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25・自由

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自由―――。

冬休みの間、リユーサとシャラにはたくさんの外の事を教えて貰った。
ガラス細工を売って生計が立てられるかも尋ねてみた。
生計が立てられるかは分からないが、こういった形の物が人気でよく売れるなどの情報を教えてくれた。
マリン達の作品は、マリン達が思った以上に人気と需要があるようだ。
前世の世界を視てからは、更に作品の精度が上がり、細部まで細かく作れるようになった。
その為、買い取り価格も上がり、今回渡した作品達は、今までの倍の値段で引き取って貰えた。
出来ればこれを仕事として外の世界で生きて行きたい。
マリンはそう思っている。
マロンは何も考えていないのか、マリンがそうリユーサとシャラに伝えた時、ぽやん…と上の空だった。
リユーサとシャラは、チューブに相談してくれると言っていた。
そして最悪、それだけで生計が立てられなくとも、冒険者となりギルドの依頼を請け負って魔物退治などをすればかなり稼げるので、そちらでも生きて行く事は出来るだろうとマリン達が考えていた事も言った。
だからその為にも、魔導師としての力を卒業までに付けておくべきだと付け加えられた。
高等科では、魔力を高める為の瞑想の授業や模擬戦、近隣の洞窟の魔物退治など、実技授業もたくさんある。
ちゃんと授業を熟して卒業すれば、かなりのレベルの魔導師になれる。
そんな学校はグロッシュラー以外には存在しないらしい。
魔導師として強くなりたい者からすれば、夢のような学び舎なのだ。

(そうだ…、わたしは…、わたし達は、今の不自由から抜け出して、自由に、戦争のない国で、暮らしたいんだ…。)
だが、マリン達だけグロッシュラーから離れても良いものか…。
グロッシュラーは国民が国外へ出る事を特には禁止していない。
外部の者が国内に入るには厳しい審査があるらしいが、内部の者が外に出る事には大した審査はない。
それで何故国民が減らないのかと、マリンは単純に尋ねた。
チューブも、グロッシュラーは国民を国の外に出したがらないと言っていた。
なのに、国外へ出る審査が甘いとは…?

その理由としては、国民は外で暮らしたがらないから、らしい。
皆、魔導師である事を誇りと思い、強い国を尊敬しているのだ。
そして一般人は、魔導師や騎士達に守られた治安の良い町で暮らせる上に、魔物退治などで国庫が潤っている為、スラム街や貧民区域が存在しない。
貴族制度もないので、大きな身分制度は王族だけの為、一般人にも国が手厚く保障をしてくれるのだ。
そう言う制度は、他の国では考えられない。
グロッシュラーは国民の保証制度がかなり進んでいて、安泰の国でもある。
そしてそれは、軍事力が高く魔物討伐等で国庫が潤っているから出来る保証制度でもある。
(一般人は住みやすい国かもしれないけれど、魔導師達はどうなんだろ…。
誇りや尊敬や給料が少し多いだけで、危険な目に遭っても良いと思えるの…?)

「あっ、ライちゃんの事、聞くの忘れちゃった…!」
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