世界のためなら何度でも

つぼっち

文字の大きさ
137 / 286
第四章、VS《錬王》キャラメル=フラメル

#137 神剣エクスカリバー

しおりを挟む
「仲間に手を出すなんて狂ってる!!」

「…………私だって。」

悔しさを隠すように唇をギュと噛んだ後、

「私だってこんな人の道を外れた魔術なんて欲しくなかったさ。」

悲しそうな声でそう呟いた。

「僕は錬金術師の家庭で育ったからこんな対価を求める魔術の術式しか作れなかった。でも会長は!!翔かけるは、そんな私のおぞましい魔術さえ認めてくれたんだ。」

キャラメルは目に涙を浮かべながら空中の血の刃をミルドに向ける。

「翔の期待に応えるんだ。じゃないと恩を仇で返すことになってしまう。」

キャラメルはゆっくりとミルドに狙いを定める。

「私の命は研究会の、翔のために!!」

血の刃が一斉にミルドの方に飛んでいく。

「ぬぅ!!」

五本と一人を一本で相手するだけあっていくら剣帝でも体力の消耗も激しい。

さらに生贄魔術によってキャラメルの身体能力は格段に上がっている。

だが、

「私も主人のために負けられないのですよ!!」

ミルドは空間に穴を開けてそこに聖剣を突っ込む。

そしてゆっくりと引き抜いていくと聖剣は先ほどまでと違い金色の剣が出てきた。

「それは……。」

「私のエクストラスキル、『神剣エクスカリバー』です。」

「だからなんです、所詮ただの剣でしょう。」

キャラメルは血の刃をタイミングをずらして違う方向から飛ばす。


パパパパパ


ミルドはまるで見切っていたように全ての血の刃を弾き落とした。

「後ろに目でもあるんですか……。」

圧巻すぎてため息しか出ない。

これが選ばれたものと選ばれなかった者の差なのかと。

「すべて神剣が教えてくれた。このエクストラスキルは剣を体の一部のように共有化するスキル。剣が見ている限り奇襲などもできんだろう。」

「なんですかそのぶっ壊れスキル。」

「ただし剣を振り回しすぎるとオウッ、目が回る。そして今もウップ、吐きそうだ。」

「馬鹿じゃないか。」

「う、うるさい!!私も気にしているんだ!!!!」

ミルドは怒ってキャラメルの懐に潜り込む。

(馬鹿め!!)

キャラメルは一瞬でもう一本の血の刃を作り、ミルドの胸に突き刺す。

しかしミルドはそれを見切っていたように高速でバックステップで後ろに下がる。

「な!?さっきまであんなに早く動いてたのに急に方向転換できるわけないだろ!!」

「これがエクストラスキルのもう一つの力、身体超強化だ。」

そして一歩前に足を出し、剣をキャラメルの胸を突き飛ばした。

「!?」

突き飛ばされたキャラメルはその勢いのまま闘技場の壁に体をぶつけ、ずるずると力なく倒れた。

「し…、死んでない?」

どう考えてもあの勢いで剣を突き刺されたら三流の剣であっても心臓を貫かれて死んでいたはずだ。

なのに体には背中をぶつけたダメージしか無い。

「エクストラスキルはその人物の覚悟を表すもの。だからこの神剣で人を殺すことはできないようになってるのですよ。」

「……。」

キャラメルはぐったりと仰向けに寝転がる。

「完敗です。」

「しばらく安静にしてればその背中の打撲も治るはずだ。大人しくしとくんだな。」

「もう抵抗なんてしませんよ。」

キャラメルは最後に誰にも聞こえないような声でボソリと、


「こんな人を傷つけるような魔術師の私でもあなたのようになれますかね。」


キャラメルはゆっくりと目を閉じた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

ペットになった

ノーウェザー
ファンタジー
ペットになってしまった『クロ』。 言葉も常識も通用しない世界。 それでも、特に不便は感じない。 あの場所に戻るくらいなら、別にどんな場所でも良かったから。 「クロ」 笑いながらオレの名前を呼ぶこの人がいる限り、オレは・・・ーーーー・・・。 ※視点コロコロ ※更新ノロノロ

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

処理中です...