once upon a time

れあちあ

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【第1章】物語の始まり

1

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夜に1人で歩く景色は今まで歩き慣れた道のはずなのに全く違うものに見えた

近所の家からは家族団欒に過ごしている音が聞こえ
いつも吠えてくる犬は大人しく伏せている

道を囲う畑や大きな木はいつもより不気味に見えて少し歩くと見えてくる工場なんかは
恐怖すら感じさせる建物に見えた

なんなら街灯すら不気味に感じる

でもナナに芽生えた感情は喜

不気味なことすらも嬉しかった

一夜にしてこの世の全ての自由を手にしたようなそんな感覚だった

やる事なんて別に何も無い、ただ夜に外を歩いてるという事実が嬉しかったのだ

「どっちに行こうか」

ひたすら歩いてると分かれ道にたどり着いた
右に進めば色んな店が集まる少し賑わった場所

左に進むとひたすら自然に囲まれた道が続いて最終的には大きな公園に付く

ナナは思った
この素晴らしい日にわざわざ人の集まるところに行くか?
知り合いに会うかもしれない、もしおばあちゃんの友達の飯田さんに出くわしたらどうする?きっと後日2人のお得意技立ち話でおれの話題がでてこっぴどく叱られる
この楽しい気持ちも全て無駄になるじゃないか

ナナはすぐさま左に進みまたひたすらに歩き続けた

イヤホンを持ってくるんだったな
川のせせらぎ…というには余りにも激しすぎる音をずっと聴きながらだと流石に気が滅入る

そしてまた何となくスマホを覗くと風架からメッセージが来ていた

30分前に来ていたメッセージを見て少し驚いた

『もう……とにかくすごい怖かったナナも気をつけてね』

何があったんだろう、気をつけて?
一体どういう事だ?

…………帰った方がいいのかも

ナナは不安になった

けど"ありがたい"ことにもうそれは遅いと確信させる音が聞こえた

ナナの背後から「サク…サク…」と足音が聞こえる

怪奇

そこにあるのは怪奇だとナナはすぐに感じ
そしてこの2年間で自分には不思議な能力があることを"忘れていた"事を思い出した。

霊感だ

ただの霊感じゃない
これまで何度もゴーストに危害を加えられそうになるという物だった
「これはやばい」

そう呟き後ろを振り返るとそこには女性のゴーストが立っていた

不思議とナナはゴーストに対して恐怖を感じなかった

「君はなぜぼくの後を着いてくるの?」

そう問いかけると彼女は重々しく語った

「あ……あなたは……そこらの…そこらのフールより…お…おいしそう…」

そう言って何とも下手くそな笑顔でこっちを向いた

フール?フールってなんだ?
少し疑問に感じたがナナは彼女の顔から目線を外せなかった

額から始まり右目そして右頬まで焼けただれたような跡がありその右眼は黒目がほぼ灰色になっている。

「君は火事にでも巻き込まれたの?」

持ち前のデリカシーのなさで普通だったら出来ないような(しかもゴーストだ)質問をすると彼女は少々苛立ったように答えた

「………だからなん…だというん…だ」

「醜い、すごく醜いね」

言うべきではない、刺激してはいけない
分かっていたけど口が止まらなかった

「君のような醜い顔には初めて会ったよ。見たところそれは死に直結した傷じゃなくてその前からあった傷だろう。さぞかし無様な人生を送っていたんだな」

彼女の表情が一気に変わった
先程までの何ともゴーストらしい顔ではなく
それはまさに異界に存在する悪魔のような顔

「愚か者が!君のその勇敢さには呆れるな!お前がそれを望むならしてやろうじゃない!」

それまで生気の無い喋り方をしていた彼女は
いきなり饒舌になりナナの目の前で形を変えた

水晶のような球体になったのだ

そしてナナに向かって飛んできた

「…」

一瞬の出来事だ

ナナを貫こうとした球体に他の何かが飛びかかり阻止した
よく目を凝らしてみるとそれは1匹の狐だった

あの球体をムシャムシャと食べていた。

ゴーストを食べる狐…
こいつもこの世の存在じゃない

そう考え身構えていたナナに狐はは近づいてきた

そして"言ったのだ"

「君は一体何を考えているんだ、死ぬとこだったんだぞ」

ナナは驚いた

ものすごく驚いた

「な、なんで喋れるの!?」

狐も驚いていた

「な…なんでクリタの言葉がわかるのさ」

クリタ?こいつの名前なのか?
いやそんなことはどうでもいい
一体どういう事なんだ

「クリタの言葉がわかるフールは初めてだ」

続けてルシエが何たらと言っていたが余りにもブツブツ喋るから聞き取れなかった

「クリタ?ルシエ?フール?一体なんの事なの?」

狐はトンっと飛び跳ねナナの肩に乗り(見た目よりかなり軽い)耳元で言った

「お前は多分何も知らないルシエなんだろう。」

そして

「おれを家に連れてくんだ」




こうしてナナの初めての夜遊びは失敗に終わった

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