【完結】身に覚えがないのに身ごもりました。この子の父親は誰ですか?

愛早さくら

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幕間

x1-4・公女の顛末④

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 それでは、あの結界は、ノルフィの実際の行動にかかわらず、認識によって・・・・・・効果が変わるということだ。

「で、でも、あれを害と思わないなんてっ……!」

 そんな人間が果たして存在するのか。
 なにせノルフィは、連れ去られた王弟がどんな目にあわされる予定であるのか。察せられる程度には、知らされているのである。
 あんなまだ成人もしていないような少年に、と思わなかったわけではない。それでも、それが必要なのだと思っていたからこそ、ノルフィは宰相の企みを止めなかったのだ。
 それを、害することと認識しない?
 それこそ、ノルフィの感覚では異常と言わざるを得なかった。

「ナウラティスの結界に引っかかることは、何も悪いことではないんだ。ある意味では普通と言っていい。悪意・・害意・・を、きちんとそうと認識している。それは決しておかしなことではないんだ、ノルフィ。罪悪感を抱いて、害意・・を理解していた、そんなお前の感覚を、私は誇ってもいいとさえ思っているよ」

 ノルフィは、視界が滲むのを止められなかった。
 父は、今ではもう、ノルフィをすでに許しているのである。あまつさえ認めてくれている。

「例えばノルフィ。先程聞いた陛下のなさっていたことを、お前は殿下が害されていたと思っただろう」

 それは正しく先程のノルフィが感じたことだった。
 あの皇帝は、あんなにも愛し気に触れている相手である王弟を害し続けてきている・・・・・・・・・のだ。だが。

「お二人はね。あれを害意だとは認識していないんだ。陛下は害していたとは思っていないし、殿下も自分が害されてきたとは受け取っていない。私にはまったく理解できない感覚だが、双方がそうではないと認識している以上、陛下が殿下になさっていたことはナウラティスの結界には抵触しない。悪意・・害意・・とは見なされない。わかるかい? あの国の結界はね、悪意・・害意・・はあくまでも認識・・によって判断される。実際の事象や行動・・・・・・・・には左右されないんだよ」

 逆に言うと、どのような行動であっても、それを悪だとも害だとも認識していなければ、妨げることが出来ない結界なのだ。
 勿論、今回の件で言えば、例えば皇帝の行動を、王弟が害されたと認識してしまえば、次に皇帝はきっと、結界に弾かれることも出てきた可能性が非常に高かった。だが、そうはならなかった。他でもない王弟自身が、自分が害されたのだと認識しなかったからだ。
 わけがわからなかった。
 ノルフィには理解できない話だった。ただ、自分が彼の国では過ごしていけないのだろうということだけはあまりにも明白すぎる事実で。そして。

「陛下は、お前に具体的な罰をお与えにならなかった。指示もだ。何も頂いてはいない。だが、だからと言って、お前を罰さないだなんてわけにはいかない。わかるね? ノルフィ」

 父の声は疲れ切っている。あるいは、どうしようもない諦念に塗れて。

「……は、い……」

 ノルフィは震える声で頷いた。
 わかっていた。自分のしたことが、どういうことであったのか。何か、具体的な行動を起こしたわけではなくても、わかっていて見逃した、あるいは理解していながら加担した。それは充分に罪に問われる行為だったのだ。
 それでなくとも、王弟に対する態度や暴言だけでも、罰せられる理由になり得た。

「だが、かと言ってあまりに過剰な罰は、あの様子では今度は殿下がお許しにならないだろう」

 王弟は最後にはノルフィに非常に同情していた。おそらく罰こそ必要ないとさえ考えていそうな様子だった。だが、そういうわけにはいかないのが実情で。

「ノルフィ。お前をこのまま公女という身分で置いておくことはできないだろう。だから市井へ」

 平民として、今後を過ごさせる。
 それはきっとこれまで公女としてしか過ごしてこなかったノルフィにとって、しっかり罰になり得るはずだ。
 ノルフィは。それをおとなしく受け入れた。幽閉や強制労働等ですらなく、言うならばただの追放だ。それも国からではなく、王城からのみで、市井に下った後はノルフィ次第。細かい取り決めはこれからになるが、今のノルフィならば、おそらく、そうひどいことにはならない。
 それは間違いなく、の王弟からの慈悲だった。
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