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01・予知夢と前世の記憶
しおりを挟む「マリン・グラッセッ、並びにマロン・グラッセ!
貴様らの企み、全て暴かれたぞっ!!
貴様らは、国家転覆の企みをした罪により、罪人収容施設、風雷館送りを命じる!
もちろん婚約者候補からも外れて貰う!」
マリン・グラッセと隣に立つ双子の妹、マロン・グラッセに向かって大声を上げているのは、グロッシュラー王国の第5王子、メロウ・ロ・グロッシュラー殿下。
お決まりの台詞から始まる婚約破棄宣言は、お決まりの場所、高等科卒業パーティーその日だ。
そう、これは予知夢である。
マリンとマロンは、初等科を卒業した夏休みに、遊んでいたペットの雷竜の雷に打たれ、予知夢と前世の記憶を少しだけ見た。
その時の衝撃と得た知識のせいか、マリンとマロンの性格は変わってしまった。
それまでは、プラチナブロンドとエメラルドの瞳を持つエルフハーフと言う事で、顔は可愛くて魔力は高いが、おバカで愛嬌だけあるキャラだった。
マリン達が住むこの国は、黒魔導師達を主として構成される軍事国家。
王子の婚約者候補も、高い魔力と素質のある者が選定される。
第5王子、メロウ王子の婚約者候補は、マリンとマロン以外に4人いた。
6歳から12歳まで通う初等科は婚約者候補と王子のみで形成された特別クラスで過ごした。
皆、とても仲が良くて、高等科に行ってもこのまま続くのだと思っていた。
今となってはとても懐かしく、もう二度と戻らない時なのだと実感する―――。
―――1年前。
・初等科、最高学年、特別クラス。
「おいっ、いつまでそのつまらん授業を続けるんだ!」
ダンッ
と、自席の机に乱暴に足を乗せたのは、このクラスでただ一人の男子生徒、第5王子、メロウ・ロ・グロッシュラー。
柔らかそうな肩下までの金のパーマヘアを襟足で簡素にくくった髪型、吊り上がった眉の下には少しタレ目がちな碧い瞳。
整った鼻筋と薄い唇、そして細身の体にまとった白の軍服姿は、絵本に出て来る代表的な王子様のルックスと言えよう。
「もう腹が減ったから、授業は終わりだ!」
メロウ王子は、更に大声を上げ、革靴を履いたままの足で、机をダンッと踏み鳴らす。
「ひっ、メ、メロウ、殿下…。
ま、まだ4限目もまだですがっ…。」
若手の女教師は王子に怒鳴られ、縮み上がっている。
これも毎度の事だ。
「いいから、早く出て行け!
おいっ、お前達、食事の準備だ!」
メロウ王子は立ち上がると、バッと手を振り、マリン達にも指示を出して行く。
これもいつもの事だが、ひっそりとため息を付いている者もいた。
女教師はシクシクと泣きながら教室から出て行ったので、マリン達も机の上から教科書をしまい、机を動かし始めた。
他の候補生達も同じように机を動かし、皆で囲って食べるようにセットして行く。
「今日はマロンの担当だったな。」
メロウ王子は腕組みをしながらふんぞり返っている。
「は~~い、早起きしてガンバリましたよ~~!
ええと…、お弁当の包みは~~~………。
あれ、マリン、どこだっけ?」
カバンやロッカー、机の引き出しをゴソゴソ漁るマロン。
皆の分のお弁当をどこに置いていたか…。
さすがに引き出しの中には入ってないだろう…と、他の候補生達は汗を伝わせながら見ている。
「ああ、ええと~…。
たしか、お家の食堂のテーブルに一度置いて…。
あれ、その後、ちゃんと持った?」
「どうだったかな?
マリン、持った?」
「うーん、もっ……、って、ない、かも?」
「ってことは?」
「お弁当は、…お家の食堂、かな?」
「ええいっ、もう良い!
ユラ!」
スローテンポのマリンとマロンに苛立ちを隠せなくなったメロウ王子は、大声を上げ候補生の1人を呼ぶ。
候補生の一人、ユラ・コウム。
清楚な黒髪を後ろでまとめた、スレンダーで優しい表情を浮かべる女子生徒。
ユラは、小さくお辞儀をした後、教室後方にある戸棚の上から大きな風呂敷包みを持って戻って来た。
「すっご~~いっ、ユラちゃん!」
「今日、マロンの当番だったのに、用意してくれてたんだ!」
風呂敷包みからは、人数分のお弁当が出て来て、マロンとマリンは驚きの声を上げる。
ユラはニッコリと微笑んで返した後、皆にスプーンやフォークを渡して行く。
「今度、ユラちゃんのお当番の時に、交代してあげないとね。」
そう言ってほんわかと微笑んだのは、マリンの前に座っている候補生、ミシーユ・バーシー。
茶色のロングヘアをキレイに巻き、爪の先まで美しく整えている美少女だが、雰囲気はとても穏やかで優しい。
「ユラさんの次の番は、3日後です。」
一番奥の端の席に座っていた候補生、シータ・ヤクハ。
知的な眼鏡と黒髪のロングヘア、候補生の中でもかなりの美少女。
「どうせまた忘れるでしょ、マリンとマロンは。」
そう言って意地悪に笑うのは候補生、フロア・ミガーヤ。
赤黒のロングヘアに少しタレ目なのに、意地悪そうに上がった眉。
王子の腕にしがみついて馴れ馴れしくしている。
「よし、食べるぞ。
オレは腹が減って仕方がなかったんだ!」
偉そうに声を上げ、メロウ王子はマリンの隣の席に着くと、弁当の蓋を開け早々に食べ始めた。
皆は顔を見合わせながらも、弁当を頂く事にした。
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