66 / 148
第一章・リーファ視点
1-65・本当のお話③
しおりを挟む「君は再三リーファの出自を気にしているようだけれど、血筋だけで言うなら、私よりもリーファの方が王族としての血は濃いんだよ? 確かに、私の弟ではない。だが、王弟である事実に違いはないし、もしくは王子と言ってもいい。なにせ、私の曽祖父である先代皇帝の実弟だ。先々代皇帝と皇后が、生前最後におつくりになられた実子になる。お二方とも、王族としての血が濃い方々だ。代を重ねた私の方が、ずっと血は薄まっている。この子が下賤だというのなら、この近辺の国には下賤じゃない者なんて、誰もいないだろうね」
初めからわけがわからなかった公女様のお話の中で、明確に間違っていたのはそこだ。
僕と義兄上は本当の兄弟ではないけれど、間違いなく血は繋がっているのだから。
「そもそも、先代の皇帝陛下が引き取るというのを、是非にと願って私の方が望んでリーファを求めたんだ。それなのにこの子が私を騙す余地など、何処にあるというのか」
理解しがたい。そんな義兄上のお言葉に、公女様は勢い良く首を横に振っていらした。
「嘘よ! そんなはずないわ! その子供は陛下を騙しているのよ! だって私はそう聞いているわ!」
「いい加減にしてくれないか。君の聞いていたことが全て間違っているという話なんだよ。だいたい、リーファのこの姿を見て、どうして存在を疑うことが出来るんだ! こんなにも彼の皇后陛下にそっくりだというのに!」
そうなのだ。僕はこれまで、出自を問われたことなんて一度もなかった。だって見ればわかるのだ。兄様が、同じ顔をしているというぐらいに、僕は母様そっくりなのだから。
母様をおそらくご存じでいらしたのだろう、大公閣下は項垂れておられた。自分の娘の発言に、大公閣下こそが、信じられない気持ちでいらっしゃるのかもしれない。
でも、母様はこの公女様がお生まれになる前に亡くなっている。公女様が僕の母様のお顔を知らないのは、あり得なくはない話ではあった。
とは言え、魔法や魔術関連のお勉強をしていたら、ほとんど必ずと言っていいほど、母様の絵姿なんて、一度や二度は目にしているはずなのだけれども。
色々となさっていらした方だったようだから。例えばポータルにだって、母様の成した痕跡はあると聞いている。少なくとも、以前よりずっと少ない魔力で転移が可能なように改良を加えたのは母様だったはずだ。
「嘘よ、嘘! そんなはずない、そんなはずないわ! そんなはず……」
公女様は首を横に振りながら、改めて僕の方へと視線を向けた。
その視線は、いつもみたいに睨み付けてくるような嫌な感じのものじゃない。むしろ弱々しいぐらいだった。
「どうして嘘だと思うのか……君の発言の方が根拠がない。それに君は随分と、身持ちがゆるいだとか言ってリーファを貶めているけれど、それこそ、あり得ない話なんだ。確かに、リーファは自分の子供の父親のことを知らないままだ。だが、それで問題などどこにもない。何故なら、子供は私の子供なんだから」
頑是ない子供に言い聞かせるかのような義兄上のお話に、だけど首を傾げたのは、今度は僕の方だった。
うん? あれ? それは、僕の子供の父親になってくれるというお話なのだろうか。でも、今のお話の仕方だと、そうではないように聞こえて。
そう思ったのは、僕だけじゃなかったみたいで。
「それは、慈悲深い陛下が父親代わりを買って出られたというお話しで、」
「違う」
公女様が、確かめる為なのか、もしくは更に何かを言い募る為なのか、そう、何かを言いかけたのを、義兄上は遮ってきっぱりと否定した。
「リーファは私しか知らないんだ。リーファに魔力を注いだ者など、私しかいないんだから、子供の父親も私以外にはありえないんだよ」
「で、でも、その子は父親がわからないと、」
「当たり前だろう? リーファは知らないのだから。私がリーファに魔力を注ぐのは、リーファが眠っている時ばかりだったからね」
義兄上がそう言い切った瞬間、一瞬、意味がよく呑み込めなかったらしい公女様は、だけど、それを理解した途端、愕然とした表情で義兄上を見た。
信じられない、あるいはとんでもないとその眼差しが言っている。
実際、義兄上がおっしゃったことは、とても衝撃的なことだったのだと思う。だけど義兄上は、当たり前のことを応えただけで、どうしてそんなにも驚くのかの方こそ、わからないというようなお顔をしていらしたのだった。
22
あなたにおすすめの小説
冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる
尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる
🌟第10回BL小説大賞(2022年)奨励賞。2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟
ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。
――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。
お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。
目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。
ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。
執着攻め×不憫受け
美形公爵×病弱王子
不憫展開からの溺愛ハピエン物語。
◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。
四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。
なお、※表示のある回はR18描写を含みます。
🌟第10回BL小説大賞での応援ありがとうございました!
🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。
巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】
晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。
発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。
そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。
第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。
平凡な俺は魔法学校で、冷徹第二王子と秘密の恋をする
ゆなな
BL
旧題:平凡な俺が魔法学校で冷たい王子様と秘密の恋を始めました
5月13日に書籍化されます。応援してくださり、ありがとうございました!
貧しい村から魔法学校に奨学生として入学した平民出身の魔法使いであるユノは成績優秀であったので生徒会に入ることになった。しかし、生徒会のメンバーは貴族や王族の者ばかりでみなユノに冷たかった。
とりわけ生徒会長も務める美しい王族のエリートであるキリヤ・シュトレインに冷たくされたことにひどく傷付いたユノ。
だが冷たくされたその夜、学園の仮面舞踏会で危険な目にあったユノを助けてくれて甘いひと時を過ごした身分が高そうな男はどことなくキリヤ・シュトレインに似ていた。
あの冷たい男がユノにこんなに甘く優しく口づけるなんてありえない。
そしてその翌日学園で顔を合わせたキリヤは昨夜の優しい男とはやはり似ても似つかないほど冷たかった。
仮面舞踏会で出会った優しくも謎に包まれた男は冷たい王子であるキリヤだったのか、それとも別の男なのか。
全寮制の魔法学園で平民出身の平凡に見えるが努力家で健気なユノが、貧しい故郷のために努力しながらも身分違いの恋に身を焦がすお話。
完結|ひそかに片想いしていた公爵がテンセイとやらで突然甘くなった上、私が12回死んでいる隠しきゃらとは初耳ですが?
七角@書籍化進行中!
BL
第12回BL大賞奨励賞をいただきました♡第二王子のユーリィは、美しい兄と違って国を統べる使命もなく、兄の婚約者・エドゥアルド公爵に十年間叶わぬ片想いをしている。
その公爵が今日、亡くなった。と思いきや、禁忌の蘇生魔法で悪魔的な美貌を復活させた上、ユーリィを抱き締め、「君は一年以内に死ぬが、私が守る」と囁いてー?
十二個もあるユーリィの「死亡ふらぐ」を壊していく中で、この世界が「びいえるげえむ」の舞台であり、公爵は「テンセイシャ」だと判明していく。
転生者と登場人物ゆえのすれ違い、ゲームで割り振られた役割と人格のギャップ、世界の強制力に知らず翻弄されるうち、ユーリィは知る。自分が最悪の「カクシきゃら」だと。そして公爵の中の"創真"が、ユーリィを救うため十二回死んでまでやり直していることを。
どんでん返しからの甘々ハピエンです。
BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。
佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。
お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!
MEIKO
BL
本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。
僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!
「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」
知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!
だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?
※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。
【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる
ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。
・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。
・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。
・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。
宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている
飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話
アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。
無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。
ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。
朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。
連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。
※6/20追記。
少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。
今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。
1話目はちょっと暗めですが………。
宜しかったらお付き合い下さいませ。
多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。
ストックが切れるまで、毎日更新予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる