[完結]ある日突然『異世界を発展させて』と頼まれました

真那月 凜

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3.町へ

3

「レイって有名人?私が手続してる間もいろんな人に声かけられてたよね?」
「親しい奴は限られてるけどな」
大したことでもないだろうとでもいうような軽い返事だった

「とりあえず店は…通りでだいたいわかれてる」
「通り?」
「ああ。一番奥が鍛冶屋がらみと色町」
「色町?」
「SEXする宿?が並んでる」
ラブホテル街的な場所だろうか
もう少し言い方があると思うものの突っ込むだけ無駄な気もして聞き流す

「色町はともかくとして、武器や防具を扱う店が多い。その手前は職人系が多い」
「職人」
「そ。サラサに一番なじみがあるかもしれないから奥から順に見るか」
レイは大まかに説明しながら案内してくれる

「まぁ当分うちにいることになるだろうし必要なものはそろえればいい」
「いいのかな…」
ありがたいのは確かだ
でも申し訳なさも同時にある

「飯作ってくれるならずっといていいぞ」
「えー」
茶化すような言葉だった
でもその目から気遣ってくれていることが分かる

「あの肉でわかるだろうけど金には困ってない。家の中も面倒でほってあるだけだから改築でも模様替えでも好きにしてくれればいいよ」
「…それって結構大きな話よね?」
「そうか?単に優先順位の問題だと思うけどな。自分の部屋は整えたからリビングは放置してただけだしな。客間はちゃんとなってたろ?」
「…確かにそうだけど…」
「ツレにはいい加減整えろって言われてるからむしろ丁度いいよ」
あっさりと吐き出されるその言葉に気遣いなどは感じない
おそらくレイの正直な気持ちなのだろうと理解する

「そんなこと言ったら思いっきりやっちゃうかもよ?」
「ああ。楽しみにしてるよ」
2人で笑いながらそんな話を続けていた

「あ、ここ寄ってもいい?」
「ああ」
布を並べている店の中に入っていく

「レイ、カーテンつけてもいい?」
「ああ。好きにしろ」
その言葉に私の中で血が騒ぐ

インテリア専門店で働いた記憶は大いに役に立ちそうだ
カーテンにソファー用のクッションがまず候補に上がる
既製品はないようなので生地を選んでクッション用の綿を希望のサイズで詰めてもらった
あとは糸と裁縫道具を選ぶ
選び終わったのを見てレイがお金を払ってくれた
思わず固まってしまった

「どうした?」
「…支払いの事すっかり忘れてた…」
「「ぶっ!」」
へこみ気味で告げると店員のモリスさんとレイが同時に噴き出した

「嬢ちゃんレイ相手にそんなこと気にしなくていいって。もっとたかってもいいくらいだ」
モリスさん笑いながら言う

「でも量も結構…」
「レイは冒険者ランクこそBだけど実力はS以上だ。下手したら王族より金もってるかもな?」
「流石にそこまではねぇよ。でもサラサが欲しいもん全部買ったところで大した出費じゃないから気にすんな」
目の前でなされた会話に驚きながらもとりあえず頷いた
レイが受け取った商品をインベントリにしまい、モリスさんに見送られて店を出た

「次は…」
何かを言いかけたレイが立ち止まる
その前に私が足を止めていたからだ
視線の先には竹細工のお店があった

「サラサ」
「あ…」
「気になるなら入ってみろ」
レイに促されて店に入る
繊細な細工の商品が所狭しと並んでいる

「レイじゃないか珍しいな?」
「元気そうだなランディ」
店の脇に積み上げられている素材に見覚えがあった
前世で取引先の担当者に作り方を教えてもらったオーナメントの材料だ

「ランディさんこの薄い板状の触っても?」
「ああいいよ。必要な素材を取った残りだから捨てるもんだけどな」
おおらかに笑いながらランディさんは言う

「もったいない!こんないい素材ならすごくいいのが作れるのに」
「…何か作れるなら見せてくれないか?ほかに必要な材料があるなら用意する」
ランディさんは何かを感じ取ったのか真剣な顔で言う

「どうしたんだよランディ?」
「レイ…実はな、この素材はかなりの量を捨ててるんだよ。今ここに積んであるのを毎月3度ほどになるか…もし利用できるのなら…」
「なるほどな」
レイは頷く

「サラサ、お前が作ってみたいものがあるならやってみろよ」
「…じゃぁナイフと接着剤と水を用意してもらってもいいですか?あとその定規も貸してください」
「ああ」
ランディさんは作業台に伝えたものを並べてくれた

定規の目盛をみるとミリ単位だった
私は薄い板状の竹を5ミリ幅で切っていく
そして竹を水で柔らかくしながら少しずつ編んでいく

「こりゃすごい…」
時々接着剤で止めながら編み上げていくのを2人がじっと見ていた

「編み方ちょっと変えるだけで色んなの作れるから楽しいの」
私は完成したオーナメントをランディさんに手渡した

「サラサ商業ギルドに行くぞ」
「え?」
「ランディも一緒に来てくれ」
「もちろんだ」
私は訳が分からないまま2人に引っ張られるように商業ギルドに走った

「会長個室を用意してくれ」
レイの言葉に会長は二つ返事で個室を用意した

「こいつを商業ギルドに登録してもらうのと…この商品を登録してもらいたい」
レイはさっき私が作ったオーナメントを会長に渡した

「これは素晴らしい…一体どなたが?」
「サラサ・ミナヅキ、上級職人だ」
「上級職人…?こんなにお若いのに?」
「今後この商品の売り上げの一部をサラサに」
「承知しました。すぐに手続きをいたします。サラサ・ミナヅキ様、冒険者ギルドに登録がおすみでしたらギルドカードをお預かりしてもよろしいでしょうか?」
「あ、はい」
レイを見ると頷いたのでカードを渡す
カードを受け取った会長は慌てて飛び出していった

「レイ、どういうこと?」
「あーこれはこの国では初めての商品だ。竹細工のオーナメントの開発者としてサラサを登録することでランディたちが作って売れた場合にその一部がサラサに還元される」
説明を聞く限り特許のようなものだろうかと首をかしげる

「私ランディさんのところの材料で作ったのに?」
「それはたいして関係ない。だよなランディ?」
「ああ。この商品を今後作らせてもらえるならむしろ私も得をする」
理解できない私にレイが苦笑する

「これを作るのに使用した材料は今まで廃材として捨ててたものなんだよ。それが商品として売れるようになるならランディたちにすればかなりの儲けだ」
「なるほど…」
これまで捨ててたものがお金を生む
その売り上げの一部が出て行ったところで大した損にはならないということか

「そういうことだから嬢ちゃんこれ、うちで作って売ってもいいか?」
「もちろんです。ただしたまに私にも作らせてくださいね」
その言葉になぜかレイにあきれられる

「?」
「…なんでもない。好きにしろ」
ため息交じりに言われる私を見てランディさんが笑い出す

「レイ、お前随分変わった嬢ちゃん見つけたもんだ」
「偶然だ」
レイが不貞腐れたように言った時会長さんが戻ってきた

「手続きは完了しました。受け取られたお金はカードに付随する口座に振り込まれますので、定期的に確認をお願いします。詳細が必要な際は商業ギルドの窓口か私にその旨をお伝えください」
「わかりました」
返却されたカードを受け取ると会長に見送られながら商業ギルドを後にした
オーナメントについての話をしながらランディさんの店の近くまで一緒に戻る

「じゃぁ買物の続きだな」
「嬢ちゃんたまに顔出してくれよ」
「わかりました」
ランディさんに手を振って別れるとレイが苦笑しながら私を見ていた

「?」
「何か色々出てきそうだと思ってな」
「え?」
「その年で上級職人、特殊魔法に料理に新商品。次に何が出てくるか…」
「そんなこと言われても…」
「怒ってるわけじゃない。ちょっと心配ではあるけどな」
「心配?」
「ああ。下手に目を付けられたらと思うとちょっとな…」
「…」
出る杭は打たれる的な感じだろうか?

「まぁそうならないように守ってやるよ」
当たり前のように言うレイにあっけにとられてしまう

「どうした?」
「…そんな風に思ってもらえるような人間なのかなって…」
突然現れた素性のわからない女でしかない
そう思うとどこかやりきれないものが溢れてくる

「…引け目感じるなら料理でも作品でも俺が見たことないもの作ってくれればいい」
「…そんなことでいいの?」
「いいんだよ。お前といれば退屈な生活から抜け出せそうだ」
レイは私の背を押し先へと促した

その後も様々な職人の店を見ながら町を堪能した
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