世界のためなら何度でも

つぼっち

文字の大きさ
112 / 286
第九章、敗北と絶望

#110 博識の試練

しおりを挟む
「そう。お前には極限状態技術エクストラスキルを習得してもらう。」

「エクストラスキル……。」

「エクストラスキルは神をも超える力。」

「そんな力があるのですね。」

「そう、お前はその力を身につけないといけない。」

「何故です?」

「……それが、世界の決めた選択だからだ。」

グランがパチンと指を鳴らすとさっきまでいた少し狭い研究所がなくなり、足場の悪い山岳地帯のような場所に変わった。

「俺がいうのもなんだけどお前には守る力しか備わっていない。もし相方や主人が戦闘不能になった状態で逃げられないようになった時どうする?守るだけじゃなにもできないだろ。」

「……。」

グランはゼロに紅い宝石を渡す。

「それはお前が結界内に来る前にお前の潜在能力を引き出すために作ったものだ。まぁ名前は考えてないしそうだなぁ……、《零石ゼロストーン》とでも言っておくか。」

「零石ですか……。」

ゼロはその宝石のようなものを結界の明かりにかざす。

石に光を当てると紅く綺麗にキラキラと光った。

「神様もなんでこんなもの作れって言ったのかわからんがまぁ必要なものなんだろうな。」

「神様ですか。それはもしかして神王様のことですか?」

「いや、もっと上の神様だ。まぁお前は知る必要もない。」 

「世界の選択とは一体なんなのですか?」

「なんでそんなことを聞く。」

グランはひどく真剣な目でゼロを睨む。

そして深いため息をつき、頭をボリボリとかきむしる。

頭からはフケがパラパラと落ちた。

「いや、まぁいい。今は知らなくていいんだ。いつかお前の主人が解明する時が来るさ。」

グランはそう吐き捨ててゼロに向き直る。

「お前には守りたいものはあるか。」

さっきとは違い穏やかな口調で話しかける。

「あります。」

「そういうと思ったよ。お前は防御力が高いがその分攻撃がない。そこでその零石を使って限界を突破するんだ。」

「限界突破……。」

ゼロは零石を見つめる。

それに反応するように零石はキラキラと光がイマイチ実感は掴めない。

「その限界突破するためにこの試練がある。試練の内容はそれぞれ違うが俺の《博識の試練》の達成条件は『俺を殺すこと。』、その零石を使って攻撃力を引き出し、私を殺してみろ。できるか?」

「そんな……博士を傷つけるなんてわたしには……。」

「はぁ。」

グランは深いため息をつく。

「作ったのは俺だがここまでお人好しに作ってしまっていたか。」

グランはそう言って手をパンと叩く。

すると背後から次元の渦ができ、中から大量の銃火器が出現した。

銃火器の銃口は全てゼロを捕捉している。

「俺は今から本気でお前を殺す。そしてお前を二度と作らない、またあの主人のところに行きたいのなら俺を殺して試練を達成するんだな。」

「で、でも」

「でもじゃない。お前には誰かを守るための覚悟がない。生憎俺は一度死んでいるんだ、今更もう一度死んだところでなにもない。」

グランは腕を組む。

「それじゃあ今から試練を開始する。覚悟を決めないと早々に死ぬぞ。」



こうして、ゼロの望まない形のまま《博識の試練》がはじまった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

ペットになった

ノーウェザー
ファンタジー
ペットになってしまった『クロ』。 言葉も常識も通用しない世界。 それでも、特に不便は感じない。 あの場所に戻るくらいなら、別にどんな場所でも良かったから。 「クロ」 笑いながらオレの名前を呼ぶこの人がいる限り、オレは・・・ーーーー・・・。 ※視点コロコロ ※更新ノロノロ

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

処理中です...