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第一章・リーファ視点
1-67・本当のお話⑤
しおりを挟むだけど義兄上はうっとりしたそのままのお顔を今の僕にも向けてくれて、その上でやんわりと、それはもう、愛しいと、眼差しで語るように僕へと微笑みかけてくれたので、僕の下がってしまった気分はすぐにもふわふわと浮き上がった。
結局、僕は義兄上の意識が僕に向かっていたらいいのだから、とてもお手軽な存在なのかもしれない。
ただ、義兄上のお話の中で、僕は疑問に思ったことがあった。
「でも義兄上、僕に魔力を注いでくださっていたとおっしゃいますけど、僕、子供が出来るまで、義兄上の魔力をお腹の中に感じたことなんてなかったんですけど」
僕の問いかけに、どうしてか公女様が、何か希望を持ったかのように顔を輝かせる。
「あ、あら、でしたら先程のお話は狂言だとか、思い込みだとかいうことなのかしら?」
自分以外から魔力を注がれたらわかる。
それは当たり前の話だった。特に僕は魔力量が多く、感知だとかそう言うのも別に苦手ではない。
子供が出来た時だってすぐに理解した。
自分以外の誰かが自分に魔力を注いできて、それに気付かないわけなんてないのだ。
だけど、義兄上はふわと首を傾げて。
「何を言っているの? 思い込みも狂言もあり得ないよ。それにね、リーファ。お前はいつも私の魔力で満ち続けているんだから、気付くも気付かないもないだろう? お前のお腹の中に私の魔力があることが普通なんだからね。今は子供がいるから、いつもよりたくさん魔力を注いでいるから、以前よりわかりやすくなっているかもしれないけれど、お前のお腹の中が私の魔力で満ちていなかったことなんて、ここ数年だと1日足りとて存在しないよ」
などと、にっこり笑って言い切った。
どうも僕は義兄上の魔力を注がれた状態こそが常だったようなので、それは確かに、いつも通りなら何も気づくはずはないなと僕は思う。
そもそも、僕と義兄上の魔力は似ているのだ。否、本当に似ているのだろうか。
ちろと義兄上を見る。義兄上はにこにことしている。
「僕はてっきり、義兄上の魔力と僕の魔力はそっくりなのだと思っていました」
だから魔力を注がれていても気付かなかったのかもしれない。それが、自分なりに出した先程の質問への答えだったのだけれど、この分では違っていたみたいだ。
「うん? 私とリーファの魔力がよく似ているのはもともとだよ。ただ、それでも始めはちゃんと、別人の魔力だとわかる程度だったとは思うけど……はは。面白いよね。毎晩毎晩ずっと魔力を注ぎ続けると、次第に馴染んで、注がれた状態が常となるから、魔力も似て見えてくるみたいだよ? 元々、魔力が似ていたから余計に、違いが分からなくなっているんじゃないかな? ふふ。すっかり私の魔力と同じになっているね。私のリーファだ」
似ていた、のは間違いないらしい。でも、違いがわからないほどになったのは、常に僕の中には、注がれた義兄上の魔力があり続けたから。文字通り、義兄上の魔力に僕が染まり切っているという話なのだろう。
義兄上の僕を見る目はとっても優しかった。
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