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17.誘惑

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「父さん、母さんもちょっと話があるんだけど」
俺はちょうど2人が話している場でそう声をかけた
改めてこんな話し方をすることは滅多にないので何かを感じ取ってくれたのか、2人はすぐにファミリールームに移動してくれた

「何かあったか?」
父さんが既にソファーに座り俯いているシャノンと、その側で強張った顔をするルークを見てそう尋ねた

「ああ、いい報告と悪い報告があるんだけど」
そう言うと2人は顔を見合わせる

「…じゃぁいい報告から先に聞こうか」
「シャノンがランクアップした」
「あら。おめでとうシャノン。明日は皆でお祝いのパーティーね」
母さんは真っ先にそう言った
「2人がBランクになる目標はクリアしたということか。頑張ったな」
父さんもそう言いながらシャノンの頭をなでた

「ありがと…」
普段ならこれでもかという満面の笑みを見せるシャノンがこわばった笑みを返す
そして…
「…ごめ…なさ…」
「「…」」
必死で作った笑みはすぐに崩れてシャノンから出たのはその言葉だった

「シャノン。何があったかちゃんと説明してくれる?」
母さんの声からは感情は読み取れない
それがかえって怖い

カタカタと震えて声の出ないシャノンを見て父さんが俺を見た
「お前は聞いてるんだな?」
「ああ」
「シャノンはしゃべれる状態じゃなさそうだ。お前から説明してくれ」
俺は父さんの言葉に頷いてシャノンの隣に座った

「シャノンはこの1か月、賭博場に出入りしていたらしい」
「な…」
「賭博場だと?」
2人の声に隣に座るシャノンの体がこわばったのが分かった

「誘われて、多分最初は興味本位でついていったんだと思う。そこで10倍の大当たりを引かされた。その後は負け越しでそれを取り返すために通い続けたっぽい。今はもう貯金以外に手元の金はない」
「なんてこと…」
俺達が迷宮で得られる金は未成年が普通手に出来るような金額じゃない
それが全てなくなるなどありえないことだ
現に同じように散財していたルークですら今は素材を手元に残し始めてるくらいだ

「一つ聞きたい」
「?」
「シャノンがお前たちに話したなら今後2度と賭場に出入りすることは無いだろう。それなのにこうして話した理由は?」
父さんは真っすぐ俺を見てそう尋ねた

「シャノンをカモにした奴らが許せない。でも俺ではどうすることも出来ないから」
「…シアが報告するってそういう理由だったの?」
シャノンが縋る様な目を向けて来る

「当たり前だろ。大事な妹を傷つけた奴を許せるはずがない。でも未成年を引き込むなら裏賭博だし、それが存在してる時点で俺が太刀打ちできる相手じゃないんだよ」
「どういうこと?」
「賭博絡みは取り締まりが厳しいんだよ。それでも存続してるってことは多分貴族が絡んでる。そうだよね?」
俺は父さんたちを見る

「賭場同士のつぶし合いも多い中で残ってるならそうなるだろうな」
「カルムさんから後ろ盾の貴族に話を持って行くのが最善かしらね」
「ああ。上手くいけばシャノンの金も少しは戻るかもしれない。でもなシャノン」
名前を出されたシャノンは反射的に顔を上げた

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