世には、不思議が満ちている。

篝火(かがりび)

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小さな神社。🌑

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    夏祭りや、秋の収穫祭の
お祭りを執り行う境内には
沢山の屋台が並ぶ…


    小さくとも歴史ある
神社があるのは住宅街と
地元の大学院の一角だった。


    昼間のこの小さな神社は
ありふれた印象のいたって
普通の神社にしか見えない。

    
    賽銭箱のある縁側で
のら猫が、陽ざしを浴びて
まどろむ様は…ごく普通の
日常を具現化した空間そのもの



    あの神社は「…怖いっ」と
呟いたのは私の母親だった
しかし…怖い理由を何故か?
詳しく教えては貰えなかった。



    ほんの少し伝え聴いた
話では、真夜中に外灯の
灯りがポツポツと灯る闇夜に…
あの神社の傍を通ったらしい
しかも徒歩で…


    この時代…自家用車を
持つ者はまだ少なく黒電話
すら各家庭には無かった。
商売をしている商人か会社を
経営しているお大尽でないと
電話を引いたり、自家用車を
持つことは出来なかった。




  急患が出れば馴染みの
“かかりつけ医”に頼るか
救急車を呼ぶしか“選択肢”が
なかったらしい。


  
    救急車を頼むほどでは
無いと判断しての行動だった
らしいが…なぜ徒歩でかなり
距離のある…医者まで彼女が
向かったのか?幼い子供故に
よく解らなかった。



    月のない闇夜
真夜中の…神社をてらす
外灯の電球の灯りはうす暗く
さらに足もとは舗装をされて
いない剥きだしの黒い土…。


    季節は、夏の終わり
ひんやりとした風の吹く
秋の始まり…


    神社の境内にそびえ立つ
大きく枝を…彼方にのばし
密集した常緑の葉をつけた
見上げる程の大木。
そこで見たくもないモノを
見てしまった…らしい…。
    
    背筋に氷柱を入れられた
かのような凍りつく恐怖に
生きた心地が…しなかったと
彼女は語った。


    
    初秋の訪れを予感させる
ひんやりとした風が、青々と
茂る葉を揺らしてサラサラと
音をたてる。その密集した
葉の隙間からナニカが彼女を
見下ろしていた!?


    あれほど恐ろしく恐怖に
震えたのは、後にも先にも
無いと彼女は青い顔で語った。


 その後も…彼女が
“みたモノ”を語ることは
なかった。





            ★  ★  ★



    その後…独り暮らしを
はじめる前に…久しぶりに


    件のあの神社の傍を
夜遅く通る機会があった。
時刻は真夜中の11時半過ぎ
外灯は、水銀灯になり…
暗い夜道を照らす数も増え
明るさの…増した灯りは
暗闇を…畏れる人の心情を
軽くする。



    それでもあの話を
知る者には若干の“畏怖”が
心を占める。



    風にそよぐ葉ずれの音を
耳にしながら勇気をふるい
空を…覆いつくす青々と葉が
生い茂った境内にそびえ立つ


    神社の“ご神木”を
ゆっくりと見上げた。


    ご神木は、年月を重ね
威風堂々と小さな神社の
境内に佇んでいた。

    恐怖を感じるモノとの
出会いは幸運にもなかった。



    だが厳かな気配が
ヒシヒシとただようこの神社は
やはり“神様”の御座す場所
なのだろう。











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