71 / 148
第一章・リーファ視点
1-70・僕の望むこと②
しおりを挟む僕をぎゅっと抱きしめたまま、義兄上はまだ更にお話を続けた。
「彼女の方はそれでいいとして。もう片方の方こそ見過ごせないよ。とは言え、そちらも君に挽回の機会を与えよう。次の視察の時期を早める。来年か、再来年か。時期については調整次第にはなるけれど、その際に状況が改善されていなければ、その時は……――」
「も、勿論でございます! 必ず! 必ずやご期待に添えて見せましょう。寛大なご判断、感謝いたします、陛下、殿下」
いずれにせよ今回はこれ以上の厳しい処置は取らないと告げた義兄上に、大公閣下は全身でもって感謝を示していて。僕はこれで全部が大丈夫になるのなら、きっとそれでいいのだろうとなんだかやっぱり何処かかわいそうにしか見えない大公閣下を眺めていた。
先程の義兄上のお言葉を指示と受け取って、大公閣下が恐縮しながら部屋を出ていく。そうしたら途端、義兄上は僕をひょいと抱き上げたかと思うと、すたすたとやっぱり部屋を出て、僕や義兄上が寝室として使っているお部屋に向かった。
ちなみに、僕と一緒に転移してきたかわいそうな人は、実は途中で兵士の一人が早々にどこかへと連れて行っていて、多分治療だとか尋問だとかを改めて受けているのではないかと思う。
そう言えば今日は夜会だったはずなのに、それはどうしたのだろうかとちらと思ったけれども、今の義兄上はとてもではないけれども聞けるような雰囲気ではなく、僕は今は考えないことにした。
後から聞いたところによると、夜会は中止となっていたらしい。
僕がいなくなったことに気付いた義兄上は当然のように夜会よりも僕を探すことの方を優先し、主賓がいない状態でそのようなものを開くわけにもいかず、急遽中止となったのだとか。
そのまま義兄上は可能な手段全てを用い、僕を探していて、そんなさなか、あの公女様に呼び出され、彼女を探るためにもとあの応接室にいたのだそうだ。
また、僕があの部屋に転移してきて程なく、僕が連れ去られた先にいた汚い男の人達は捕らえられたらしく、順調に尋問し、自白も得られたと聞いている。
僕はとてもたくさんに人に迷惑や心配をかけてしまったようで、申し訳ない気持ちになったのだけれど、そもそも警備に問題があったドゥナラル公国側の責任があるし、その上、今回、僕の誘拐をたくらんだのは他でもないドゥナラル国内の官吏、というか、宰相をしていた人物らしいのだけれど、その人で、あの公女様も長年仕えてくれている、信頼に足るはずの宰相の言葉だったがために、義兄上への好意を利用され、色々と騙されて唆されていたようだった。
どう考えても落ち度はドゥナラル側にあり、僕が気にするようなことは何もないのだという。
ナウラティスに戻ってから兄様も同じことを言っていたので、僕は気にしないことにした。
たまに義兄上は僕のことに関しては、とても大げさになったりするから、そういう意味では、僕を叱ったり窘めたりすることもある兄様の方が信用できるんだ。
義兄上が僕に叱ったことなんて、本当に今まで一度もないからね。僕に悪いところがあったなら、叱ってくれたらいいのに、義兄上にとっては僕に悪いところなんて、全く何一つとして存在しないのだそうだ。
よくわからないけれども、義兄上が僕のことを大切にしてくれているが故なのだったらとっても嬉しいから、それでいいことにする。
とにかく、それらは全部、後になってからのことで、お部屋に戻った僕は、いつも以上に念入りに義兄上に魔力を注いで頂いた。
「ぁっ、ぁっ、ぁあっ! 義兄ぇっ! ぁんっ」
ベッドに寝かされた僕のお腹の中は、すぐに義兄上でいっぱいになって、奥の奥をたくさん突かれて、そのうちぐぽっと、一番奥の更に先まで義兄上が入ってきて、僕はやっぱりいつも通り、気持ちいいしか考えられなくなった。
魔力が満ちている。赤ちゃんもきっと喜んでいる。
「ぁあっ!」
背を仰け反らせながら、それでも両手を義兄上へと回して縋りつく僕を、義兄上はぎゅっと抱きしめて離さない。
ずちゅずちゅごんごん、僕のお腹の中をかき回す義兄上の動きは止まらず、僕はそれが嬉しくて、幸せで。
そう言えばこのお腹の中の子供の父親は、義兄上だったのだと今更ながらに安心した。
他の誰かだと嫌だった。そんな想像をすると、とっても気持ち悪くなってそしてなにより怖かった。
でも。
義兄上だった。
僕に触れていたのは義兄上で、僕の意識がない間に、僕に魔力を注いでいたのも義兄上で、僕は義兄上に、にしか触れられたことも魔力を注がれたこともなくて。だったらよかった。それでよかった。
義兄上ならいい。なんでもいい。ただ。
「僕、義兄上が魔力を注いでくださっている時のことは、全部覚えていたいです。もし僕が寝ちゃっている時にそうしたなら、僕が起きた時にわかるようにしていてください」
義兄上は寝ている僕に魔力を注ぐときはいつも、最後に治癒魔術を使って、僕を治してくれていたのだそうだ。起きた僕が義兄上から魔力を注がれたことによって、違和感を覚えていたり、どこか痛めていたりしたらかわいそうだと思って。
でも僕は、違和感があったり、お腹の奥やお尻の穴が痛かったりするのは、義兄上に魔力を注いでもらった証だから、ちゃんと全部感じたくて、そうお願いしたら義兄上は、今度からは僕が寝ている間に治さないことにすると約束してくれた。
嬉しかった。それでよかった。
だって僕は義兄上が好きで、きっと愛していて、義兄上も僕を愛してくれている。だから。
「義兄上ぇっ!」
僕はそうして毎晩、義兄上に魔力を注いで頂いて、そしてそれが、とってもとっても幸せなのだった。
はじめ、子供が出来た時、子供の父親がわからなくて身に覚えが全くなくて僕は戸惑った。
でも、子供の父親は僕の大好きな義兄上だった。
僕は嬉しい。
だってそれってそんなにも、義兄上が僕のことを、愛してくれている証でしょう?
僕はもうじき義兄上のお嫁さんになって、ナウラティス帝国の皇后になることが決まっている。
今からそれが、とてもとても楽しみだった。
ねぇ、義兄上。
今からきっと、僕と義兄上と赤ちゃんと。
一緒にいっぱいいっぱい幸せでいられるね。
きっとずっとずっと幸せでいましょうね。
ねぇ、義兄上。
第一章・完
16
あなたにおすすめの小説
BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。
佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる