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最後の願い
第8話
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「パパ」
小さな少女が彗耶に飛びつく
「あぁ、美亜か…お帰り」
彗耶は彼女、美亜を抱きしめた
「またママとおはなししてたの?」
彼女は屈託のない笑顔でたずねた
「…夢を見たんだ」
「夢?」
「広い公園でママが走り回ってた」
「本当に?いいなぁ…美亜も元気なママの夢が見たい!」
彼女は甘えるように言う
医者に宣告された3年より2年長く生きた亜紗美は1年前眠るように息を引き取った
そのとき亜紗美の傍らには彗耶ともう一人3つになる彼女がいた
出産など夢でしかなかった事をかなえられて亜紗美は言った
『よかった。これで彗耶生きてくれるね』
その言葉は彗耶の心に秘めた想いを見抜いてのものだった
亜紗美がいなくなった時自分が生きていく自信がない
口に出しこそしなかったものの常にその不安と戦っていた
それぐらい彗耶にとって亜紗美の存在は大きかったのだ
でも亜紗美の言葉どおり彗耶は今も生きていた
亜紗美の血を引く大切な娘を残していく事など考えられなかった
「パパ?」
涙を流している彗耶に首をかしげた
「何でもないよ。ママの事を思い出しただけだ」
彗耶は涙を拭いて微笑んだ
「それより美亜に渡すものがあるんだ」
「渡すもの?」
「あぁ。ちょっと取ってくるよ」
彗耶はそう言うと書斎から2つの包みを持ってきた
「お誕生日おめでとう」
「ありがとうパパ!」
差し出されたプレゼントを美亜は満面の笑みで受け取った
「もうひとつこれはママからのプレゼントだ」
「ママから?」
「そう。美亜の誕生日に見せるように頼まれたんだ」
彗耶はそう言ってDVDをセットした
しばらくして画面に映し出されたのは亜紗美の顔だった
「ママ!」
美亜は思わず画面に触れた
『美亜、4歳のお誕生日おめでとう』
笑顔でそういう亜紗美に彗耶も見入ってしまう
『お友達は沢山出来た?
パパはちゃんと美亜のお話を聞いてくれてる?』
画面の中の亜紗美は沢山の問いかけをしてくる
美亜はその一つ一つの問いかけの答えを画面に向かって返していた
亜紗美は美亜が20歳になるまでのプレゼントとしてこのDVDを残した
まだ3つだった美亜が誕生日だけでも自分の顔を思い出せるようにと
ただし再婚するときには全て捨てるようにと条件をつけて…
いつ命の終わりが来てもいいように
それは亜紗美の中では残された者への言葉だったのだと彗耶は後から気付いた
「ねぇパパ」
「ん?」
「パパは…新しいママをもらうの?」
DVDを見終わった美亜が躊躇いながら尋ねた
「どうしたんだ突然?」
「Loiのママ達が言うの。美亜にそのウチ新しいママが出来るんじゃない?って…
パパがまだ若いから新しいママをもらうんじゃないかって」
美亜の言葉に彗耶は戸惑う
自分の中で再婚など考えた事はなかったしこの先も美亜と2人で生きていくつもりでいた
でも幼い美亜はそれでいいのかと初めて感じたのだ
「…美亜は新しいママが欲しいのか?」
彗耶はやさしくたずねる
「…美亜のママはママだけだもん…新しいママなんていらない…
そんな人が来たらママココにいれなくなるもん!」
必死でそう言った美亜の目から涙がこぼれる
それは強がりでも何でもなく本心の言葉だと痛いほど伝わってきた
「美亜…大丈夫だ。美亜が望まない限りパパが新しいママを連れてくることなんてないから」
「…本当?」
「あぁ。パパは美亜がいればそれでいい」
そう言って微笑んだ彗耶を見て美亜は安心したように笑った
亜紗美はこの世には存在していなくても美亜の心の中でちゃんと生きていた
小さいながらも愛し、愛された記憶がちゃんと心の中で生きている
「美亜もパパがいれば新しいママ要らない!」
そうキッパリ言った美亜は嬉しそうに笑った
その笑顔に彗耶も思わず微笑む
大切な人が笑顔でいてくれる事
それは亜紗美が最後まで 何よりも願っていた事だった
――― Fin ―――
小さな少女が彗耶に飛びつく
「あぁ、美亜か…お帰り」
彗耶は彼女、美亜を抱きしめた
「またママとおはなししてたの?」
彼女は屈託のない笑顔でたずねた
「…夢を見たんだ」
「夢?」
「広い公園でママが走り回ってた」
「本当に?いいなぁ…美亜も元気なママの夢が見たい!」
彼女は甘えるように言う
医者に宣告された3年より2年長く生きた亜紗美は1年前眠るように息を引き取った
そのとき亜紗美の傍らには彗耶ともう一人3つになる彼女がいた
出産など夢でしかなかった事をかなえられて亜紗美は言った
『よかった。これで彗耶生きてくれるね』
その言葉は彗耶の心に秘めた想いを見抜いてのものだった
亜紗美がいなくなった時自分が生きていく自信がない
口に出しこそしなかったものの常にその不安と戦っていた
それぐらい彗耶にとって亜紗美の存在は大きかったのだ
でも亜紗美の言葉どおり彗耶は今も生きていた
亜紗美の血を引く大切な娘を残していく事など考えられなかった
「パパ?」
涙を流している彗耶に首をかしげた
「何でもないよ。ママの事を思い出しただけだ」
彗耶は涙を拭いて微笑んだ
「それより美亜に渡すものがあるんだ」
「渡すもの?」
「あぁ。ちょっと取ってくるよ」
彗耶はそう言うと書斎から2つの包みを持ってきた
「お誕生日おめでとう」
「ありがとうパパ!」
差し出されたプレゼントを美亜は満面の笑みで受け取った
「もうひとつこれはママからのプレゼントだ」
「ママから?」
「そう。美亜の誕生日に見せるように頼まれたんだ」
彗耶はそう言ってDVDをセットした
しばらくして画面に映し出されたのは亜紗美の顔だった
「ママ!」
美亜は思わず画面に触れた
『美亜、4歳のお誕生日おめでとう』
笑顔でそういう亜紗美に彗耶も見入ってしまう
『お友達は沢山出来た?
パパはちゃんと美亜のお話を聞いてくれてる?』
画面の中の亜紗美は沢山の問いかけをしてくる
美亜はその一つ一つの問いかけの答えを画面に向かって返していた
亜紗美は美亜が20歳になるまでのプレゼントとしてこのDVDを残した
まだ3つだった美亜が誕生日だけでも自分の顔を思い出せるようにと
ただし再婚するときには全て捨てるようにと条件をつけて…
いつ命の終わりが来てもいいように
それは亜紗美の中では残された者への言葉だったのだと彗耶は後から気付いた
「ねぇパパ」
「ん?」
「パパは…新しいママをもらうの?」
DVDを見終わった美亜が躊躇いながら尋ねた
「どうしたんだ突然?」
「Loiのママ達が言うの。美亜にそのウチ新しいママが出来るんじゃない?って…
パパがまだ若いから新しいママをもらうんじゃないかって」
美亜の言葉に彗耶は戸惑う
自分の中で再婚など考えた事はなかったしこの先も美亜と2人で生きていくつもりでいた
でも幼い美亜はそれでいいのかと初めて感じたのだ
「…美亜は新しいママが欲しいのか?」
彗耶はやさしくたずねる
「…美亜のママはママだけだもん…新しいママなんていらない…
そんな人が来たらママココにいれなくなるもん!」
必死でそう言った美亜の目から涙がこぼれる
それは強がりでも何でもなく本心の言葉だと痛いほど伝わってきた
「美亜…大丈夫だ。美亜が望まない限りパパが新しいママを連れてくることなんてないから」
「…本当?」
「あぁ。パパは美亜がいればそれでいい」
そう言って微笑んだ彗耶を見て美亜は安心したように笑った
亜紗美はこの世には存在していなくても美亜の心の中でちゃんと生きていた
小さいながらも愛し、愛された記憶がちゃんと心の中で生きている
「美亜もパパがいれば新しいママ要らない!」
そうキッパリ言った美亜は嬉しそうに笑った
その笑顔に彗耶も思わず微笑む
大切な人が笑顔でいてくれる事
それは亜紗美が最後まで 何よりも願っていた事だった
――― Fin ―――
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