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第一章・リーファ視点
1-10・寝起き
ふわと意識が浮上する。
僕は慣れたあたたかさの中にいた。
「リーファ? 目が覚めたのか?」
義兄上の声がして、僕はぐずるようにすりと、すぐ傍にあるぬくもりへとすり寄る。
寝起き特有の気怠さに、なんだか頭がぼんやりしていた。
「ぅ……っ、義兄上……?」
それでももう一度眠るのではなく、起きる方向で声を上げたのは、なんだかこのままもう一度眠ってしまうのはよくない事のような気がしたからで、それはいったいなぜだったろうかと思い出して、すぐにがばと体を起こした。
「義兄上っ?!」
「おっと」
僕が急に動いたせいで、僕を抱えてくれていた義兄上が少しだけバランスを崩す。
と、言うか、僕の方こそが崩れ落ちそうになってしまってむしろ義兄上はそれを危なげなく支えてくれた形だ。
きょろと辺りを見回すと、ここは見慣れた僕の寝室で、いつも義兄上と一緒に寝ているベッドの上、どうやら僕はいつも通り、義兄上に抱えられるようにして眠っていたみたいだった。
はたと自分の格好を見下ろすと、しっかり寝間着に着替えている。多分義兄上が着替えさせてくれたのだろう。
僕がどこかで寝落ちてしまって、気付かないうちに義兄上が着替えさせてくれている、なんてことはこれまでも幾度もあって、だから今日もきっとそう。
執務室からここまでも、きっと抱えて運んでくれたのだろうと思うと、少し申し訳なくなるけれど、あんなふうに眠りこけてしまうだなんて、義兄上がおっしゃっていらしたように、僕は自分でも気づかないうちに、いつもより疲れてしまっていたのかもしれないとも思った。
そうして改めて自分のお腹を意識する。
寝て起きたけど、今も自分以外の鼓動が確かにそこにあって、ああ、自分が子供を身ごもったのは、夢でも勘違いでもなかったのだなと再確認した。
「大丈夫かい? リーファ。よく眠っていたから、起こさずにここまで移動させたんだ。やっぱり疲れていたんだろう。なにせ子供が出来たばかりなんだ。魔力が少し足りなくなっているのかもしれないね」
言いながら兄上が指先に魔力を乗せて、僕の頬に触れる。
包み込むような義兄上のあたたかな手はなんだかすごく心地よくて、僕はうっとりと目を細めた。
「気持ちいいです、義兄上」
あたたかな義兄上の魔力が僕の中へと流れ込んでくる。
でも、義兄上の魔力は、元々僕自身のそれととてもよく似ていて、だからだろうか、瞬く間に僕自身の魔力と馴染んでいった。
ほんの一瞬で、義兄上の魔力は、僕のそれへと成ってしまうのだ。
なんだかそんな事実が少しだけ寂しい。でも、これはいつものこと。
僕は確かに他の人から、魔力を注がれたことなんてないけれど、こういう些細な交流ぐらいは、義兄上とだけなら経験があった。
とは言え、こんなもので子供など出来るはずがないのだから、結局、子供の父親の心当たりなんてないままなんだけれども。
「そうか。よかった。少し目が覚めてきたかい? だったら、軽くでもいいから何か食べよう。もう夕食の時間は過ぎてしまっているし、お腹が空いているだろう?」
そう言われると、とたんきゅると、空腹にお腹が小さく鳴いた。
頷く僕に義兄上は小さく笑って、今度はしっかりと体を起こし、枕元に設置されているベルで使用人を呼び寄せる。
すぐにも現れた見慣れた侍女に、手早く幾つかの指示を出す義兄上を、僕はそのまま、ぼやっと眺め続けた。
それはある意味ではとても、いつも通りの義兄上の姿だった。
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