ephemeral house -エフェメラルハウス-

れあちあ

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オトナ

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音楽は順調に進んでいる

自分でそう言い聞かせないと全てが爆発しそうだった。

「あいつまじで訳わかんねえ」

カイトにそう言うと少し苦笑いを浮かべて曖昧な相槌を打った。

全員が感じてる事のはずだ、口には出さないけどみんなが思ってる。

「なぁ、おれそろそろ限界来そうなんだけど」

「気持ちはわかるけどさ、もう少し我慢しようよ。」

それ俺の気持ち分かってねえじゃん

「わりぃ、おれ帰るわ。また明日。」

このままだとカイトにまで機嫌ぶつけそうな気がしたから早めに切り上げて帰宅路に着いた。



確かに音楽は順調に進んではいる。ただ、それはおれ達で進んでいる訳では無い事を全員が感じていた。

おれ達はセナのおまけじゃねえ。

あいつは別にわがままは言わない、むしろおれらの方がわがままだと思う。曲をあいつが作ってきて出来上がったの渡されてこれはおれらは難しすぎて弾けないって突き返す事なんてざらにある。

でも、あいつはそれに対して「お前らなー」って笑いながら憎まれ口叩いて作り直すだけ。

ただ、譲れないところはあるみたいで自分が作った曲以外歌いたくないらしくおれらは曲を作らせて貰えない。
まだ、許容できるレベルのこだわりだ。

ライブのセッティングも全て1人で動いてしまう、でもこっちが意見すればそれもちゃんと取り入れてくれる。
これも許容できる。

物事で言ったら納得できなくても全部許容が出来るはずなんだ。
でも、今は全てに対して不満を持ってしまうんだ。

些細なことから始まった。

「セナどうした?最近会う度痩せてってね?」

ある日のバンド練の日、1番最後にスタジオに来たセナにそう問いかけると、カイトとタクヤもセナの近くに寄ってきて同調した。

誰が見たって分かる事だ、普通じゃないって。

みんな心配してるんだ、大事な仲間だから。

「セナ、なんか悩んでる事とかあるんだったらおれら…」

あいつは言ったんだ。

「夏バテしたんかな?もうちょい食わなきゃだよね~、ごめんな心配かけて」

おれらは、自分で言うのも何だけどちゃんと人を見てるつもりだ。多分普通の人たちだったら流すかもしれない。

でも、おれらだから気づいたんだ。

あいつのあの時浮かべてた笑顔は、ウソの笑顔だった。

その日からだ、全てが見えてきた。

「セナわりぃ、この曲は流石に難易度高くて出来ないわ」

「えーー?レンさん??ちゃんと作り途中の時聞きましたよね~??」

「わりぃって!あの時ちょっと私生活忙しくて少し雑になってたわ。」

「全く~。なるべく早く仕上げるけど時間かかるからなー?その分早めに完コピしてくれよ??」

何気無い会話だよほんとに。

ただ、あいつの言葉にはひとつも"本音"という物が無かった。

___全くもって、おれらに心を開いていなかった


もっと言うと、今までの会話思い返すとハルちゃんや結衣に対してもそうだ。

そんな、誰も信頼していない人間とこれから一緒に音楽をやっていけるのか?

今までは、なんでこんなヘラヘラしてる奴がこんな重苦しい曲書けるんだろうなーくらいにしか捉えていなかった物が、実はあいつの心全てを表している。そう思えて仕方ない。

いや、もしかしたらそれすらウソなのかもしれない。

頭で考えれば考えるほどあいつの存在が気持ち悪く感じる

それなのに、綺麗に見えるんだ。人に対して使う表現なのかは分からないけど少し儚さを感じる。

ただ、1度嫌になると全て剥がれ落ちるのが人間だ、今まで許容出来た全てが、あいつがやりたい事やる為にただ利用されてるだけに思えて、嫌悪感は増していくばかりだった。

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