チートな親から生まれたのは「規格外」でした

真那月 凜

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「俺達は冒険者で、セトイカまで旅をした帰りなんだ」
俺は言いながらギルドカードを取り出した

「俺はこの通りAランク。あの2人はBランクだ」
「あ…ごめんなさい。私助けてもらったのにちゃんと挨拶もしてなかったのね」
レティシアナはそう言いながら次の瞬間ギルドカードを手にしていた

「インベントリ、レティシアナも使えるのか?」
「もってことは…」
「俺も使える。こっちはダミーのマジックバッグだ」
「ダミーのバッグ…私もそうしておけばよかったのかな」
「ん?」
「インベントリの力も捉えられた理由の一つだったみたいだから」
「…最低野郎だな」
愛玩具としても道具としてもって考えていたのがよく分かる

「私もあの2人と同じBランク」
なるほど
ソロのBランクってことなら納得だ
確実に双子よりも強い
でもそれ以上に目が引き寄せられたのは…

「種族…」
そこには“龍神族”と表示されていた

この世界には人族の他にもいくつかの種族がいる
人族の次に多いのは獣人族で俺達の町にはいないけど王都にはそれなりにいるらしい
たまに冒険者の獣人族が流れてくることはあるけど、俺達の町は小さな集落からの経由地でしかなくてのまま隣町に行くくらい
というか、そういう奴の目的は弾丸だけどな
あわよくば会ってみたいってやつ

森の中に森人族のエルフが、鉱山の中に小人族のドワーフがいることは有名だ
ただしエルフもドワーフも基本的に自分たちのテリトリーからは出ないため会うことは無い

そして龍神族と鬼神族と呼ばれる神に連なる種族は言い伝えでしか聞いたことがない希少種族で、どこに住んでいるかも謎の種族だ
弾丸や母さん達も獣人族以外には会ったことがないらしい
それもスタンピードの時くらいだからこれといった交流は持ってない

「私は純粋な龍神族の最後の一人なの。だからその種族名にはもう何の重みもないわ」
レティシアはそう言いながら静かに笑う
でも最後の一人となれば重みは無くても希少性はヤバいくらいに高くなるんじゃないか?

「血筋は残せたとしてもこの先は薄まる一方だもの。今では自慢できるのも身体能力くらいかな」
龍神族はその見た目の美しさと高い身体能力が大きな特徴だ
そしてその身に宿る血は特殊な力を持つとされてるけど、その詳細は一族にしか伝えられていないという
5歳で両親を亡くしたと言っていた
つまりレティシアナは5歳の頃から身寄りだけでなく一族の者にすら会えない状況で人族のなかで生きてきたということだろうか…
俺は頼る者も帰る場所もないレティシアナを何故か守らなければならないと本能的に感じていた
この世界ではそんな人間は決して珍しくはないのに初めてのことだった

「…レティシアナが落ち着けそうな町が見つかるまで一緒に来るか?」
「そんな…これ以上迷惑はかけられないわ」
「さっきの魔物を倒せるなら迷惑ではないかな。Bランクなら充分戦力になりそうだし」
「でも…」
口ごもるレティシアナに好感を持つ
俺に寄って来る女はこんな遠慮という言葉すら知らない奴が多い
たとえ建前でも少しくらい遠慮しろとどれだけ思った事か…

「それとも一人で行く当てはあるのか?今すぐに一人で何とかできる?」
「それは…」
「流石に無理だと思うけど?理不尽な酷い目に合って怖い思いもしてさ。そんなレティシアナをここに置いていくのは俺達も後味が悪すぎる。レティシアナが俺達と来るのが嫌なら仕方ないけどさ」
「イヤだなんて…とてもありがたいと思うわ。でも…」
「もし迷惑かけるって思ってるなら狩った魔物の一部でいいからシャロン達にやってくれ。さっきで分かったと思うけど底なしの胃袋を持ってる」
「そんなことで?」
「ある意味死活問題だ」
言い切るとレティシアナが笑い出す
少しは気が楽になったか?

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