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メイドと男子
「いらっしゃいませ!」
甲高い声と、きっちりとそろえた声で俺と板谷は迎えられた。
教室の中はたくさんの生徒で賑わっている。
机が四つ、くっつけてあり、その上に白いテーブルクロスが敷かれて一つの大きなテーブルになっている。
それが教室の中に7,8か所置いてある。
俺たちは中へ案内され、窓際の席に座った。
いかにもカフェらしい洋楽が流れていて、あちこちにインテリアが置いてある。
「ほんとにカフェみたいだね!」
板谷はスマホのカメラでパシャパシャと写真を撮りながら、にやけている。
「いらっしゃいませ! ご注文をどうぞ」
小柄でか可愛い女の子が、メニューを持ってきた。
「コーヒー、紅茶、ココア、クリームソーダ・・・ 結構いろいろあるな」
予想外のメニューの多さに少しテンションが上がる。
「私、メロンクリームソーダで!」
板谷はメニューを指さして女の子を見つめながら声を上げた。
「じゃあ俺は、ホットコーヒーで」
「かしこまりました!」
女の子は伝票らしき紙に、さらさらとボールペンでなにかを書き、去っていった。
「しかしほんとにすごいな、あんだけメニューがあって、客もこんなに入っているのによく店が回ってるな」
「ほんとだね~」
向かいに座っている板谷は、さっき渡されたメニューをぱらぱらと眺めている。
ふと、教室の角に簡易的な壁で仕切られている空間があることに気付いた。
店員があそこから商品を持ってきたりしていることを考えると、あの中で作っているのだろうか。
黒い幕がかぶせてあり、外からは見えないが、時折男子生徒の荒い吐息や、悲痛の声が聞こえてくるので、ここの労働環境はあまりよくないらしい。
「そういえば景ちゃんいないね~」
メニューを置いてあたりをきょろきょろしている板谷が、不思議そうに言った。
「確かに、見てないな」
景を見にここまで来たのに、いなかったら廊下でわめいた意味がなくなってしまう。
「お待たせしました~!」
そうこうしているうちに、商品が先に来た。
「わ! すごい」
透明なグラスに鮮やかな緑のメロンソーダ。そして上にはきれいな半球のバニラアイスが乗っている。
板谷は再びスマホを取り出し、写真を撮り始めた。
こんなに忙しい中、これだけの出来の商品を提供できるとは、ここの厨房、やるな。
俺のホットコーヒーは、見た目は普通のブラックコーヒーだが、受け皿に砂糖とミルクがきっちり添えてある。
「おいしい!」
あふれそうなクリームソーダに口を近づけてすすっている板谷は、上目遣いでにっこりと笑い俺の方を向いてそういった。
「あ、ああ、そうだな」
よくよく考えると、俺は今女子と二人きりで、カフェに来ている。
いまさら自分の置かれた状況を自覚して、少し恥ずかしくなってきた。
普段何も思わなかったが、板谷ってこんなに可愛かったっけ?
いつもと髪型が違うからか?
それとも今日は制服じゃないから? いや、何度かうちに来たときに私服は見ているし、何も思わなかった。
じゃあなんだ、俺も実は文化祭に浮かれて、テンション上がっちまってるのか?
「これが文化祭マジックか・・・」
「へ? なんか言った?」
「え、いや、なにも?」
危ない、この調子だとついうっかり好きになってしまいそうだ。
一刻も早くこの状況をどうにかしないと。
周りの生徒は、女子のグループで来ていたり、カップルと思われる生徒もいる。
しかし、それぞれの生徒は自分たちの時間を楽しんでいて、笑顔で談笑したり、時折声を上げて大笑いしている。
「俺たち、来年卒業なんだよな・・・」
「どうしたの、急に」
ふふっ、と笑いながら、バニラアイスを食べている板谷が聞いた。
俺は二年生のころから今の仕事を始めてそっちに忙しかったから、学校で過ごした記憶があまりないし、楽しい思い出もあまりない。
しかし、いざ卒業するとなると、なんだか寂しいものだ。
「別に、何でもねーよ」
俺を不思議そうに眺める板谷に微笑み返して、俺はそう言った。
でもやっぱり・・・
なんか恥ずかしいから早く出たい!
女子との交流がほとんどない俺は、景のことをすっかり忘れていた。
甲高い声と、きっちりとそろえた声で俺と板谷は迎えられた。
教室の中はたくさんの生徒で賑わっている。
机が四つ、くっつけてあり、その上に白いテーブルクロスが敷かれて一つの大きなテーブルになっている。
それが教室の中に7,8か所置いてある。
俺たちは中へ案内され、窓際の席に座った。
いかにもカフェらしい洋楽が流れていて、あちこちにインテリアが置いてある。
「ほんとにカフェみたいだね!」
板谷はスマホのカメラでパシャパシャと写真を撮りながら、にやけている。
「いらっしゃいませ! ご注文をどうぞ」
小柄でか可愛い女の子が、メニューを持ってきた。
「コーヒー、紅茶、ココア、クリームソーダ・・・ 結構いろいろあるな」
予想外のメニューの多さに少しテンションが上がる。
「私、メロンクリームソーダで!」
板谷はメニューを指さして女の子を見つめながら声を上げた。
「じゃあ俺は、ホットコーヒーで」
「かしこまりました!」
女の子は伝票らしき紙に、さらさらとボールペンでなにかを書き、去っていった。
「しかしほんとにすごいな、あんだけメニューがあって、客もこんなに入っているのによく店が回ってるな」
「ほんとだね~」
向かいに座っている板谷は、さっき渡されたメニューをぱらぱらと眺めている。
ふと、教室の角に簡易的な壁で仕切られている空間があることに気付いた。
店員があそこから商品を持ってきたりしていることを考えると、あの中で作っているのだろうか。
黒い幕がかぶせてあり、外からは見えないが、時折男子生徒の荒い吐息や、悲痛の声が聞こえてくるので、ここの労働環境はあまりよくないらしい。
「そういえば景ちゃんいないね~」
メニューを置いてあたりをきょろきょろしている板谷が、不思議そうに言った。
「確かに、見てないな」
景を見にここまで来たのに、いなかったら廊下でわめいた意味がなくなってしまう。
「お待たせしました~!」
そうこうしているうちに、商品が先に来た。
「わ! すごい」
透明なグラスに鮮やかな緑のメロンソーダ。そして上にはきれいな半球のバニラアイスが乗っている。
板谷は再びスマホを取り出し、写真を撮り始めた。
こんなに忙しい中、これだけの出来の商品を提供できるとは、ここの厨房、やるな。
俺のホットコーヒーは、見た目は普通のブラックコーヒーだが、受け皿に砂糖とミルクがきっちり添えてある。
「おいしい!」
あふれそうなクリームソーダに口を近づけてすすっている板谷は、上目遣いでにっこりと笑い俺の方を向いてそういった。
「あ、ああ、そうだな」
よくよく考えると、俺は今女子と二人きりで、カフェに来ている。
いまさら自分の置かれた状況を自覚して、少し恥ずかしくなってきた。
普段何も思わなかったが、板谷ってこんなに可愛かったっけ?
いつもと髪型が違うからか?
それとも今日は制服じゃないから? いや、何度かうちに来たときに私服は見ているし、何も思わなかった。
じゃあなんだ、俺も実は文化祭に浮かれて、テンション上がっちまってるのか?
「これが文化祭マジックか・・・」
「へ? なんか言った?」
「え、いや、なにも?」
危ない、この調子だとついうっかり好きになってしまいそうだ。
一刻も早くこの状況をどうにかしないと。
周りの生徒は、女子のグループで来ていたり、カップルと思われる生徒もいる。
しかし、それぞれの生徒は自分たちの時間を楽しんでいて、笑顔で談笑したり、時折声を上げて大笑いしている。
「俺たち、来年卒業なんだよな・・・」
「どうしたの、急に」
ふふっ、と笑いながら、バニラアイスを食べている板谷が聞いた。
俺は二年生のころから今の仕事を始めてそっちに忙しかったから、学校で過ごした記憶があまりないし、楽しい思い出もあまりない。
しかし、いざ卒業するとなると、なんだか寂しいものだ。
「別に、何でもねーよ」
俺を不思議そうに眺める板谷に微笑み返して、俺はそう言った。
でもやっぱり・・・
なんか恥ずかしいから早く出たい!
女子との交流がほとんどない俺は、景のことをすっかり忘れていた。
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