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95.静かな場所へ

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レティと付き合いだして1週間
周りの方がざわついている中、時間は驚くほど速く過ぎて行った
そんな中、弥次馬たちの前で宣言した後も絡んでくる女は後を絶たない
俺に直接言ってくるならまだいい
でも大半は影で悪意のある噂をでっちあげるか俺の目の届かない場所でレティを攻撃するかだ
俺のいら立ちは増す一方だし、当のレティは適当に受け流してはいるものの、どこか不安そうにしているのが気になった

「しばらく別荘に避難するのもいいんじゃない?」
母さんがそう言いだしたのは昨日の夜
別荘とは元々父さんが住んでた家のこと
今は年に数回家族だけで過ごすときなんかに使ってる以外は空き家状態だ
「迷宮に非難するっていう手もあるけど、それだと味気ないでしょう?」
「まぁ…」
迷宮のボス部屋は、ボスさえ倒せばその部屋にいる時間制限はない
勿論ボスが復活することも部屋から追い出されることもない
トータさんが過去に3日居座って飽きて出てきたって言ってたけど、きっと3日以上いることも出来る
勿論食料を確保して保管するマジックバッグやインベントリがないと無理だろうけど

「どうせ避難するなら別荘かな」
「シア、別荘って?それに避難って…」
レティが不安そうに尋ねて来る
「父さんが昔住んでた家があるんだ。しばらくそこでのんびりするのもいいだろ?」
「のんびり…」
「何だよ?」
どこか腑に落ちないように呟くレティに尋ねる
「大したことじゃないんだけど…シアとのんびりって言葉が中々結びつかなくて」
真剣な顔でそう言ったレティに皆が笑い出す
それはそれで何か酷くないか?

「なるほど?じゃぁレティはこのままここで珍獣の気分を味わい続けるってことでいいのか?」
「え?待ってシア。それは嫌だわ」
即答したレティに次は俺が笑ってしまった
「大丈夫よレティシアナ。シアがあなたを置いていくはずないから」
「母さん?」
「そうだな。むしろ嫌がっても連れて行くだろうな」
「父さん迄…勘弁してくれよ」
「レティシアナに意地悪言うからよ」
何故か母さんが勝ち誇ったように言う

「…母さんがレティを気に入ってるのはわかったから」
「え?」
「何驚いてんだよ?」
「だって今サラサさんが私を…?」
レティはポカンとしたまま母さんを見た
「僕もレティシアナ好きだよー?」
「私もー」
そう言いながらレティに飛びついたのはケインとスカイだ
「あり…がとう」
驚きながらもその表情からは喜びが溢れ出す
ルークとシャノンもレティを慕ってるし、多分俺達が喧嘩したら、俺の家族はみんなレティの味方になる気がする
レティが孤立しないなら別にいいんだけどさ

「レティシアナはもう娘みたいなものだからね。実際そのうち本当に義理の娘になるんだろうし?」
「…」
意味ありげに見てくる母さんから視線を逸らす
「ま、その話は今はいいわ。それよりも別荘に行くでいいのね?」
「ああ。そうする」
「期間は?その間無限の活動はどうするの?」
「とりあえず半月くらいか。無限の活動の日は中級迷宮の入り口で待ち合わせでいいだろ」
「了解~」
とりあえず大まかな打ち合わせはこれくらいか?

「シア達が別荘に行ってる間に私たちはこう広めとくね?“シアは未だに自分やレティに絡んでくる女が鬱陶しくなって町によりつかなくなった”って」
シャノンが悪い笑みを浮かべながら言う
「ついでに“時期を見て戻って来ても同じことが続くなら別の町に引っ越しちゃうかも”って感じかな?」
「引っ越しってお前…」
「“引っ越しちゃうかも”だから問題ないでしょ?」
確かに引っ越すと断定はしてないけどな?
その辺は様子を見ながら考えるってことで、俺とレティは暫く町にはいかないという選択をしたんだ
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