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06・12歳検診

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グロッシュラーでは、初等科を卒業した年、12歳検診が行われる。
検診の参加は自由だが、高等科へ進む為には検診で適正判断を受け、誓の儀式を行わなければならない。
この際に、魔導師としての将来の道を決める。
黒魔導師になるのか、白魔導師になるのか。

この時に決めたジョブは、この先変える事は出来ない。
12歳検診で適正ありと診断を受けた者は、誓の儀式でジョブの宣言をする。
儀式後に、そのジョブを記した魔法石の埋め込まれた身分証が発行される。

ジョブの固定化をすると、上級魔法が使えるようになるが、そのジョブで使える魔法のみしか使えなくなる。
ジョブの固定化前までは、才能があれば様々な魔法を使う事が出来るので、ジョブの固定化を嫌う者も居るが、上級魔法を使えるようになる為にも、儀式でジョブの固定化を行う。

検診は18歳、21歳、23歳、25歳…と、この先も何度か受ける機会はあるが、低年齢で受けた方が将来性が高いと評価される。
そしてグロッシュラーの魔導師の8割以上は皆黒魔導師の道を選ぶ。
黒魔導師の方が出世が出来ると決まっているからだ。
だが、傷の治療が出来る白魔導師は必要不可欠な為、2割程度は白魔導師に選定される。
もちろん、自分からなりたがる者はほとんどいない。

ちなみに、グロッシュラーの国民全員が魔導師になれる訳ではなく、魔導師以外にも魔導師の盾となる騎士達や、商業、農業などで生計を立てている一般人もいる。
ジョブの固定化をして高等科へ進めるのは、エリートと言う事なのだ。

マリンとマロンは、どちらかは白魔導師になれとメロウ王子から言われていた。
メロウ王子は将来マリン達を妻にすると決めているようなので、念の為片方は治癒の能力を持たせておきたいと考えての事だ。
好戦的と言われている第2王子に知られたら、臆病者と笑われるだろうから、内緒だと言われた。
その言葉がなくとも、マリン達もそうしようと考えていた。


すっかり忘れていたが、12歳検診は確か…、後2~3日後な筈だ。
それまでにどちらが白魔導師になるか決めて、高等科の入学手続きもしなければならない。
「せやから、今が決断のタイミングでっせ。
悪いようには致しません、雷竜は飛行訓練をした後、竜の里へと帰そう思うとります。
このサイズでは連れ歩けませんし、その辺に放っては魔物と勘違いされて冒険者に襲われる…いや、たくさんの犠牲者が出てしまうかもしれまへんから。」
「・・・。」
犠牲者ーーー。
チューブの言う通りだろう…。
雷竜の肌はとても強靭で、魔法耐性も高い。
この雷竜は温厚だが、敵意を持って襲い掛かったら反撃に出るだろう。
並みの冒険者ではたちまちやられてしまうに違いない。
「ライちゃん…。」
「ううう。」
瞳を潤ませながら、窓の外の雷竜を見つめるマリンとマロン。
今のマリンとマロンならば、10メートルがどんな大きさか正確に分かる。
ここが郊外とは言え、隠しきれるサイズではない。
「・・・。」
「・・・。」
俯いてしくしく泣いていたがーーーー。
やがて2人は決心し、雷竜をチューブに引き渡したのだった。
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