世界のためなら何度でも

つぼっち

文字の大きさ
144 / 286
第六章、【研究神】天之川翔

#144 暴発

しおりを挟む
「サンキューダーク。」

「気にすんな。」

ダークが持ち堪えてくれたおかげで解毒までの時間が稼げた。

毒は全回復し、再び立ち上がる。

「おっしゃ続きだ。」

「……つくづく面白いねぇ君は!!《ダーク&ダーク=ダーク・ブラスター》!!!!」

天之川の魔術は俺に着弾する一歩手前で錬金魔術で魔力から作られた壁によって遮られた。

「チッ!!」

天之川は地面に手をかざし、錬金術で巨大な杭を作り俺にぶつけようとする。

だが俺はエクストラスキルで杭を噛み砕く。

いや、これは時間稼ぎ。

本命は……!!

「時間停止か!!」

「もう遅い!!!!」

だが手はある。

これは賭けだ。

でもダークがこの空間に入れるということは確率は上がる!!

「『反魔術(アンチマジック)!!』」

俺とダークは同時に魔術を唱える。

このアンチマジックは俺が編み出した新たな魔術。

確率は10%とかなり低いし相手に隙がない限り発動できない。

でもここにはダークもいる。

二人合わせて確率20%、そして詠唱時間で天之川に隙ができている。

しかし、

「ゲブっ!!」

「ダーク!?」

時間が止まってしまった。

そして俺の後ろにいたはずのダークが時間停止する前に俺の前に出てナイフから庇ったのだ。

ナイフはまたしても毒入り。

しかも解毒はダークが生まれた後に習得した魔術。

ダークには毒を直す術がない。

「すごいね。クローンは本来オリジナルに反発する存在なはずなのに。それほど『思い』が強かったんだろう。」

ダークはゆっくりと目を閉じようとする。

「諦めるな!!俺が解毒を!!」

「間に合わねぇよ。俺は置いてけ。」

俺は必死に解毒をするがダークの意思によって拒否される。

「まぁ頑張れや。お前ならあいつに勝てるさ。」

ダークは最後の言葉を言い残し、ゆったりと死んでいった。

天之川はどこか寂しそうな顔をしていた。

それは果たして所有物がなくなった時の感情か、愛を持って生まれた存在への敬意か。

俺は剣を握り直し、天之川へ向かっていく。

天之川は大量の魔術を放ち、俺はそれをかわしながら天之川に斬りかかる。

五分五分の戦い。

そして再び、天之川のクールタイムが終わったようだ。

「……、次は君を刺す。これが最後の時間停止だ。」

「やってみろよ。俺は死なねぇ、ダークの分まで生きてやる!!」

天之川は魔術を天に放つ。

10秒。

時間停止の発動までの時間だ。

その間に俺は先ほどの魔術、アンチマジックを準備する。

ダークがいなくなり確率は減ったがそれでも、行ける気がするんだ。

「時はきた!!」

「させるか!!《反魔術(アンチマジック)》!!」

次の瞬間天之川の魔法陣がパキンと音を立てて崩れていく。

「な!?」

「発動……した!!」

大きな魔術を発動する際は術者の魔力の流れや強さを安定させるために魔法陣が使われる。

魔法陣は術者の魔力の流れをサポートし、力を抑制する力があるからだ。

その魔法陣が魔術の途中で崩壊したら、

「反動で術者の体の魔力が暴発する。特に魔力が無尽蔵なお前にはそれこそ死ぬくらいにな!!」

「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!」

魔法陣がなくなり行き場のなくなった魔力が体をむしばみ続け、体を引き裂いていく。

「こんなところでぇぇぇぇぇ!!!!こんなところで僕の研究はおわれないんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

天之川は奇声をあげ、のたうちまわりながらやがて動かなくなった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

ペットになった

ノーウェザー
ファンタジー
ペットになってしまった『クロ』。 言葉も常識も通用しない世界。 それでも、特に不便は感じない。 あの場所に戻るくらいなら、別にどんな場所でも良かったから。 「クロ」 笑いながらオレの名前を呼ぶこの人がいる限り、オレは・・・ーーーー・・・。 ※視点コロコロ ※更新ノロノロ

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

処理中です...