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初活動の日
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ホームルームに鳴り響くチャイムは、生徒たちを一斉に動かす。
放課後、校内に響き渡る運動部の掛け声も、どこからともなく聞こえてくる生徒たちの笑い声も、僕の青春の一ページとなって記憶に刻まれていく。
夕日を背にして、今日のことを振り返りながら友達と帰る。
誰が可愛いとか、あの先生めんどくさいとか、そんなくだらない話を馬鹿みたいに笑って言い合う。
そして家では、来る明日を楽しみに眠りにつく。
そんな平和で、普通の高校生活を送るはずだった。いや、送りたかった。
でも現実は違う。
「おい、誰だあの人」
「めっちゃ肌白いし、かわいい~」
「スリッパの色からして先輩か?」
教室でそんなひそひそ話が繰り広げられる。
教室の入り口には、皆が話しているように、肌が白く可愛らしい女子生徒が立っている。
「でも、先輩がうちのクラスに何の用だ?」
「もしかして、彼氏とか?」
「そんなわけないだろ~」
最後の人、大正解。そんなわけないのである。
もうお気づきのように、彼女は鴨井先輩である。
僕はばれないように鞄で顔を隠しながら、後ろのドアから出ようとした。
ドアに手をかけたその瞬間、小動物が飛び跳ねるかのような素早い足音が僕に近づく。
そしてドアをつかむ僕の手を、その細い手からは想像もできないような握力でつかんだ。
「こ、こんにちは、先輩」
「ごきげんよう。あら、今から帰りかしら?」
引きつった笑顔に、なぜか少し高い声を出す先輩。
「え、ええ。まあ」
「あらそう、ご一緒しても?」
教室にいた生徒全員の視線が僕に集まる。
「ほ、方向がちがうんじゃあ、ないですか?」
「いいえ、あなたの家は駅方面。私と同じよ?」
だからその情報どこで手に入れてるんですか? 個人情報だだ漏れなんですけど?
先輩はもう片方の手で僕の肩をガシッとつかみ、上に持ち上げた。
僕の体は先輩の思い通りに持ち上がり、「行こうか」と笑みを浮かべながら言う先輩に連れ去られた。
「一体全体どういうつもりかしら、月見阿羅矢君?」
再び僕は、狭くて薄暗いこの部室に連れ込まれていたのだった。
「どういうつもりも何も、帰ろうとしただけです」
先輩は机を力強くたたき、大きな音を立てた。
その音にびっくりし、僕の体は素早く反応する。
「あなたはここの部員よ? それなのに学校が始まって一週間一度も顔を出さないじゃないの」
「いや~、ちょっと用事があって」
後頭部を掻きながら、先輩の様子をうかがう。
小さな部室の壁から壁を何度も行ったり来たりしながら、何かを考えこむ先輩。
「まあいいわ、どうせやることなかったし」
いいのかよ!
小さくホッとため息をつき、僕は鞄を持った。
「じゃあ、今日は帰りますね、先輩」
そう言って部室を出ようとした時だった。
光の速さで僕を追い越し、ドアの前に立ちふさがる先輩。
「今日は帰さないわよ!」
僕の顔にハアハアと息を吹きかけながら、両手を広げてドアを塞いでいる。
「でも、やることないんじゃあ・・・」
「いいえ、今日はあるのよ!」
そう言って先輩は、どこから持ってきたのかホワイトボードを引っ張ってきた。
そこには何やら関係図のようなものが書かれていた。
「これは?」
僕がそう聞くと、先輩は待ってましたと言わんばかりに説明を始めた。
「ふふん、これはね、足立先生と春日先生の関係図よ!」
うん、どっちも知らない。
「どっちも知らないといった顔ね」
だから先輩はなぜ僕の心が読めるんだ?
「いい? 足立先生はちょっとマッチョで薄いひげの生えた歴史の先生で、春日先生は事務室で一番かわいい先生」
はあと頷く僕。
「私の見立てだと、どうやら二人は交際しているようなのよね」
ホワイトボードに線を引きながら言う先輩。部屋が薄暗い分、先輩の白い肌が目立つ。
「でもまだ確証がないの。そこであなたに来てもらったの」
「はあ」
「なによさっきから頷くばっかで、聞いてる?」
「聞いてますよ。ただ、それを突き止めてどうするんですか?」
先輩は両腕を組んで鼻を鳴らした。
「この学校、社内恋愛禁止なのよ!」
「え? でも確か山田先生と酒井先生は結婚してたはずじゃあ」
「そう、結婚は許されるの。でも交際はダメ」
何だこの学校。
「だからこの事実を突き止めて、二人の間の線引きをしっかりしようって根端なの!」
相変わらず最低な活動だ。
先輩は立ち上がり、いつものように腰に手を当てて、もう片方の手で僕を指さす。
「後輩! スキャンダル部での初仕事、行ってこい!」
放課後、校内に響き渡る運動部の掛け声も、どこからともなく聞こえてくる生徒たちの笑い声も、僕の青春の一ページとなって記憶に刻まれていく。
夕日を背にして、今日のことを振り返りながら友達と帰る。
誰が可愛いとか、あの先生めんどくさいとか、そんなくだらない話を馬鹿みたいに笑って言い合う。
そして家では、来る明日を楽しみに眠りにつく。
そんな平和で、普通の高校生活を送るはずだった。いや、送りたかった。
でも現実は違う。
「おい、誰だあの人」
「めっちゃ肌白いし、かわいい~」
「スリッパの色からして先輩か?」
教室でそんなひそひそ話が繰り広げられる。
教室の入り口には、皆が話しているように、肌が白く可愛らしい女子生徒が立っている。
「でも、先輩がうちのクラスに何の用だ?」
「もしかして、彼氏とか?」
「そんなわけないだろ~」
最後の人、大正解。そんなわけないのである。
もうお気づきのように、彼女は鴨井先輩である。
僕はばれないように鞄で顔を隠しながら、後ろのドアから出ようとした。
ドアに手をかけたその瞬間、小動物が飛び跳ねるかのような素早い足音が僕に近づく。
そしてドアをつかむ僕の手を、その細い手からは想像もできないような握力でつかんだ。
「こ、こんにちは、先輩」
「ごきげんよう。あら、今から帰りかしら?」
引きつった笑顔に、なぜか少し高い声を出す先輩。
「え、ええ。まあ」
「あらそう、ご一緒しても?」
教室にいた生徒全員の視線が僕に集まる。
「ほ、方向がちがうんじゃあ、ないですか?」
「いいえ、あなたの家は駅方面。私と同じよ?」
だからその情報どこで手に入れてるんですか? 個人情報だだ漏れなんですけど?
先輩はもう片方の手で僕の肩をガシッとつかみ、上に持ち上げた。
僕の体は先輩の思い通りに持ち上がり、「行こうか」と笑みを浮かべながら言う先輩に連れ去られた。
「一体全体どういうつもりかしら、月見阿羅矢君?」
再び僕は、狭くて薄暗いこの部室に連れ込まれていたのだった。
「どういうつもりも何も、帰ろうとしただけです」
先輩は机を力強くたたき、大きな音を立てた。
その音にびっくりし、僕の体は素早く反応する。
「あなたはここの部員よ? それなのに学校が始まって一週間一度も顔を出さないじゃないの」
「いや~、ちょっと用事があって」
後頭部を掻きながら、先輩の様子をうかがう。
小さな部室の壁から壁を何度も行ったり来たりしながら、何かを考えこむ先輩。
「まあいいわ、どうせやることなかったし」
いいのかよ!
小さくホッとため息をつき、僕は鞄を持った。
「じゃあ、今日は帰りますね、先輩」
そう言って部室を出ようとした時だった。
光の速さで僕を追い越し、ドアの前に立ちふさがる先輩。
「今日は帰さないわよ!」
僕の顔にハアハアと息を吹きかけながら、両手を広げてドアを塞いでいる。
「でも、やることないんじゃあ・・・」
「いいえ、今日はあるのよ!」
そう言って先輩は、どこから持ってきたのかホワイトボードを引っ張ってきた。
そこには何やら関係図のようなものが書かれていた。
「これは?」
僕がそう聞くと、先輩は待ってましたと言わんばかりに説明を始めた。
「ふふん、これはね、足立先生と春日先生の関係図よ!」
うん、どっちも知らない。
「どっちも知らないといった顔ね」
だから先輩はなぜ僕の心が読めるんだ?
「いい? 足立先生はちょっとマッチョで薄いひげの生えた歴史の先生で、春日先生は事務室で一番かわいい先生」
はあと頷く僕。
「私の見立てだと、どうやら二人は交際しているようなのよね」
ホワイトボードに線を引きながら言う先輩。部屋が薄暗い分、先輩の白い肌が目立つ。
「でもまだ確証がないの。そこであなたに来てもらったの」
「はあ」
「なによさっきから頷くばっかで、聞いてる?」
「聞いてますよ。ただ、それを突き止めてどうするんですか?」
先輩は両腕を組んで鼻を鳴らした。
「この学校、社内恋愛禁止なのよ!」
「え? でも確か山田先生と酒井先生は結婚してたはずじゃあ」
「そう、結婚は許されるの。でも交際はダメ」
何だこの学校。
「だからこの事実を突き止めて、二人の間の線引きをしっかりしようって根端なの!」
相変わらず最低な活動だ。
先輩は立ち上がり、いつものように腰に手を当てて、もう片方の手で僕を指さす。
「後輩! スキャンダル部での初仕事、行ってこい!」
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