【完結】身に覚えがないのに身ごもりました。この子の父親は誰ですか?

愛早さくら

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第一章・リーファ視点

1-70・僕の望むこと②

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 僕をぎゅっと抱きしめたまま、義兄上あにうえはまだ更にお話を続けた。

「彼女の方はそれでいいとして。もう片方の方こそ見過ごせないよ。とは言え、そちらも君に挽回の機会を与えよう。次の視察の時期を早める。来年か、再来年か。時期については調整次第にはなるけれど、その際に状況が改善されていなければ、その時は……――」
「も、勿論でございます! 必ず! 必ずやご期待に添えて見せましょう。寛大なご判断、感謝いたします、陛下、殿下」

 いずれにせよ今回はこれ以上の厳しい処置は取らないと告げた義兄上に、大公閣下は全身でもって感謝を示していて。僕はこれで全部が大丈夫になるのなら、きっとそれでいいのだろうとなんだかやっぱり何処かかわいそうにしか見えない大公閣下を眺めていた。
 先程の義兄上のお言葉を指示と受け取って、大公閣下が恐縮しながら部屋を出ていく。そうしたら途端、義兄上は僕をひょいと抱き上げたかと思うと、すたすたとやっぱり部屋を出て、僕や義兄上が寝室として使っているお部屋に向かった。
 ちなみに、僕と一緒に転移してきたかわいそうな人は、実は途中で兵士の一人が早々にどこかへと連れて行っていて、多分治療だとか尋問だとかを改めて受けているのではないかと思う。
 そう言えば今日は夜会だったはずなのに、それはどうしたのだろうかとちらと思ったけれども、今の義兄上はとてもではないけれども聞けるような雰囲気ではなく、僕は今は考えないことにした。
 後から聞いたところによると、夜会は中止となっていたらしい。
 僕がいなくなったことに気付いた義兄上は当然のように夜会よりも僕を探すことの方を優先し、主賓がいない状態でそのようなものを開くわけにもいかず、急遽中止となったのだとか。
 そのまま義兄上は可能な手段全てを用い、僕を探していて、そんなさなか、あの公女様に呼び出され、彼女を探るためにもとあの応接室にいたのだそうだ。
 また、僕があの部屋に転移してきて程なく、僕が連れ去られた先にいた汚い男の人達は捕らえられたらしく、順調に尋問し、自白も得られたと聞いている。
 僕はとてもたくさんに人に迷惑や心配をかけてしまったようで、申し訳ない気持ちになったのだけれど、そもそも警備に問題があったドゥナラル公国側の責任があるし、その上、今回、僕の誘拐をたくらんだのは他でもないドゥナラル国内の官吏、というか、宰相をしていた人物らしいのだけれど、その人で、あの公女様も長年仕えてくれている、信頼に足るはずの宰相の言葉だったがために、義兄上への好意を利用され、色々と騙されて唆されていたようだった。
 どう考えても落ち度はドゥナラル側にあり、僕が気にするようなことは何もないのだという。
 ナウラティスに戻ってから兄様も同じことを言っていたので、僕は気にしないことにした。
 たまに義兄上は僕のことに関しては、とても大げさになったりするから、そういう意味では、僕を叱ったり窘めたりすることもある兄様の方が信用できるんだ。
 義兄上が僕に叱ったことなんて、本当に今まで一度もないからね。僕に悪いところがあったなら、叱ってくれたらいいのに、義兄上にとっては僕に悪いところなんて、全く何一つとして存在しないのだそうだ。
 よくわからないけれども、義兄上が僕のことを大切にしてくれているが故なのだったらとっても嬉しいから、それでいいことにする。
 とにかく、それらは全部、後になってからのことで、お部屋に戻った僕は、いつも以上に念入りに義兄上に魔力を注いで頂いた。

「ぁっ、ぁっ、ぁあっ! 義兄ぇっ! ぁんっ」

 ベッドに寝かされた僕のお腹の中は、すぐに義兄上でいっぱいになって、奥の奥をたくさん突かれて、そのうちぐぽっと、一番奥の更に先まで義兄上が入ってきて、僕はやっぱりいつも通り、気持ちいいしか考えられなくなった。
 魔力が満ちている。赤ちゃんもきっと喜んでいる。

「ぁあっ!」

 背を仰け反らせながら、それでも両手を義兄上へと回して縋りつく僕を、義兄上はぎゅっと抱きしめて離さない。
 ずちゅずちゅごんごん、僕のお腹の中をかき回す義兄上の動きは止まらず、僕はそれが嬉しくて、幸せで。
 そう言えばこのお腹の中の子供の父親は、義兄上だったのだと今更ながらに安心した。
 他の誰かだと嫌だった。そんな想像をすると、とっても気持ち悪くなってそしてなにより怖かった。
 でも。
 義兄上だった。
 僕に触れていたのは義兄上で、僕の意識がない間に、僕に魔力を注いでいたのも義兄上で、僕は義兄上に、にしか触れられたことも魔力を注がれたこともなくて。だったらよかった。それでよかった。
 義兄上ならいい。なんでもいい。ただ。

「僕、義兄上が魔力を注いでくださっている時のことは、全部覚えていたいです。もし僕が寝ちゃっている時にそうしたなら、僕が起きた時にわかるようにしていてください」

 義兄上は寝ている僕に魔力を注ぐときはいつも、最後に治癒魔術を使って、僕を治してくれていたのだそうだ。起きた僕が義兄上から魔力を注がれたことによって、違和感を覚えていたり、どこか痛めていたりしたらかわいそうだと思って。
 でも僕は、違和感があったり、お腹の奥やお尻の穴が痛かったりするのは、義兄上に魔力を注いでもらった証だから、ちゃんと全部感じたくて、そうお願いしたら義兄上は、今度からは僕が寝ている間に治さないことにすると約束してくれた。
 嬉しかった。それでよかった。
 だって僕は義兄上が好きで、きっと愛していて、義兄上も僕を愛してくれている。だから。

「義兄上ぇっ!」

 僕はそうして毎晩、義兄上に魔力を注いで頂いて、そしてそれが、とってもとっても幸せなのだった。



 はじめ、子供が出来た時、子供の父親がわからなくて身に覚えが全くなくて僕は戸惑った。
 でも、子供の父親は僕の大好きな義兄上だった。
 僕は嬉しい。
 だってそれってそんなにも、義兄上が僕のことを、愛してくれている証でしょう?
 僕はもうじき義兄上のお嫁さんになって、ナウラティス帝国の皇后になることが決まっている。
 今からそれが、とてもとても楽しみだった。

 ねぇ、義兄上。
 今からきっと、僕と義兄上と赤ちゃんと。
 一緒にいっぱいいっぱい幸せでいられるね。
 きっとずっとずっと幸せでいましょうね。

 ねぇ、義兄上。





第一章・完
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