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第2章
2-3・彼と過ごす、日常③
しおりを挟む俺の両親は商会を営んでいた。
それなりに大きい、でもすごく大きいわけではない、リオルスト商会という商会だ。
エラルフィアラ王国の端にあって、商会名の家名以外の部分は、何でも昔助けてもらった恩人の名前から取っているのだとか。
両親は仕事で忙しかったけれど、俺を大切に育ててくれた。少し年の離れた弟もいて、不足に感じることなんて何もなくて。俺は両親が自分の本当の親じゃないだなんて、全く疑いもしていなかったんだ。
だから、自分が養子だったと知った時、裏切られた、そう思ったんだ。
きっかけは些細なこと。
夜、目が覚めて、何か飲み物でも飲もうとキッチンに向かっていた時、通りすがりに、たまたまその時、家に滞在していた父さんの弟、つまり叔父さんと両親の話を、聞いてしまったというだけの話。
こういう、知りたくもないことを知るのに、よくある状況なんじゃないかと思う。
叔父さんは言っていた。
「いつまであの子供の面倒を見ているんだ。シアリステもいるんだ、いい加減に手を放すべきだろう。少なくとも商会は兄さんたちの本当の子供に継がせるべきだ」
とか、なんとか。
通りすがりに聞いたから、前後の話とかはよくわからないんだけど、俺は物凄く、聞いてはいけないものが聞こえてきているような気がした。
なんだか嫌な感じがして、聞きたくないとも思った。
でも、シアリステというのは弟なのだけれど、弟の名前も出てきたから、気になって。そうしたら、
「何を言っているんだ、たとえ血がつながっていなくたって、ティーシャも私達の子供だ。手放すつもりなんてない」
そんな父さんの言葉が聞こえてきて。俺は驚いた。
え? 血がつながっていないってどういうことなの。俺は父さんたちの本当の子供じゃないの?
混乱しながら今までのことを思い出した。
俺の顔は両親とは似ていなくて、小さい頃、不思議に思って訊ねたら、
「ティーシャのお顔は、私達の恩人に似ているようにと願ったから、その方に似ているのよ」
と、言っていた。そういうことは時折あることだと聞いたことがあったから、俺は疑いもしていなくて。
目や髪の色だって、
「父さんと同じ色の髪で、母さんと同じ色の目だなぁ」
って父さんが言っていたから、むしろ自慢に思っていたぐらいで。
なのに本当の子供じゃなかったというのはどういうことなんだろう。
両親は俺に嘘を吐いていたのか。そう思って。
「けど兄さん、あんな、氏素性のはっきりしない子供なんて、」
とか、叔父さんはまだ何かを言っていたけれど、そこで両親は俺に気付いた。
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