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18・王子妃の覚悟
しおりを挟む「!!?」
突然声を掛けられ、マリン、マロン、シータは慌てて声の方を向く。
そこにはいつものパンツスーツ姿のグミーが立っていた。
『気配がっ…。』
『…ビックリした…!』
ドキドキと高鳴る胸を押え、声も出せずに呆然と現れたグミーを見つめるマリンとマロン。
シータも何も言わないが、同じように驚いているように見える。
全く気配を感じさせずに現れたからだ。
「もうすぐ第3王子の祝辞が始まりますよ。
候補生達が会場にいないとは、嘆かわしい事です。
さ、会場に戻りましょう。」
にっこりと微笑み、グミーはマリンとマロンの背に手を宛て、強引に歩き出した。
「せ、先生っ。」
「ふふ、あなた達、本当にそっくりなのねっ。
なるほど、あの子が手放したがらない筈だわ。」
クスクス無邪気に笑うグミーに、マリンとマロンは困惑するしかない。
後ろに目線を向けると、シータも後に続いていて、少しだけほっと胸を撫で降ろす。
「今日は何かトラブルがあったようね?」
「っ、知っているのですかっ?」
「いいえ、先程生徒会のメンバーからチラッと聞いただけなの。」
「フロアちゃんがっ。」
「無実なのに、なのにっ…!」
マリンとマロンは左右からグミーに顔を寄せ、必死に訴える。
「……なるほど…。」
「!」
分かってくれた…!
と、マリンとマロンは喜び目を見開く。
「よくある事よ、王子の婚約者候補達の間では。」
「え。」
「えっと…?」
よくある事…?
「必ずそういう女性がいるの。
私の時もそうだった。」
「・・・、えっと…・・・?」
しみじみ語られても…?
グミーは今は講師の立場だ。
過去を振り返った思い出話など、今聞きたい訳ではない。
「やっていない事をやったと罪に問われ、それが通ってしまう。
恐ろしいわよね。」
「・・・、ハイ…。」
だから、何とかしてくれ。
一体このやり取りは何だ…?
後ろに居るシータも、何か言いたげにしながらも黙って会話を聞いている。
「私達王子妃はね、それを跳ね除ける力が必要なのよ。」
「「・・・・え・・・・?」」
「王宮内は力を欲する者達の陰謀が渦巻く場所…。
こんな学園でのトラブルくらい簡単に跳ね除けられない者など、王子妃に相応しくないわ。
ああ、第1王子くらい妃を溺愛していれば全力で王子が守ってくれるかもしれない。
けれど、それは本当に稀な話よ。
王子達も、私達に強さを求めている。
だってここは、グロッシュラーなのですから。」
「……グロッシュラー…。」
黒魔導師の軍事国家―――。
「まだ高等科に上がったばかりで、こんな話はキツかったかしら。
だけど、そろそろ覚悟をした方がいいわ。
この先は、もっともっと恐ろしい敵が現れ、貴女を蹴落とし貶め、利用しつくそうとしてくる者達が現れるわ。」
キィィ・・
少しだけ軋んだ音を立て、大きな扉がグミーの手に寄って開かれた。
ホールの奥の檀上には、既に第3王子が上がり、祝辞を述べている。
『あの方が…、第3王子…。』
『グミー先生の…夫…。』
グミーはニッと笑うと、扉を閉め去って行った。
マリン達は、まだ入口の入った所に居るので、檀上まで遠く第3王子の姿はハッキリと見えない。
見えないが、王子のカリスマと膨大な魔力は感じられる。
『…すごい魔力…。』
『…うん…。』
ここは、グロッシュラー。
弱い者は必要ない……。
まさか、講師のグミーがそんな事を言うとは―――。
本当にフロアは退学になってしまうのだろうか…。
第3王子の祝辞が終わり、会場から拍手が沸いていたが、マリン達には何も聞こえなかった。
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