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17・大領主邸
しおりを挟むフォルが告げる通り、目的地とされていた大領主邸とやらにはすぐに着いた。
とは言え数刻ばかりは見慣れない景色に心を奪われ続けていたとは思うが、それは決して飽きるようなものではなく。
少なくともあのまま砂漠を進んでいては、到底かなわなかっただろう短い時間であったことは間違いない。
加えてどのような仕掛けであったのか、暑いだとか寒いだとか感じることもなく、僕はただ見惚れるような美しさを堪能しながら過ごすことが出来たのだった。
多分僕を包み込むようなにおいに、いつの間にか心を解されていたというのもあるとは思う。
「着いたぞ」
そう聞かされると同時にぐんぐんと地面が近づいてきたかと思うと、ほんの瞬きする瞬間に、僕はいつの間にか少年の腕の中、抱えられるようにして地面に降り立っていたようなのだった。
否、足がついたわけではないので、降り立ったとは言わないのだろうか。わからない。
ただ。
「え? あ? あの……」
明らかに僕よりも小柄な、見目麗しい少年に抱えられている。
それをいったいどうとらえればいいのか戸惑った。
ひとまず、まさかこのままは流石に抵抗を覚えないはずもなくて。
「うん? どうした?」
「いや、あの、その……お、ろして、頂ければ……」
僕の戸惑いなどまるで何もわからないというようににっこり微笑んで首を傾げられたけれど、なんとか小さくそう返す。
そうしたらフォルは、見た目にそぐわない堂々とした雰囲気で、ははと快活に笑って。
「いや、このまま運ぼう。長旅で貴方も疲れているはずだ。無理はしない方がいい」
どうやら降ろしてくれる気がないらしいと悟って、僕はしんなりと眉根を下げることしかできなかった。
そのまま、フォルは迷いない足取りでどんどんと先へと進んでいく。
降り立ったのはおそらく、大領主邸だと思われる大きな建物の、中庭のようになっている所であったようで、周囲を見渡すと、どこもかしこもに微か、建物の屋根らしきものが見えた。
もっともそれなりに背の高い樹々が植えられているので、はっきりと建物に囲まれている、とまでは感じないのだけれど。
フォルが向かっているのはそんな建物らしきものの内の一つ。
時折行き会った使用人らしき者たちが皆、フォルに気付くと首を垂れて脇に避け、道を空けていく。
フォルは彼らにほとんど構わずにどんどんと建物へ近づいたかと思うと、廊下のような所から足を踏み入れ、更に奥へと進んでいった。
どこに向かっているのだろう。
全くわからず、僕はただ成すがまま。
「着いたぞ、神人殿」
そう言ってフォルが僕を連れて入ったのは、何とも開放的な、陽の光がふんだんに取り入れられた、呆れるほど非常に広々とした、何処もかしこも華美ではなくとも質のいいもので取り囲まれているらしい、居心地の良さそうな部屋の一つなのだった。
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