[完結]ある日突然『異世界を発展させて』と頼まれました

真那月 凜

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30.レイの誕生日

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レイの誕生日当日、メリッサさんは朝から家に来てくれていた
これまでは2人でムードを重視したお祝いをしてきただけに私自身もワクワクしていたりする

「じゃぁ私は向こうの準備をするわね」
ナターシャさんはリビングの方に行ってしまった
皆がテーブルを囲みやすいようにレイアウトを変えたりする予定だ
マリクとリアムもその後を追う

「私たちは料理を始めましょう」
メリッサさんはそう言いながら袖をまくっている

「箸休めという名の一品料理を色々作らないと」
「大食いが4人いるからね。一体1人で何人前食べるのやら…」
「確かに。そういえば私がこの世界に来て一番最初に驚いたのは料理だったかも」
魔法も確かに驚いたけどそれはゼノビアが先に説明してくれていた

「そうよね。私も初めてサラサちゃんの料理目にした時は驚いたもの」
アランさんと共に来たメリッサさんを思い出す

「しかもあの時にギルドで騒がれてた色んなものを創り出す人物がサラサちゃんだって知ったのよね」
「…そんなこともあったね」
今でこそ職人さんたちの間では勝手知ったるになっているものの、当時はギルドマスターも私の名前は表に出していなかったらしいと後から聞いた

「私はレイが固まり肉を大量に食べてるのに驚いたけどね」
「でしょうね。今ならその気持ちが分かる気がするわ」
メリッサさんが苦笑する

「以前はあれが当たり前で何の疑問もなかったけど…今からあの頃の食事に戻せと言われたら無理ね」
「やっぱり?」
「うん。絶対無理。そりゃスタンピードなんかで町が大変なことになった場合なら仕方ないけどね。普通の日々の中で戻すのは有り得ないわ」
メリッサさんはそう言いながら手元の食材を切っていく

「何より野菜を食べるようになったことが大きな違いよね」
「みんな食べ方も知らなかったもんね」
「そうよ。こんなおいしいものをどうして今まで食べてこなかったんだろうって思ったもの。サンドイッチをきっかけにしてみんな少しずつ野菜の良さを分かり始めたみたいだしね」
冒険者ギルドの側のパン屋の事を言っているのだろう

「そういえば今の一番人気がミックスサンドなんだっけ?」
レタスとトマト、厚めの味付き肉を挟んだサンドイッチだ
肉の種類を変えて何種類か用意している為冒険者に人気だとか

「そうなのよ。肉汁がしみ込んだレタスが最高だって噂が広がってレタスが飛ぶように売れたらしいわ。適当にちぎって普段の肉を盛る皿に敷くだけでいいから手軽でいいってね」
おそらくそのレタスの量も相当なのだろうと想像して苦笑する

「レタスが切れたから代わりにキャベツを使ったら、それもまた美味しくて…なんて噂が出れば次はキャベツが飛ぶように入れるしね。そうなったら色々試したくなるものなのよねぇ」
「葉物野菜はかなり購入されてるもんね」
「ゆでたり炒めたりした方が美味しいものもいっぱいあるんだけどね。職場の子には教えてるからそっちも少しずつ広がってはいるみたい」
「私たちが色んな種類の野菜や以前より鮮度のいい野菜を食べれるようになったのはそのおかげってことね」
「それはあるかもしれないね」
メリッサさんは頷く

以前は野菜などほとんど売れなかったため日持ちのするものが主だったのだ
日持ちの悪い葉物野菜は特に仕入れる数も種類も少なくギリギリまで店頭に並ぶため鮮度も落ちる
店主も数種類が売り切れるかダメになってからしか次を仕入れに行かないので選択肢自体も少なかったのだ

普段の買い物はレイに任せているので店頭がどうなっているかはたまにしか見ない
それでもたまに見ると、少しずつ色鮮やかになっているのは感じることが出来る

「そういえば普段の買い出し、レイさんがしてるんでしょう?どうやって頼んでるの?」
「どういうこと?」
「名前も知らないし見たこともない野菜をどうやって頼んでるんだろうって。それに欲しいものが常に置いてるわけでもないし」
「そういう意味ね。とりあえずレイが見たことのない野菜を見かけた時は全部買ってもらってるのよね」
「え?」
驚いた目を向けられた

「基本的に野菜は何でも食べるから問題ないのよね。初めて見たのは数が少ないのや状態が悪くなってきてるのは買い占めてもらってるの。そしたらまた新しいのが入ってくることもあるでしょう?」
「そっか…2人ともインベントリがあるから…」
「そういうこと。あとは私の在庫が減ってきたらこれ買ってきてってレイに現物渡しとけば、次に見かけた時に補充してくれる感じかなぁ?」

リビングで会話を聞いていたナターシャさんもメリッサさんも諦めたように笑っている
それを見てどう考えても普通の買い物の仕方ではないと今さらながら気付いた

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