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第一章・リーファ視点
1-56・知らない誰か④
しおりを挟むよくわからないし、そもそも何が何やら全く理解できないのだが、なんだか嫌な気分になる。
目の前の男の人みたいなのがきっと、みんなが気をつけなさいっていっぱい言ってた、悪いことばかり考えてる人、だ。初めて見た。
ほんとにいたんだなぁと感心する気持ちもあるんだけど、それよりも今は、近くにいるこのなんだかかわいそうな人をどうにかしてあげたいって僕は思った。
だって、とっても震えていて、えーっと、なんだっけ、裸に剥く? って、つまりどうするんだろう。服を脱がせるってことかな? とにかく、そういうことも出来そうにない。
たまりかねた僕は男の人に向かって口を開いた。
「ねぇ、変なこと言うのやめてよ。かわいそうだよ」
正直な所、僕はいつでも転移魔法で義兄上の所へと戻ることが出来る。でも、そうしたら近くにいる、この可哀そうな人が、なんだかもっと可哀そうなことになりそうで、今、実はちょっとだけ躊躇していた。
そもそも、どうしてわざわざ僕を、こんななんだかよくわからない汚い場所に連れてきたのかもわからないし、この男の人がいったい何がしたいのかもさっぱりだ。
義兄上の所へ戻るのは、そういうのがもう少しわかってからの方がいいかなと考える。その時にこのかわいそうな人も一緒に連れて行ったら大丈夫だろうか、だとか。
そんなことを思いながらも僕は、目の前の男の人を睨みつけた。
ひどいことはやめて欲しい。だってそういうのを見ると、とっても嫌な気持ちになるんだもの。
「うるせぇよ! 人の心配より自分の心配でもしたらどうだよ、え? 聞けばお前、男をくわえ込むのが好きらしいじゃねぇか。キレーな面してんのに、キレーなのは見かけだけってかぁ! だったらこれから俺らがいくらでも相手してやるっつーのによぉ……なんなんだ、これはいったい。てめぇ、なんか小細工でもしてやがんのか? あぁん?」
目の前の男の人は、怖い顔でそんなことを僕に言ってくるのだけれど、初めから最後まで全部、何を言っているのかわからない。
男をくわえ込む、ってどういう意味だろう。誰の話をしているの?
ああ、でも、小細工というのが多分、僕を覆っている守護結界のことを指しているんだろうなというのはなんとなく理解することが出来た。
でも、逆に言えばわかったのはそれぐらいだった。
そもそもこの男の人は、多分、守護結界のことを知らないのだと思う。
ナウラティスの王族が、各個々人でもそれを行使しているだとかいう話は、有名だと思っていたのだけれど、違ったのだろうか。
よくわからない。
「何の話? 小細工って結界のこと?」
僕は不思議に思ったことを、そのまま口に出して問いかけた。
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