【完結】身に覚えがないのに身ごもりました。この子の父親は誰ですか?

愛早さくら

文字の大きさ
12 / 148
第一章・リーファ視点

*1-11・初めてではないくちづけ

しおりを挟む

 結局、今、何時なのだろうと時間を確認すると、時計の針は夕食は過ぎていて、でも寝るには少し早い時間を指している。
 思っていたよりもとてもたくさん眠っていたみたいで、自分でも少し驚いた。
 手早く用意された軽食を、義兄上あにうえと二人で食べ始める。
 義兄上はいつも通り、とても甲斐甲斐しく僕の世話を焼いてくれて、自分が食べることこそ疎かになっているぐらいで、仕方なく義兄上の口には、僕が軽食を運んであげることにした。
 まるで食べさせ合うみたいな形になってしまったけれど、これもまた、今までもままあったこと。
 特に、今日のように寝落ちてうっかり夕食が遅れてしまったり、または僕が体調を崩したりした時には、むしろいつもこんな風なのだ。
 そんな僕と義兄上を知った時に、兄様はなんとも言えない顔をしていらしたけど、実はそのお顔の意味は僕には今もわからないまま。

「気にしなくていいよ」

 とも言っていらしたから、気にしないようにしている。
 とにかく、いつも通りに軽食を摂って、それから僕は改めて義兄上を見た。
 だって寝る前に言っていたから。
 僕のお腹に宿った、子供を育てる為の魔力を、義兄上が注いでくれるって。
 それはつまり今から義兄上が、僕に触れてくれるということだった。
 義兄上も僕を見ている。
 柔らかい眼差し。

「リーファ」

 とってもとっても大切そうに僕の名前を呼んで。
 近づいてくるキレイな顔。寄せられた唇に応えるように、僕はそっと目を閉じた。
 ふにと、義兄上の唇の感触が、僕の其処に伝わって、触れ合った所から、また魔力が流れ込んでくる。
 初めての感触。
 とっても気持ちいい。
 否、くちづけそのものは今までにも何度だって交わしたことはあったんだ。だって僕は本当に小さい時、物心ついた時にはいつだって義兄上と一緒に寝ていたし、お風呂も一緒だったんだから。
 そんな時に義兄上は僕にくちづけをした。

「リーファが可愛いから、したくなっちゃうんだ」

 だって。
 今までに何度も義兄上とかわしてきたくちづけ。

「誰にも教えてはいけないよ? これは二人だけの秘密だ」

 なんてことも言われたことがあって、秘密って言う響きが、なんだかワクワクしてとっても嬉しかったのを覚えている。
 だから、2人の秘密のくちづけ自体は、今までに何度も交わしたことがあって、でもこんな風に、触れたところからすぐに、魔力を注がれたことなんてなかった。
 つまり、初めて感触であることに間違いはない。
 あたたかな魔力。すぐに僕に馴染む義兄上の魔力。
 こうやって少しだけ注がれると、なんだかとっても足りないような気がしてきてしまって。

「義兄上、もっと……もっと下さい」

 気付くと僕はくちづけの合間に、そんな風にねだっていた。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。

佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった

cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。 一途なシオンと、皇帝のお話。 ※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

処理中です...