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33・弱さの吐露
しおりを挟む揺さぶられ、快楽を貪って。
グローディに触れられているのは俺だ。
でも、グローディが触れているのは本当に俺なのだろうか。
「レシア様」
昼間のグローディは、夜や朝よりかはいくらか節度がある。
少なくとも真昼間からそう言った触れ合いを仕掛けられたことはない。
いつかシェスが言っていたように、グローディなりのけじめのようなものがあるのだろう。
「私にだって理性はありますからね」
とは、グローディ本人の談だ。大変、疑わしいが、きっとなくもないのだろう。
ここ数週間のうちに、腹はますます大きくなったように思う。
臨月。
もうすぐ生まれてくるのだそうだ。
グローディの子供。俺ではなく、レシアとの。
俺が産むのに、この子を作ったのはレシアなのである。グローディに返せない、グローディの天使。
俺はレシアから、グローディも子供も、全てを奪っている。
「かあたま?」
子供はかわいい。
特に素直で聞き分けが良く、自分に懐いてくれる子供を、かわいく思わないはずなんてない。
6人いる子供全員、反抗期というものは存在しないのだろうか? と、疑問に思うほど、いい子たちばかりだった。
俺には実感など沸かないままだが、それでもいつしか母と慕ってくれるのがくすぐったく、満更でもないような気分になっていて、だからこそ罪悪感に苛まれた。
「スピ」
名を呼ぶとほにゃと笑う。頭を撫でると手にすり寄ってきて、仕草全てが愛らしい。
「母様!」
「かあさま」
方々から呼ばれ、一人一人に構い、最後によく弟妹たちの面倒を見てくれている、此処にいる子供たちの中では年長に当たるリルセスの頬を指の背で擦る。
そうしたらリルセスはくすくすと笑って、そんな無邪気で健やかな様子に俺は胸がいっぱいになるった。
グローディによく似ている、鏡の中の俺、否、レシアにもよく似ている子供たち。
グローディとレシアの子供たち。
「俺で、いいのかな」
ソギュアより上の四人は、家庭教師について勉強をする時間がほとんど毎日取られているので、必然的に下の二人と俺とシェスだけの時間が存在した。
幼い子供たちは昼、短い時間ながら昼寝をする。
そうしたら、そこにいるのは俺とシェスの二人だけ。
グローディはいたりいなかったり、日によってまちまちで、今日は二人だけだった。
だからつい、そんな弱音が口からこぼれた。
「え?」
シェスが不思議そうに首を傾げる。
グローディによく似た面差し。
俺と並ぶと俺の方が幼く見えるほどだが、この青年もまた、グローディとレシアの子供なのだ。
「だってほら、俺と以前のレシアだと随分と違うだろ? でも子供達は皆、俺のことも母様と呼んで慕ってくれる」
思い出した記憶をどれだけ紐解いても、今の俺と元のレシアでは別人と言っていい。
否、そうとしか思えない。
だけど子供たちは俺のことも、迷いなく母と慕ってくれた。
グローディも、シェスも、ティアリィさんもだ。皆、誰もが俺とレシアを分けては考えず、接さず、気にしているのは俺だけ。
だけどあまりにも違うのだ。
ティアリィさんは、そのうち馴染むと言っていたろうか。
こうして記憶を失くすのは2回目だと、そう。
以前はどうだったのだろう。
俺は今となってはもうすでに多くの記憶を思い出してはいたが、それは全てではなく、特にティアリィさんやグローディの言っていた、以前の時の記憶が全くすべて抜け落ちていた。
と、言うよりは実の所、思い出した記憶はグローディにこの国へと連れて来られるまでのものが多く、此処にいる6人とシェス以外の子供たちのことさえ、思い出せてはいないのである。
なんて中途半端なのだろうか。
その上、俺はレシアにはどうしたってなれはしないのだ。
「皆の母親は俺じゃない。俺じゃないんだよ」
そう、言葉にして吐き出すと、やるせなさに涙がこぼれそうになった。
「母上……」
シェスが、なんと言っていいのかわからないという風に口ごもる。
俺はどうにかこうにか涙をこらえ、笑顔を作った。
「ごめん、変なこと言って。こんなこと言っても仕方ないのにね。今は俺がレシアなんだから。レシアにならなきゃいけないのに」
どれだけ記憶を思い出しても、実感は遠く。俺はレシアになれないまま、だけど、彼であらなければならないとも俺は思っていて。
たとえどれだけ頭が痛くなるような反応しか出来ないような人間でも。それが本物のレシアなのだから。
シェスは随分と戸惑って、幾度も何かを言いかけては口を閉ざし、結局、曖昧に微笑んで終わった。
その後すぐに子供たちが起き始めたので、そんな俺の泣き言はうやむやになって。それ以降俺はより強く、自戒することに決めた。
助けてくれているレシアの子供を、これ以上困らせられないと、そう思ったからだった。
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