【完結】身に覚えがないのに身ごもりました。この子の父親は誰ですか?

愛早さくら

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第一章・リーファ視点

1-62・抱きしめ合う


 義兄上あにうえの腕の中は安心する。

「いい加減になさって!! 陛下!」

 そうして僕が義兄上から注がれる魔力に浸っているのに、それを邪魔するような声が止まない。公女様だ。
 義兄上は公女様の声に、もはや一切の反応を示さなかった。ただ、ちゅ、ちゅ、と僕のお顔にたくさんのくちづけを降らせてくださるばかり。
 あったかくて気持ちいい。

「義兄上ぇ……んっ」

 甘えるように呼びかけると、勿論、義兄上は僕の唇へもくちづけを下さって。しっとりと合わさる口と口。くちゅ、すかさず差し込まれた義兄上の舌に、僕のそれを絡める。
 頭がふわふわする。気持ちいい。

「ぁん……義兄上ぇ……」

 くちづけの合間、漏れる僕の声は、まるで子供みたいに義兄上を求めていた。

「リーファ」

 義兄上が僕を見ている。愛しいと、眼差しで語って。そして。僕を抱きしめる義兄上の手が僕の腰を這い、するん、服を乱し始めた、……――辺りで。

「っ……! 陛下!」
「ノルフィ!」

 バタバタと誰かが近づいてくる気配と足音がしたと思ったら、バタンっ! 勢いよく扉が押し開けられて。
 幾人かの兵士を引き連れて、姿を現したのはこの公国の大公閣下だった。
 大公閣下が、ぎょっとしたように部屋の惨状を見る。僕も其処で初めて今の状況を確認した。
 そもそも、ここは何処だろう。義兄上のお傍だっていうことは確かで、僕は義兄上を目がけて転移魔法を使ったから、それだけしか把握していなかった。
 キョロと辺りを見回すと、多分、応接室のような部屋の一つなのではないかと思う。
 すぐ傍にソファセットがあり、公女様は向かい側の席から立ち上がって、憤り故にだろう、体をぶるぶると震わせながらこちらを睨みつけていた。
 僕と義兄上がいたのは、ソファのすぐ傍の床だ。
 多分、僕がここに転移してきたから、義兄上がソファから立って、僕の所まで駆けつけてくれたのだと思う。
 そのまま、二人して床に座り込んで抱き合っていたのだろう。僕は義兄上を見た瞬間から、頭の中は義兄上でいっぱいになってしまっていたので、よくわかっていなかったのだけれど、多分そう。
 近くには僕の手足を拘束していたのだと思われる引きちぎられた縄と、あのかわいそうな人が、気を失ったまま転がっていた。
 あ! そうだった! あの人、治してあげないと! 大丈夫かな?
 かわいそうな人に意識が向かった僕に気付いたのだろう義兄上が、僕の動きを妨げることなく、僕を抱きしめていた腕の力を緩めて下さる。
 僕はそのままかわいそうな人に手を伸ばした。
 たくさん殴られていたせいだろう、とっても痛々しい姿。服も破られて、ぼろ切れみたいなのが辛うじて体に纏わりついているだけになっている。
 でも、触れるとちゃんとあたたかくて、生きてることがわかってほっとした。

「ああ、助けられなくてごめんなさい、でも、生きててよかった」

 うる、滲んだ視界もそのままに、僕はそのかわいそうな人に、今できる範囲での治癒魔術を施した。
 破れてしまった服はどうにもできないけど、せめて打撲痕ぐらいは何とかしないと。お顔だって元のお顔がわからないぐらいに腫れてしまっているし。

「何よ! いい子ぶってるの?! それともその小汚いの・・・・が貴方のいい人・・・なのかしら? ふふ、陛下の前でみっともないわねぇ」
「黙りなさいっ! ノルフィ!」

 やっぱりわけのわからないことを言っている公女様の方を見ると、公女様はこの間と同じ、とてもよくない印象の目で僕を睨みつけていて、笑みの形に口端を引き上げるとそれはなんだかとってもおかしな形に歪んでいくようだった。
 僕はあの公女様のことを、元々はとてもキレイな見た目をしていると思っていたのだけれど、あんなにも歪んでしまうなんて、せっかくのキレイなお顔も台無しだ。
 そんな公女様の言葉を、大公閣下が怒鳴りつけるようにして止めようとしていた。
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