[完結]ある日突然『異世界を発展させて』と頼まれました

真那月 凜

文字の大きさ
68 / 199
15.ミュラーリアの婚姻の形

6

しおりを挟む
「いじわる…」
倒れこみ息を乱したまま何とか声にする

「体は落ち着いただろ?」
「…そもそも…レイのせいなのに…」
納得できない何かがある

「わかった。今日はサラサの言うこと何でも聞いてやるから、な?」
「…じゃぁレイから触れない。キスしない。甘いささやきも禁止!」
「…は?」
「変になるのはレイのせいだから…今日はそういうの全部禁止!」
言った瞬間レイがキョトンとし、次の瞬間噴出した

「…わかったよ。今日は何もしない」
少し考えながらとはいえ約束してくれたことに安堵する
この時の私は気づいていなかった
約束したことがもたらす様々なことに…

気を取り直して動き出したのは昼を回ってからだった
「レイご飯できたよ?」
「ああ、サンキュ」
本を読んでいたレイがキッチンにやってくる

「…?」
何かが物足りない
そう感じるのは何度目だろうか
でもその何かが分からなかった

そんな私をよそにレイはおいしそうに食事を始めた
「食わねぇの?」
「食べるよ」
気持ちを切り替えて食事を始める

「婚姻後って何か変わることあるの?」
ふと気になって尋ねてみた

「普通なら婚姻後に一緒に住み始めるから色々変わるだろうけど…」
ずっと一緒に住んでいればそのあたりは何も変わらない

「特別なことと言えるとしたら…」
「?」
「婚姻後の1か月を家で2人で過ごすのが習わしってくらいか。必要なものは親が家の前まで定期的に届けるから家も出ないし誰も訪ねない。そのために仕事の調整も優先される」
「え…?」
「まぁずっと2人でいるのもいつもと変わんないけどな。違うのは依頼も受けないってくらいか?」
レイはあっさり言うもののこれはハネムーンどころの話ではない
レイとずっと2人きりで家の中で過ごす
今の話を聞いた上でそう考えるとひどく生々しく感じる
私は聞くんじゃなかったとこの後何度も思うことになる

目が合った時、そばに立ったとき、触れそうになった時
いつもなら抱きしめられたり口づけされたりしていたことに気付く
今日は何もしないと言ったレイとの約束のせいでかえって強く意識してしまうのを、レイに悟られないように意識しないように取り繕ってはみるもののうまくいかない
「コーヒー、淹れる?」
ソファで寛ぎながら本を読んでいるレイに尋ねる

「ああ」
本から視線を離す事の無い、いつも通りの返事に2人分のコーヒーを用意する
自分が読みたい本も用意してコーヒーを運ぶと同じようにソファに座り本を読む
珍しい事でも何でもないはずなのに、レイの息遣いをやたらと意識してしまう

「…!」
時々触れそうになる腕が気になって仕方ない
そしていつもなら触れられたり抱きしめられたりしていたはずの場面で、何も起こらないことに寂しさを感じている自分に気付く
レイに愛されていることが、甘やかされていることが日常に当たり前のように溶け込んでいたのだと思い知るには充分だった

無意識のうちに自分からレイに触れていることに気付かないまま夜を迎えた

「レイなんかいいことあった?」
ベッドに横になって鼻歌を歌うレイを覗き込む

「別に?」
そう答えるもののその笑みは意味ありげに見える

「…何か気になる」
呟きながらベッドに横になった途端組み敷かれていた
「レ…イ…?」
一瞬何が起こったかわからなかった

「反撃開始」
「え?」
「さっき日付が変わったから約束守ったご褒美でも貰おうかと」
「…!」
舌なめずりするようなレイに喉が鳴る

「意識しすぎて寂しくなった?」
「そんなこと…ない…」
「へぇ…」
意味ありげな笑みが返ってくる

その笑みの意味を思い知ったのは焦らすような愛撫を続けられてからだった
レイに触れられているというだけで全身が喜んでいる
それを嫌というほど自覚していると
「体が喜んでる」
耳元でささやかれてこれまでにない羞恥に包まれる

それでも敏感な場所のすぐそばで遠ざかっていく手や舌がひどくもどかしい
「やらし…」
「え…?」
意味が分からない
「こんな風に押し付けて来るなんて初めてだろ?そんなにここに触れて欲しかった?」
「ちが…っ!!」
いきなり一番敏感な場所に触れられたとたん体がはねる

「いじわる…」
「何が?」
試すような尋ね方が返ってくる

でもその目から涙が零れ落ちた瞬間レイが息を詰まらせた
「…その顔は反則」
「ひぁ…!」
一瞬息を飲んだレイから突然与えられた快楽にそのまま溺れていった
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。 下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。 キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。 家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。 隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。 一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。 ハッピーエンドです。 最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅

散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー 2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。 人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。 主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、そして政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に行動する勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、そして試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私が、 魔王討伐の旅路の中で、“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※「小説家になろう」にも掲載。(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

最強チート承りました。では、我慢はいたしません!

しののめ あき
ファンタジー
神託が下りまして、今日から神の愛し子です!〜最強チート承りました!では、我慢はいたしません!〜 と、いうタイトルで12月8日にアルファポリス様より書籍発売されます! 3万字程の加筆と修正をさせて頂いております。 ぜひ、読んで頂ければ嬉しいです! ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 非常に申し訳ない… と、言ったのは、立派な白髭の仙人みたいな人だろうか? 色々手違いがあって… と、目を逸らしたのは、そちらのピンク色の髪の女の人だっけ? 代わりにといってはなんだけど… と、眉を下げながら申し訳なさそうな顔をしたのは、手前の黒髪イケメン? 私の周りをぐるっと8人に囲まれて、謝罪を受けている事は分かった。 なんの謝罪だっけ? そして、最後に言われた言葉 どうか、幸せになって(くれ) んん? 弩級最強チート公爵令嬢が爆誕致します。 ※同タイトルの掲載不可との事で、1.2.番外編をまとめる作業をします 完了後、更新開始致しますのでよろしくお願いします

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

処理中です...