優しい闇に抱かれて

篝火(かがりび)

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いまだ其れに囚われる。

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『…この出来損ない
    迷惑かけるんじゃ
    ないよ!』

『家の手伝いすら…
    まともに、出来ない
    “役立たず”が
    一人前に熱を出して
    寝込むとか…
    あり得ないだろうが』

『ふんっ!どうせ…
    サボりたいだけの
    仮病だろう。』

…………………………
…………………
…………




連綿と続いた…
心を、ズタズタに
ひき裂く苦しみから
初めて解放された
…眠りのなかで…
突如…頭の中に響く
憎々しげな声…
毒を含む言葉の刃で
私の心を切り刻み…
罵り貶める。







穏やかで…
優しかった眠りが
義母の恐ろしい
罵り声と、嘲りの
言葉の数々と共に…
全てが容易く
暗転してしまった。
幼い頃から…
自我や反発心を
…無理やり…
抑えつけられた!
抗いようのない
“記憶”が嘗ての…
辛苦を呼び覚ます。
…苦しい…
悲しい…ツライ…
もう…いや…
…死にたいの…
誰か…助けて…
…お願い…私を…
自由に…して欲しい。
…………………
…………




◇  ◇  ◆




「…リン起きろ!」

「起きるんだ!
    目を覚ませリンカ
    …早く起きろ!
   リン!聞こえるか…」

「リンカ、大丈夫!
    俺だよ…ウィルだ。
    側に居るから…
    安心して…早く
    目を覚ませ!」







長い年月をかけ…
劣等感や、罪悪感を
繰り返し刷り込まれ
精神を支配された
私にとって…
義母の嘲り声や
罵倒する言葉すら
恐怖でしかない。
頼れる人の居ない
悲しみと…
足掻くことも…
逃げることすら
出来ない絶望に苛まれ
恐慌状態に陥って
うなされ苦しむ
私を、必死になって
現実に呼び戻して
くれたのは
ウィルだった。





「…大丈夫!
     大丈夫だから…
     リンの側には…
     俺が、居るから
     悪夢なんか
     怖がるな…」

「リンカの事は…
    俺が…ずっと…
    ずっと守るから…
    安心しろ!」





目を覚ましても
恐怖で、まだ震える
私を強く抱きしめて
優しくなだめ…
彼は言ってくれた。


 


        ☆  ☆  ☆



 
ウィルの…
温かな胸のなかで
どうにか落ち着いた
私が、ウィルと一緒に
帰路についたのは…
暫くしてからだった。
彼は、私の存在が
この世界から…
消えてしまうのを
恐れるが如く…
私の手をしっかりと
握りしめ離さなかった。



 
そして…
彼の家に帰ると、  
此方の世界に来て
初めて見るお客様が
彼の両親と共に…
私達二人の帰りを
待っていた。 




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