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20・2回目
しおりを挟む新たに表れた青年をティアレルリィ青年が手招く。
青年は子供たちの方にちらと視線を流しながらも、結局真っ直ぐにこちらへと近づいてきた。
見れば見るほどグローディによく似ている。
背格好も同じぐらいだ。
「シェス。タイミングがいいね。今、君の名前を出そうとしたところだったんだ」
シェス。この青年の名前なのだろう。
ティアレルリィ青年が促すのに従い、シェスと呼ばれた青年は彼の横へと腰を下ろした。
「レシア君。彼が君とグローディの一番上の息子。シェスピリエと言うんだ。今24歳だったはずだ」
「ええ、そうです。今年、24になりましたね」
ティアレルリィ青年がシェスピリエ……――シェスはおそらく呼び名なのだろう、シェスを俺へと紹介してくれるのに、シェスはその通りだと頷いていた。
24歳……俺が、今43歳だと言っていたか。つまり。
「19歳の時の、子供……」
呆然と呟く俺に、ティアレルリィ青年がにっこりと笑って頷いた。
「そう。19歳の時の子供。で、彼と、あそこにいる子供たちを含めて、ここにいない子たちも合わせると、君には子供が14人いる。その、お腹の中にいるのは15人目だよ」
途方もない数だった。
6人だって多いと思っていたのに14人?
このお腹の中の子供が、7人目じゃなくて15人目?
お、多すぎる……名前が覚えきれる気さえしない。自分の子供だというのに。
今までどうしていたのだろうか。そして俺はこれからどうすれば。
不安げに、目の前のティアレルリィ青年と、後は横に座るグローディとを交互に見てしまった俺に、ティアレルリィ青年が申し訳なさそうに眉尻を下げる。
「不安かい?」
頷いた。
ティアレルリィ青年が、ちょっとだけ控えめに苦く笑う。
俺への気遣いが感じられた。
「でも、シェスも来たことだし、俺はそろそろ帰るよ。うるさいのを残してきていてね」
「はは。父様は相変わらずのようですね」
「あれがそんなに早々変わるものか」
またしても俺にはわからない話をグローディとかわしつつ、ティアレルリィ青年が席を立った。
俺もつられて立ち上がる。
見送ろうだとか考えたわけではない。ただ、妙な名残惜しさを感じている。
「えっと、あの、ティアレルリィ、さん」
「ティアリィでいいよ。なんだったら母と呼んでくれても構わないけど」
なんと呼べばいいのか、迷いながら呼びかけるとそんな風に返されて、それは流石にと躊躇する。
20そこそこにしか見えない青年を母と呼ぶのは、流石に違和感しか覚えず難しい。
グローディもシェスも、あの一番大きい子供……リルセス、だったか。も、母様やらおばあ様やら躊躇いなく呼んでいたが、なにせ俺には記憶もなければ、実感だって沸いていないのだ。
教えられたことを何とか飲み込もうといっぱいいっぱいで。
「ごめんね、もう少し助けてあげたいのはやまやまなんだけど……あまりずっと俺が居続けるのも、グローディが許さなさそうだし、俺自身、残してきている奴がいてね。何か困ったことがあれば、遠慮せず連絡してきていいから。通信機の使い方は……そうだな、シェスかリルセスに聞くといい。グローディは当てにならないから、気を付けるように」
「ひどいな」
「何がひどいものか。ろくに説明一つしていなかったくせに。……テュリー!」
グローディに小言を言ってから、ティアレルリィ青年……――ティアリィ、さんは、連れてきていたという小さい子供を呼び寄せた。
呼ばれた子供はととてとてと歩いて、ティアリィさんに勢いよく飛び込んだ。それを危なげなく屈んで受け止め、そのまま抱き上げて。
次いで俺の方へと向き直った。
「レシア君」
「はい」
「君が記憶を失くす……というより、前世を思い出すのは、今回で2度目なんだ。ああ、いや、細かくはもう少しあったのだったか」
「そうですね、何度かありましたけど、前回のアレ以外はいつもすぐに戻ってますから、2回目と思って大丈夫じゃないでしょうか」
グローディからの補足に、ティアリィさんは頷いている。
「とにかく、2回目だから。だからって言われても、君は安心できないかもしれないけど、多分、すぐに徐々に思い出していくはずだ。記憶が馴染むまでのしばらくの辛抱だよ。それまではグローディにもシェスにも思いっきり頼るといい。勿論、俺にもね。出来るだけすぐに駆け付けるようにするから」
「もう母様には頼りませんよ。大丈夫なんでしょう?」
「前回と同じさ。魔術や魔法、呪術の気配なんかは微塵もない。今回の覚醒も、おそらく自然発生的なものだと思うよ」
「なら、問題ないでしょう」
「レシア君には問題大有りだろう。レシア君。本当にすぐに連絡してきていいからね」
グローディとやはりよくわからない会話も交えながらも、俺への気遣いだろう、何度も念を押して、
頷く俺を確認してから慌ただしく去っていくティアリィさんの背中を見送った。
もたらされた情報も含めて、まるで嵐のような来訪だった。
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