狂喜と愛の巣

夢咲桜

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4章 鳥籠

閑話 sideウィリアム

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アイリスの小さな蜜壺から剛直を引き抜くと、コポッと音を立てて血の混じった白濁が流れ出る。彼女の破瓜の印、ウィリアムがアイリスの純潔を散らした証だ。ウィリアムは口元に黒い笑みを浮かべながら愉悦に浸っていた。
「····これでもう私からは逃げられないね、アイリス。ふふっ、私のものだ···、私だけの····。」
ずっと渇望していたアイリスをその腕の中に閉じ込める事が出来た事実に、ウィリアムは笑いが止まらなかった。
「ふふ、ふはははははっ!やあっと、やっと手に入れた。私の全て、私の永遠、私の半身。」
どの宝石よりも美しい深い青の瞳は、長い睫毛に縁取られた瞼で隠されている。処女の身体に無理をさせてしまったせいか、アイリスはウィリアムが白濁を吐き出した後気絶するように眠ってしまった。いまだ情事の後が色濃く残る身体に不似合いなあどけない寝顔で眠るアイリスに、ウィリアムの下半身に熱が溜まるのが分かる。だがウィリアムは昂る興奮を抑え、アイリスの身体を濡らした布で優しく拭いた。
アイリスを見つめる瞳に今までの暖かな光はとうになく、ドロリとした執着心と仄暗い悦びを宿していた。自分でも狂っている事は自覚している。けれど、ウィリアムはアイリスを手放す事は出来ない。きっと死んでも、絶対に離さない。執着や独占欲と呼ぶにはあまりに大きく歪んだこの感情は、ウィリアム本人にも制御しきれない。理屈や正論などが吹き飛ぶ程、本能がアイリスを求めるのだ。
「父上もこんな感覚だったのかな···。恐ろしいな、クラッシュハイドの『呪い』は。」
ウィリアムやウィリアムの父親である前国王だけでなく、先代、先々代、それこそクラッシュハイドの初代国王から受け継がれたこの『呪い』は、きっと未来永劫解ける事はない。
「神様直々の『呪い祝福』だなんて、恐ろしくて敵わないよ。」
恐ろしいなどと言いながらも、ウィリアムの表情に全くの変化がない。彼にとって呪いなど粗末なものであり、『どうでもいい』で片付けられるものなのだ。
「私には、アイリスだけでいい。····頭の中も、心の中も、瞳に映るのも、全部アイリスがいい。」
何故自分は国王などという面倒な地位にいるのだろうかと、ウィリアムはふと思う。こんな地位にいなければ、アイリスはきっとウィリアムを拒まなかった。国民も、臣下も、この土地も全てがどうでもいい。
(いっそアイリス以外全て壊してしまおうか···。)
そう思い立ったが、頭を振りその考えを除外した。きっとここにいる少女はそれを望まない。自分と同じ名前の花を見て心底幸せそうな顔をする彼女は、大事な人たちが傷つくのを嫌う。
「今はまだ、我慢してあげる。でも、いつか必ず私以外は要らないと思わせてあげる。」
ウィリアムは何も知らずに眠る愛おしい少女をまるで鳥籠に小鳥を閉じ込めるかのように抱き締める。
「今日は初夜だからね、うんと優しくしてあげた。···でも、明日からは容赦しない。君が泣いて拒んでも、絶対に逃がさない。私たちの子を身籠ってくれるまで、何度でも注いであげる···。」
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