5 / 148
第一章・リーファ視点
1-4・義兄上のお相手
しおりを挟む僕は今の生活にとても満足している。
と、言うか不満がどこにもない。
義兄上も兄様も僕をとっても可愛がってくれるし、魔術師塔でだって大切にしてもらっている。かと言って自由がないわけじゃなくて、城下や他国にでも、余程危ないところじゃなく、事前に申し出て、かつ、義兄上や兄様の認めた誰かと一緒なら、特に反対されるようなこともほとんどなかった。
僕は母様と一緒で転移魔法が得意なんだ。何処へ行ったって一瞬で戻って来られるしね。
ちなみに、さっき認めた誰か、と言ったけれど、僕と一緒に出掛けてくれるのが一番多いのは義兄上本人だったりする。皇帝業はいいのかなぁって思うんだけど、大丈夫なんだって。
皇帝というのはもしかしたら存外に暇なのかもしれない。
とにかく、そんな風に、僕はとっても満ち足りた人生を歩んでいたんだ。
だけど。
義兄上には伴侶がいない。
お嫁さんも旦那さんもだぁれも。
僕が知る限り、恋人、みたいな人もいなくて、夜だっていつも僕と一緒だ。仕事をしている以外の時間の全てで僕と過ごしてくれる義兄上に、そういう相手がいないのは明白で、本当は皇帝に即位する時、少しだけ話題には上がったのだそうだ。
でも義兄上は、
「今はいませんがいずれ出来ますよ。ご安心ください。逃がしませんから」
って、断言したんだって。だからずっと前、それこそ僕が生まれてすぐの時から、心に決めた人がいるのかもしれない。
今、その人がどうしているのかはわからないけれど。
ただ、僕は少しだけ悪い子だから、義兄上のお相手が、このままわからないままならいいなって思っている。
あと、兄様は相変わらず僕に会うとよく、
「逃げたくなったら本当に僕に言っていいんだからね、絶対に逃がしてあげるからね」
って何度も何度も念を押してくるんだけれど、いまだにそれがよくわからなかったりする。だって僕、逃げたくなったりしたことなんてないんだもの。
と、言うか、何から逃げるって言うんだろうね。
とにかく、そんな風に義兄上にお相手はいなかったんだ。
少なくとも、僕のわかる範囲ではね。でも。
いつも通りの一日だった。
僕は魔術師塔から帰ってきたばかりで、時間はちょうど、午後の休憩の頃だったから、義兄上を誘って、一緒にお茶でも飲もうと思ったんだ。
だから、義兄上の執務室へと向かっていた。
慣れた道。中庭を突っ切るのが近道だから、そこを通りかかった。その時だ。
少し先に、義兄上がいた。
僕は声をかけようとして躊躇う。だって義兄上は一人じゃなくて、見覚えのある女の人と一緒だったんだ。
その女の人は、ナウラティスの属国の一つである、ドゥナラル公国の第一公女様だった。
28
あなたにおすすめの小説
BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。
佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる