【完結】気づいたら6人の子持ちで旦那がいました。え、今7人目がお腹にいる?なにそれ聞いてません!

愛早さくら

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27・結局

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 ティアリィさんは通信機の向こうでしばらく何事かを考えこんでいた。
 通信機とは、俺の感覚で言うとスマホやアイフォンのようなもので、遠くにいる存在と連絡が取れる魔道具らしい。とは言え、機能は名前の通りに通信・・に特化していて、インターネットのようなものがないこの世界では、情報の検索なども出来なければ、当然、アプリゲームのようなものもない。しかし、カメラ機能のようなものはあるらしい。
 形態は言うならば手のひらに収まるぐらいの丸い石だ。
 そこへ魔力を流し、相手を思い浮かべる。思い浮かべた相手が同じ魔道具を持っていて、かつ、電話を受信するかのように、応えるつもりで魔力を流すと、それだけで通信がつながるのだと聞いた。
 双方ともに微量とは言え魔力が必須で、かつ一見するとただの石にしか見えない魔道具自体にも複雑な魔術式が組み込まれているらしく、値段も高価で庶民では手が出せず、持っている存在は限られているのだとか。
 実際に俺が今いるこの屋敷……いや、城にある通信機は、シェスが個人で所有しているものも含めて4つしかないとのこと。
 通信がつながると、今のように、ホログラムのような映像として相手の様子が見えることもあれば、音声だけの場合もあり、それは概ね使用者の魔力量とイメージによって左右されるのだそうだ。
 自覚も実感もないのだが、どうも俺は魔力量が多いらしい。
 だからこうして映像も含めたやり取りが出来ている。

『正直な話をすると、それはおそらく難しいよ』
「そうですか……」

 やがてティアリィさんが出した応えは、俺を落胆させるに相応しいものだった。

『シェスから、どれぐらい話を聞いているのかな? 前も言ったと思うけど、君の状態は記憶喪失ではない・・・・・・・・。いや、失っている記憶もあるようだから、記憶喪失と言えばそうなんだけど、君は前世の記憶を感覚だけ・・・・よみがえらせた状態なんだ。その上で前世の記憶も、この世界でこれまで生きてきた全てもなくしている。多分、前世の記憶が感覚だけとは言え甦ったことによる、一時的な混乱だとは思うけど……その証拠に、この世界でこれまで生きてきたことなら、思い出してきているだろう?』

 俺はティアリィさんの言葉に頷いた。
 確かに、何も覚えていない。覚えていないけれど、思い出してきていることもたくさんあるのだ。
 だからこそ今、悩んでいるのだとも言えるけれど。

『君は思い出してなお、元のレシアの感覚が遠く、別人だとしか思えないと言っているけれど、その違和感も時間の経過とともになくなっていくはずだ。ただし、それにどれぐらいの時間がかかるのかはわからない。ちなみに前回、君は10年ほどをかけて馴染んでいたようだから、気が付いてから・・・・・・・まだ1ヶ月も経っていない今じゃ難しいだろうね』

 10年。途方もない時間だ。そりゃ今は違和感だらけでも仕方がないのだろう。
 でも。

『君の混乱と戸惑いは想像して余りある。それは俺にだってわかるんだ。でも、君が望むように、すぐにでも元の君へと戻すことは難しい。ただの記憶喪失ならともかく・・・・、今の君の状態は前世が絡んでいることだし、前世の関連はね、我々が踏み入ることの出来ない領分・・・・・・・・・・・・・・・・なんだよ』

 ティアリィさんは、この国で1、2を争うほどに魔法、魔術に長けている。その事実は、思い出した元の記憶の中から伺い知れた。
 元の俺はそれさえ、ろくに理解していなかったようだけれども、今ならそれがどんなに凄いことなのかがわかる。
 そもそもおそらくこの人は、俺がこうしてこんな相談事で連絡を取るのさえ、恐れ多く思うような相手なのだ。気安い人なので比較的ほいほいと相談に乗ってくれて、それは今もなのだけれども。
 ティアリィさんは更に続けた。

『この世界……否、この国で、前世の記憶を持っている人間自体は珍しくない。その中ではもちろん、君のように、急に前世を思い出す人もいる。その際、記憶を失くす人もね。いるにはいるんだけど、そんな時に出来るのはある程度のノウハウに沿った対応を取ることだけで、そもそもなぜそんなことが起こるのかという根本的な原因は、何もわかっていない・・・・・・・・・んだ。原因がわからないことをどうにかするのは、やはりどうしたって難しい。だから、』

 つまり、結局、俺は元のレシアを、皆に返すことが出来ないのだそうだ。

『いずれは馴染んで行くだろうから、いつかは返せるとは思うけど、それを気長に待つしかないね』

 年単位で、気長に。
 そんな風に色々と教えてくれたティアリィさんはどこか申し訳なさそうにしていた。
 彼が悪いわけではないのに、いい人だと思う。
 とにかく俺は今後も長く、この罪悪感と付き合っていくしかないらしいことだけが確かだった。
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