28 / 148
第一章・リーファ視点
1-27・戻ってきた兄様と③
しおりを挟む「ああ、注がない、注がないから! 安心していい。ね? お前が望んでいないんだったら、僕はそんなことしやしないよ。よっぽど切羽詰まった状況だとかいうわけでもなしに。そういうのは勝手にすることじゃないだろう?」
僕はどうしてか、まだ少しだけ疑わしい気持ちで兄様を見たけど、本当は兄様がこんなことで嘘を言ったり、僕を騙したりなんてしないことは知っていた。
ゆるゆると、警戒を解き始めた僕に、兄様はほっと安堵の息を吐く。
「リーファがいいなら、僕はもう何も言わないよ。君がペーリュのこと、大好きなんだってことはよくわかったから」
また兄様は当たり前の話をする。
僕が義兄上のこと、大好きだなんて、今更なことなのに。
兄様は改めて僕の頭をそっと撫でた。
まるで小さい子供を相手にしているかのような優しいお顔で僕を見る。いつも通りの兄様だ。
「君がいいならいいんだ。仕方がないからね。リーファの気持ちがいちばん重要だよ。精々ペーリュには責任を取らせよう」
そして何事か、よくわからないけど、自分一人で納得して、幾度も頷いている。
義兄上の責任って何だろう?
僕は小さく首を傾げた。
「でもリーファ、何かあったら真っ先に僕に相談しに来るんだよ? 僕はきっとお前を助けて見せるから」
少し不思議そうだったり、怪訝そうだったりする僕に構わず、改めてという風に兄様は僕に念を押してきて、なんだかいつも通りだなぁと僕は思う。
兄様はとっても心配性で、いつも同じことばかり言うんだ。
曰く、
「何かあったら僕に言って! 絶対に助けてあげるから」
って。今もそれとほとんど同じ。
僕は今まで助けて欲しいと思うような状況になったことがないのだけれど、兄様がなぜいつもそんなことを言うのか、僕はやっぱりわからない。でも。
それが、兄様が僕を、大事に思ってくれてるからなんだってことは、わかってるから、僕はいつも頷くんだ。今も。
「わかりました」
素直に頷いた僕を、兄様はまだまだ心配そうに見ていたけれど、やがて溜め息を吐いて、
「必ずだからね?」
なんて、また重ねて念を押してきた。
ちょっとしつこいなぁって、僕は思った。
こんな風に国の中で、僕に子供が出来たことだとか、義兄上が僕に魔力を注ぐことになったことだとかについて、何かを言ってくるような人は誰もいなくなったんだ。
兄様は義兄上が皇帝になる前に皇帝だった人で、とっても長い間、皇帝だった。つまり、義兄上に代替わりしても、まだまだこの国で兄様に逆らえるような人はいなくて、その兄様が構わないって言ったことに対して、誰も文句なんて言わないからね。
でもそれは、国の中だけの話。
そんなことを僕が知るのは、そこから数ヶ月経ってからのことだった。
36
あなたにおすすめの小説
冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる
尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる
🌟第10回BL小説大賞(2022年)奨励賞。2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟
ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。
――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。
お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。
目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。
ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。
執着攻め×不憫受け
美形公爵×病弱王子
不憫展開からの溺愛ハピエン物語。
◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。
四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。
なお、※表示のある回はR18描写を含みます。
🌟第10回BL小説大賞での応援ありがとうございました!
🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。
巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】
晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。
発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。
そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。
第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。
平凡な俺は魔法学校で、冷徹第二王子と秘密の恋をする
ゆなな
BL
旧題:平凡な俺が魔法学校で冷たい王子様と秘密の恋を始めました
5月13日に書籍化されます。応援してくださり、ありがとうございました!
貧しい村から魔法学校に奨学生として入学した平民出身の魔法使いであるユノは成績優秀であったので生徒会に入ることになった。しかし、生徒会のメンバーは貴族や王族の者ばかりでみなユノに冷たかった。
とりわけ生徒会長も務める美しい王族のエリートであるキリヤ・シュトレインに冷たくされたことにひどく傷付いたユノ。
だが冷たくされたその夜、学園の仮面舞踏会で危険な目にあったユノを助けてくれて甘いひと時を過ごした身分が高そうな男はどことなくキリヤ・シュトレインに似ていた。
あの冷たい男がユノにこんなに甘く優しく口づけるなんてありえない。
そしてその翌日学園で顔を合わせたキリヤは昨夜の優しい男とはやはり似ても似つかないほど冷たかった。
仮面舞踏会で出会った優しくも謎に包まれた男は冷たい王子であるキリヤだったのか、それとも別の男なのか。
全寮制の魔法学園で平民出身の平凡に見えるが努力家で健気なユノが、貧しい故郷のために努力しながらも身分違いの恋に身を焦がすお話。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。
佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。
完結|ひそかに片想いしていた公爵がテンセイとやらで突然甘くなった上、私が12回死んでいる隠しきゃらとは初耳ですが?
七角@書籍化進行中!
BL
第12回BL大賞奨励賞をいただきました♡第二王子のユーリィは、美しい兄と違って国を統べる使命もなく、兄の婚約者・エドゥアルド公爵に十年間叶わぬ片想いをしている。
その公爵が今日、亡くなった。と思いきや、禁忌の蘇生魔法で悪魔的な美貌を復活させた上、ユーリィを抱き締め、「君は一年以内に死ぬが、私が守る」と囁いてー?
十二個もあるユーリィの「死亡ふらぐ」を壊していく中で、この世界が「びいえるげえむ」の舞台であり、公爵は「テンセイシャ」だと判明していく。
転生者と登場人物ゆえのすれ違い、ゲームで割り振られた役割と人格のギャップ、世界の強制力に知らず翻弄されるうち、ユーリィは知る。自分が最悪の「カクシきゃら」だと。そして公爵の中の"創真"が、ユーリィを救うため十二回死んでまでやり直していることを。
どんでん返しからの甘々ハピエンです。
竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】
ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。
愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる
彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。
国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。
王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。
(誤字脱字報告は不要)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる