[完結]憧れの場所

真那月 凜

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4.初ライブ

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暫くしてライブは始まった

光の渦の中でel cruceは最高のライブをしていた

「あいつら…」
一瞬だったけどステージの上にいた4人が一斉に亨の方を見たのだ
その表情は何もかもを吹っ切って見えた
亨は何とも言えない顔をしていた

「…すごいね皆」
流華は眩しそうに目を細めた

「どんどん手の届かないところに行っちゃうんだね…」
その目からは涙が流れていた

「流華…」
亨はそんな流華から顔をそらした
ステージの上は特別な世界のように感じた
手の痛みさえなければ自分も手に入れられていたかもしれない場所
でもそこはもう立ち入ることの出来ないまぶしすぎる場所でもあった

「散々悩んで決めたはずなのにな…」
動かすたびに痛みの走る自らの手をつい見てしまう
一緒に頑張ってきた仲間があの場にいるのは喜ばしい事だと思う
それは本心からの気持ち

でも自分だけが取り残されたような感覚が亨にはあった
たとえそれが自ら選択した結果であっても簡単にごまかせるものではなかったのだ

流華はこのとき初めて彗耶たちがプロなんだと実感していた
ファンは我を忘れたようにステージに夢中だった
会場が一体になっていた

その中で流華と亨は今までを思い返していた
高校の軽音楽部で初めて組んだときのこと
初めてのライブ
積み重なるライブで増えていくファン
そのファンとのトラブル
メンバー同士の喧嘩でその度に深まった信頼
ばか騒ぎしたキャンプ
卒業式に卒業生全員を巻き込んだ先生たちへの感謝ライブ
バイトをしながら必死で続けたバンド活動
亨の最後のライブ
そしてメジャーデビュー

沢山の事を乗り越えて彼らはステージの上にいる
何度も挫けそうになりながら、それでも逃げずに、諦めずに音楽を愛し続けた彼らだから今こうして光を浴びている
彼らはこれからこの眩しい世界で生き続けていくのだ

成功した初ライブはSNSでも拡散された
el cruceは驚くようなスピードで階段を駆け上っていくことになる

流華と亨はその途中に取り残されていた
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