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早朝の不思議な世界…⛅

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    通学前…ひんやりとした
早朝の気持ちの良い大気の中
ゆっくりと愛犬と共に歩く。

    目覚めたばかりの
小鳥達の囀りと…早朝の
柔らかな太陽の光に満ちた
満ちたいつもの散歩コース。


    散歩コースに含まれる
ある公園を眺めたその瞬間
言葉をなくした。
  


                  ☆  ☆  ☆
    


    いつもの馴染みのある
風景が一変していたのだ。
キラキラと仄かに発光し
…輝いて見える世界は…
言葉では上手く語れない。


    その空間が醸し出す
不思議な光景は、あたかも
神の“祝福”を受けたかの如く
神々しい気配が満ちていた。
静謐でいて躍動する生命の
息吹を感じる不可思議な世界。
違う次元に迷い込んだかの様な
美が完成された世界…。


    心がすべてその風景に
囚われ呆然とし立ち尽くす。
我に返れたのは、愛犬のおかげ
だった。その場に立ち止まった
主に痺れを切らしぐいぐいと
引っ張られたから。


その先にある原っぱで
自由気儘に、駆けまわり
探検をする事が…唯一の
彼の毎日の楽しみ。
    
   
    不審者対策の為
番犬として犬小屋に
繋がれいる彼には散歩は
ご褒美なのだ。
 

    捨て犬だった彼が
家に来たのは3年前のこと。
木箱の中で、啼いていたのを
見かねて連れ帰ったのは私と
兄である。
    この頃は捨て犬や野良犬を
番犬にするのは普通でした。


    ごく普通の家庭では…
ペットショップで血統書が
付いた犬や猫を、購入する 
とか考えもしない時代…。
    知人の家で生まれた子犬を
譲って貰うか、捨て犬を拾う
のが一般的でしたね(笑)
    勿論のこと知人の飼い犬も
血統書とか無縁の元捨て犬の
雑種でございます。


    ペットショップ等で愛玩犬として選び、購入する昨今とは違い…この時代はペットに対しての 考え方や飼育方法は、かなり
大雑把な上に大らか可愛がるのですが…それは番犬とした扱いでした。

   
    この先のただっ広い原っぱで心ゆくまで遊び、元気いっぱい駆け回ることが彼の楽しみ♪
    繋がれた番犬の唯一はささやかで切ない。



                  ☆  ☆  ☆


       
    翌日も昨日と同じく
爽やかな良いお天気でした。
件の庭園を改めてよく見たい!わくわくとしながらそちらを見た。あれれっ!嘘っだろっ


    あの素晴らしい光景は
何処にもありませんでした。


    静謐なあの空気も発光するかの如く煌めいた咲き乱れる美しい花々や、中央に効果的に配置されたソテツの特性を活かした円形の花壇には…昨日の輝きはなく、一昨日と変わらぬ普通の景色に戻っていました。



    ソテツを配した円形の花壇を囲む、四隅に配置された“左右対称の池”は輝きの失せた池に。


    その周囲を額縁の如く縁どり計算された配置に美しく植えられた松や、アオキにツツジや小輪のさつきの植え込みは…
あの神秘的な昨日の光景を忘れたかのように一昨日と変わらぬ景色を見せていました。
   
    
    常日頃から手入れがゆき届いたこの庭園は…四季折々に咲く花々や、淡い柔らかな薄緑から濃い緑色へと移りかわる葉色を
楽しめる趣のある素晴らしい庭園なのですが、昨日の神秘的な美を知る身としては物足りないと感じてしまうのはどうしようもありません。

    
      同じ条件下での 
まったくおなじ場所。神様の
悪戯かも…しれません。


    そして…神秘的だったあの素晴らしい光景には二度と出会えないのです。


    貴方は…馴染みのある風景がまったく違う顔を見せる瞬間を見たことはありませんか?




    
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