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第一章・リーファ視点
1-61・安堵
僕は泣いた。だって怖かった。
初めは全然大丈夫だったのだけれど、目の前で誰かが殴られているのを見たりしたら駄目だった。
怖くて堪らなくなった。でも今はもう義兄上がいる。
「ああ、リーファ、どうしたんだ、なぜこんな……いったい誰が……それにこいつは……?」
義兄上が手足を縛られていて上手く動けない僕を抱え起こしてくれた。あたたかい、義兄上の体温が触れ合った所から流れ込んでくる。きっと、魔力も一緒に流し込んで下さっているのだろう。それだけでひどく安心できて。
「うぅ……義兄上ぇ……」
義兄上はしゃくり上げる僕の手と足の拘束を瞬く間に解いて下さった。自由になった僕は義兄上に抱き着く。そうしたら義兄上は応えるように、ぎゅっと僕を腕の中に閉じ込めて下さった。
「ああ、リーファ……無事でよかった。心配していたんだ。手足まで縛られたりしていたなんて。囚われていたんだろう? 助けられなくてすまなかった」
僕を抱きしめながら、義兄上がそう、謝罪の言葉を口にする。僕は義兄上の胸に頭を擦り付けるようにして首を横に振った。
「いいえ。いいえ、僕こそ、心配をおかけしてすみませんでした。本当はもっと早く戻れたんです、でも……」
「それはこの、一緒に転移してきた人が関係しているのかな?」
義兄上に確認されて、僕はこくりと頷く。
「だって、かわいそうで……」
「ああ、優しいリーファは放っておけなかったんだね」
僕が上手く説明できなくても、義兄上はちゃんと全部、察して下さった。
多分、一緒に転移してきたかわいそうな人が、見るからに殴られてボロボロだったのもあるとは思う。それに一緒に転移してきた、ということだけでも、事情があるのだと思うには充分だったのだろう。
「いいんだ、リーファ。お前が無事に戻ってきてくれた。それだけでもう充分だよ」
「義兄上……」
優しい眼差しで義兄上が僕を見下ろして、僕はうっとりと義兄上を見つめ返し、そして。義兄上の唇が近づいてきたので僕は目を閉じた。落として下さるのだろうくちづけを待つ。いつも通りの、とても安心する触れ合い。に、なる直前。
「どうしてソイツがココにいるのよ!」
聞こえてきた耳障りな金切り声に、僕と義兄上の動きがぴたりと止まった。
義兄上のまとう空気が途端に尖る。うっすらと目蓋を押し上げると、義兄上はとても、とても不快なものを聞いたとばかりに、これでもかと眉根を寄せておられて。でも、僕に気付くと、お顔の強張りを解いて、
「すまない、リーファ。そんな顔をしないで」
と、今度こそ止まることなく、さっと僕へとくちづけを贈って下さった。
「陛下っ!」
まるでそんな義兄上を咎めるような誰かの声。でも。そんな声なんかで、僕を抱きしめる義兄上の腕は、ちっとも弱まったりしなかった。
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