。
その目的が今無くなったんだ……。
僕のスライム生活はずっとハイエルフと共にあったんだ。
「それはそうでしょう。100人近くの命がかかっているんです。プレッシャーは甚大なはずです」
「あぁ、クロムならあっさりやるだろうとは思ってた。ただ、それとお前自身のプレッシャーの問題は別だ。ただでさえ、お前がただの魔法も使えない人間だったんならな……」
『うん、僕の体の問題なんかよりハイエルフの……エステルの家族の救出の優先順位の方が僕の中で遥かに高かった。だからここ最近だよ。次の体どうしようって真剣に考えだしたのって。チラチラよぎってはいたけどすぐに頭から消えちゃってたもん。僕の人としての記憶はハイエルフのおかげで保ってたんだと思う』
それこそ真っ当に考えたのはクラムの寿命の問題の時くらいだ。
でもそれもクラムのレベルの問題に落ち着いた。
さらにそれは時間の問題になったんだよ。
クラムがいつでも進化する準備が整ったらその後はいつでもいいって思ってた。
実際いつでもいいんだから。
僕もクラムもスライムに困ってないんだよ……
それにさ?
『僕もクラムも寿命200年あるんだよ!?今すぐ体変える必要全くないじゃん!こんなに便利で心地いい体なんだ!王都にも気軽に入れる!分裂作ってダンジョンも安全に攻略できる!みんなと電話も出来るんだ!王様達にボタン贈ったのだって……
「クロムっ!!……お前また頭ン中そのままで良いって考えでいっぱいになってるぞ」
『……あぁ、もう本当にダメだなぁ』
「事態は深刻ですね……」
「えぇ。それにきっとスライムの体が快適すぎることが輪をかけて事態を加速させているのね……」
『うん……。生存すること1点だけに考え絞ればスライムの上に出るものなんて中々いないよ……』
「本来スライムはそれほど強い生物ではないのですが……。強くなればそれほどに融通がきく体もないということですか……」
『ほんと何も困ってない。街に行く時くらいだよ。それもエステル、クラマ、おばあちゃんに迷惑かけてるなぁって思うだけ。僕自身の問題じゃない……。でもそれもスライムじゃなかったら街にも気軽に入れない訳で……
「なぁ。解決策にはならねぇが……。もう適当に体変えてみればどうよ?」
『は!?適当!?体だぞ!?』
「ガウルちゃんそれは……」
「違うって!俺自身が適当に言ってるわけじゃねぇって!」
『……どういうこと?』
「お前その体便利すぎるんだろ?だからそのままで良いって思うんだろうよ」
『そうだね……本当に……』
「じゃあ絶対そのままで過ごしたくない体になれば魔物に馴染む進行は止まるんじゃねぇのか?」
……体を適当に?
そんな馬鹿げた話ないぞ……
便利な体ってこれ以上ないじゃんか……
退化しろって言ってる!?
毎回ちゃんと理由があって寄生してきたんだ。
植物の時は体が限界だったから寄生した。
しかも寄生先が動ける体だったから尚のことだ。
行動すらできなかったんだから。
カニからスライムへの寄生はもっと強くなれるように、がきっかけだ。
そこから進化の可能性が多方面にあるって事に強く惹かれた。
その可能性は僕が無くしたんだけど……
でもその時はレベルに囚われてたからさ。
レベル上限が高いおばあちゃんの加護付きスライムが凄く魅力的だったんだよ。
だから基本今の体より快適にする為に進化や寄生ってするものじゃ……
「……王が言う事は一理あるかもしれません。さらに馴染む前に、また体を変えてしまえばよろしいのでは……。ただ、根本的な解決にはなりませんね。その問題はきっと最終的に人になるしか……。クロムさんはそれに抵抗があるんでしょう?」
体を適当に変えまくるって!?
嘘だろ……。
でも、今の現状よりはマシなのか……
『そんな考えもある、か。全く頭に浮かばなかった……。あぁ、うん……。人への寄生はない』
「盗賊でもか?クロムの前の世界のことは知らんがこっちでは犯罪者は魔物扱いだぞ。人から外れた行動すんなら人じゃねぇって考えだ。殺されても文句は言えねぇ。だから実質俺ら目線では魔物に寄生することと同じだが……」
そういう考えに基づいてるのか。
シンプルだな。
こんな危険な世界じゃそうもなるか……
『そうなんだ、参考になるよ。でも僕の持っている倫理観を除いても無しなんだ。人に寄生するということはそいつの人生を背負わなければいけなくなるって事だろ?既に周りとの交友関係があるはずだ。その交友関係が煩わしいことになる。そして寄生先の人の記憶が入ってきたりしてみなよ。ちょっとあるんだよ前のカニの記憶。ずっと海漂って飯食ってただけのやつだったからどうでも良かったんだけどね。人になったら人の記憶が入ってくるんだよ?』
「……あぁ、嫌だな、それは。俺がお前の立場でも無理だわ……。いい記憶持ってそうな善人になるのはもっと抵抗ある……。言われて見りゃ確かにそうか」
「記憶を引き継いでいるのですか……」
『うん。さらにそれで僕自身の人格が変わってしまったりしないか……。多分多少なりと影響受けるでしょ……。魔物のまま人の記憶失うより無しだ。もし家族に危害を加えるようなやつだったらどうするんだよ……』
「そうだな。それならスライムの方がまだマシって考えになるか……」
さっきは家族のこと忘れたらどうしようって話した。
多分……それは大丈夫だと思うんだ。
無くはない、でも可能性は低い。
確率の問題だ。
僕の家族への認識が今と少し変わっちゃうかもしれないけれどね。
認識そのものが無くなる、という確率は低いとは思っている。
クラムは一応半分スライムだ。
でも家族を大切にしているからね。
ただクラムの場合進化だから。
貝の本能そのまま引き継いでいる線が濃厚なんだよ。
群れで暮らす種族だもん。
家族愛は強いじゃんか……
僕とすこし状況が違うんだ。
安心はできないんだよね……
そしてクラムに恋愛観があるか……
と言われればわからない。
まだ精々幼稚園か小学生くらいなもんだろうから。
無いのかもしれないしこれからかもしれない。
おばあちゃんの種族は必要ない、って種族。
無くはないけど要らない、って種族だ。
エステルは薄い。
本当に必要な人だけって話。
ただ、これに関しては少し優先順位は低い。
僕も覚えていけるかもしれないしさ。
それでいいかな、と今思ってるんだよ。
極論交配する種族に寄生すれば状況は変わるかもしれないってわかっているからね。
……ダメだ。それでも決め手がないな。
スライムよりいい種族って思い浮かばない……
それならこのままのほうが、がどうしても頭に残る……。
「この前人化できる魔物を探してるって言ってなかったかしら?体を変えながら探せばいいんじゃないかしら?」
『そうだな……その線の方が有力候補だね。でも……』
間に合わなかったらどうしようってなるんだよ……
贅沢言っている感じするかもしれないけれど僕の体ってクラムにも作用するからさ。
絶対スライムの方がよかったよ?
って思っちゃったら……
「ちなみに別の生物になったとしてスライムには戻れないのですか?最悪スライムが1番よかったとなればスライムに戻ればよろしいのでは?」
『戻ってくるって!?え……。考えたことない……』
なんだその考え!?
寄生って強くなる為にするんじゃないの!?
新たな体になる為に……
「クロムさんは進化ではなく、寄生をするのですよね?戻れない、という決まりはあるので?」
『ない……。多分無いと思う』
戻るなんて聞いたことない……
そんな解決策1人じゃ考え付かないよ……
でも……
……誰が戻ってきちゃダメって決めたんだ?
そんな決まりない……
「スライムなら私が捕まえてきてあげるわ?と言うより、1階層にいくらでも居るわよ?ダンジョンの魔物はダメなの?」
『あ、いや、このスライム……おばあちゃんの魔力の残滓なんだ……』
「では、最悪ティア様にお頼みすれば宜しいのではないでしょうか?」
ダンジョンの魔物に寄生……?
出来るのか……試したことない……。
ここの生物は魔力生物って……
え、もしできるなら、
ここの生物って寿命ないんじゃないのか。
あ、ただ……出られなくなる可能性があるか……
でも外から魔物を連れて入る事は可能なはずだ。
僕がそうなんだから。
じゃあ外に出るときはスライムになって、
中の間はダンジョンの魔物に寄生すればいいのか……
それができるなら何も気にする必要ないじゃん……
『そうだよ……はは……え?嘘……そんなことで……』
「んじゃ、それで決まりだろ!クロムが失うもんなんもねぇよ!」
『別の魔物に寄生出来たとして、きっと弱くなるよ……? ……それにボタン消えるよ?』
「そんなもん気にしてんじゃねぇ!いらんし弱くなってもいい!」
『いや……でも……』
「氷魔石が無くなってもいい!こんなもん湧いて出てきた話だろ。俺らはクロムに頼りすぎだ。っつーかお前氷魔石大量につくれんじゃねぇのか。気にすんなら体変える前に作り溜めておいてくれればいいだけの話だろうが!お前の家族も絶対そう言うぞ!そんなことでお前の人生潰すな!」
『いや、多分冷蔵庫は大丈夫だ。魔法が使えなくなったことはない……。体の能力が引っ張られるだけの話だから……』
「じゃあ尚のこと気にしなくていいわね。またクロムちゃんにゆとりがでたら、違う能力を使って便利な道具は考えてくれたらいい話。というより私達それぞれで考えればいい話だわ」
「然様ですね。そこまで気を使う必要はないかと」
とりあえず適当に寄生する……
人化できる魔物を探しながら……
最悪何もなければスライムに戻ってくる……
人の記憶が消えるのかはわからないけどそれは今も同じだ。
何も失うものがない!!
『いいんだね?甘えるよ?』
「おう!もちろんだ!こっちのことは気にすんな!」
「えぇ、それでもエデンには休日にちゃんとくるわ?」
「私も夜釣りがしたいので。店も作ってもらったことですしね」
『わかった!ごめんッ!僕帰るね!本当に助かった!このお礼は必ず!!みんなは好きにくつろいで帰って!』
バシャッ!
サイレントルーム解除ッ!
『みんな帰るぞ!僕の話を聞いてくれッ!』
いいよ~!!
……わかった
わかりました~!どうしました~?
なんじゃ?緊急か?
ピョンピョンピョン……
「礼なんかいらねぇっての。ふぅ……うまく事が運べばいいんだが……」
「心配だわね。私達も何かお手伝い出来ることを考えましょうか」
「ええ、難儀しそうですが、協力は惜しみませんよ」
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久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
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以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
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(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
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腕には、守るべきメイドの少女。
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―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
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