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2章 ウィリアム
思わぬ再会
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デビュタントパーティーから数日経った。やはり慣れない場所へ行って疲れたのだろう、暫くはなかなか疲れがとれず、いつもよりも少し遅くに目が覚めていた。
「今日も良い天気ね。朝食が終わったら、庭へ行って花に水をあげなくちゃ。」
アイリスは毎日の日課として、庭に咲いている花に水をやっている。花が大好きな母クラリスの為に父ユヴェールが色とりどりの花を沢山植えているのだ。その中には、アイリスと同じ名前の菖蒲も植えられている。季節によって身を違う顔を見せてくれる庭が、アイリスのお気に入りなのだ。
朝食が終わりいつものように花に水をやっていると、屋敷が俄に騒がしいことに気がついた。
(····何かしら?)
すると、アイリスの元へ屋敷の使用人が駆けてきた。
「お嬢様、至急お屋敷にお戻り下さい!」
「····何があったの?」
コンフィリオ子爵邸は、滅多なことではこのように騒がしくなるような事はない。何か良くない事でも起るのか、アイリスは不安を胸の奥に押し込め、屋敷へと駆けていった。
******
「ウィ、ウィリアム様!?」
「やぁ、アイリス嬢。今日も可愛いね。」
急いで屋敷へと戻り案内された応接間に居たのは、周りの緊張した空気など物ともせず優雅に紅茶を飲んでいるウィリアムだった。
「ど、どうして我が家に?」
「君を、拐いに来たんだ。」
「さ、拐うって····。」
さらっと言われた言葉にアイリスは思わず顔を赤らめた。
「逢い引きのお誘いだよ。デビュタントパーティーの後、約束したろう?」
「えぇ、覚えております。でもまさか···」
「私が本気だったなんて思わなかった?」
ウィリアムがアイリスの言葉を引き取り続けた言葉に頷く。上級貴族が下級貴族に対して見下した態度をとる事なんてこの国においてはよくある事だ。階級が高い程優遇されるべきと考える人々が殆どの中で、上級貴族が下級貴族に約束をしたことは大概が守られない。そんな国でアイリスとの約束を律儀に守ってくれるウィリアムはとても希少だ。
(本当にお優しい方だわ···。私なんかとの約束なんて守らなくても誰も何も言わないのに。)
どうして自分なんかにと思う反面、やはり優しくされるのは嬉しいもので。アイリスの頬は知らず知らずの内に緩んでいた。
「君が良ければ、今から出掛けたいんだが大丈夫か?」
「···はい、喜んで拐われます。」
「そうか、では早速行くとしよう。コンフィリオ子爵、紅茶をありがとう。」
「·····えぇ。」
デートのお誘いに浮かれていたアイリスは、父の顔が曇っていることに気が付かなかった。
「今日も良い天気ね。朝食が終わったら、庭へ行って花に水をあげなくちゃ。」
アイリスは毎日の日課として、庭に咲いている花に水をやっている。花が大好きな母クラリスの為に父ユヴェールが色とりどりの花を沢山植えているのだ。その中には、アイリスと同じ名前の菖蒲も植えられている。季節によって身を違う顔を見せてくれる庭が、アイリスのお気に入りなのだ。
朝食が終わりいつものように花に水をやっていると、屋敷が俄に騒がしいことに気がついた。
(····何かしら?)
すると、アイリスの元へ屋敷の使用人が駆けてきた。
「お嬢様、至急お屋敷にお戻り下さい!」
「····何があったの?」
コンフィリオ子爵邸は、滅多なことではこのように騒がしくなるような事はない。何か良くない事でも起るのか、アイリスは不安を胸の奥に押し込め、屋敷へと駆けていった。
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「ウィ、ウィリアム様!?」
「やぁ、アイリス嬢。今日も可愛いね。」
急いで屋敷へと戻り案内された応接間に居たのは、周りの緊張した空気など物ともせず優雅に紅茶を飲んでいるウィリアムだった。
「ど、どうして我が家に?」
「君を、拐いに来たんだ。」
「さ、拐うって····。」
さらっと言われた言葉にアイリスは思わず顔を赤らめた。
「逢い引きのお誘いだよ。デビュタントパーティーの後、約束したろう?」
「えぇ、覚えております。でもまさか···」
「私が本気だったなんて思わなかった?」
ウィリアムがアイリスの言葉を引き取り続けた言葉に頷く。上級貴族が下級貴族に対して見下した態度をとる事なんてこの国においてはよくある事だ。階級が高い程優遇されるべきと考える人々が殆どの中で、上級貴族が下級貴族に約束をしたことは大概が守られない。そんな国でアイリスとの約束を律儀に守ってくれるウィリアムはとても希少だ。
(本当にお優しい方だわ···。私なんかとの約束なんて守らなくても誰も何も言わないのに。)
どうして自分なんかにと思う反面、やはり優しくされるのは嬉しいもので。アイリスの頬は知らず知らずの内に緩んでいた。
「君が良ければ、今から出掛けたいんだが大丈夫か?」
「···はい、喜んで拐われます。」
「そうか、では早速行くとしよう。コンフィリオ子爵、紅茶をありがとう。」
「·····えぇ。」
デートのお誘いに浮かれていたアイリスは、父の顔が曇っていることに気が付かなかった。
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