84 / 148
幕間
x2-9・兄の葛藤⑨
しおりを挟むアーディがようやくリーファの元へ戻ったのは思っていたよりもずっと時間が経ってからのことだった。
ペーリュとは随分と長く話をしたのだが一切の成果なく、それでもリーファが望むのなら、必ずペーリュの元から助けてやらなくてはとそれだけを思って戻ってきたアーディに、待っていたのはしかし、ペーリュとほとんど変わらないような思考と認識であるらしいリーファだったのである。
それを、アーディがいない間に聞いていたらしいヴィーフェが教えてくれる。
「リーファ、そのお腹の子供の父親、ペーリュだったら嬉しいんでしょう?」
そんな風にリーファに質問することによって。
リーファはこくりと躊躇いなく頷いた。
「うん、嬉しいよ?」
どうしてそんなことを聞くの? とでも言いたげに。まるで当たり前のことだと頷く。
「え」
驚いたアーディにこそ、リーファが驚く。そんなに驚くようなことが、今の発言のどこにあったのかと。
アーディは躊躇いがちにおそるおそる確かめた。
「リーファ、子供の父親がペーリュだったら嬉しいの?」
「そうですけど……なんでそんなこと聞くんです?」
リーファは本当にわからないと言った顔をしていた。アーディは嫌な予感と既視感を覚える。先程まで相手にしていたペーリュと対峙した時と同じような印象。これは、つまり。
「だって、それってつまり、ペーリュが、リーファを……」
リーファの、知らない間に、ペーリュが。つまり、そういった接触をリーファに行っていたということなのだけれど。
「義兄上以外だったら嫌だけど、義兄上だったら嬉しいです」
「うん?」
リーファは言い切った。
それを聞いたアーディは、どんな顔をしていいのかわからないまま、ぴしりと固まることしかできなかった。
嬉しい。嬉しいのか。
先程、ペーリュも同じことを言っていた。これはつまり、リーファも。
更に続けて確認を続けたのだけれども、それどころかリーファは、
「僕、義兄上が魔力を注いでくれる時のことは、全部知ってたいです。だから、もし知らない間の僕が、僕の知らないことを知ってるのは、ずるいなって思います」
とまで言い出して。
つまり、自分自身にさえ嫉妬すると?
流石にそこまでは自分で自分を確かには出来ていないらしく、少々曖昧な返事を寄越したリーファは、しかし、ペーリュ以外は想像もしたくないと、非常に嫌そうな顔をして見せた。
アーディは焦って、そんな想像など止めさせる。
「ああ、うん、いいよいいよ、想像しないでおこう!」
そもそも、リーファは子を身ごもったばかり。そういう時期はどうしても不安定になりがちなのだ。あまり負担をかけるのはよろしくない。
一応、確認にと、子供を育てる為の魔力は、ペーリュから受け取ることに抵抗はないのか確かめようとして、出したたとえは、予想以上の拒絶でもって返されて。
アーディは悟らざるを得なかった。これはつまりリーファもまた。ペーリュをすでに選んでいたのだな、と。
そうである以上アーディに、出来ることなど何もなかったのである。
22
あなたにおすすめの小説
巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】
晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。
発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。
そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。
第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。
悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで
二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました
ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。
タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。
冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる
尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる
🌟第10回BL小説大賞(2022年)奨励賞。2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟
ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。
――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。
お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。
目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。
ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。
執着攻め×不憫受け
美形公爵×病弱王子
不憫展開からの溺愛ハピエン物語。
◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。
四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。
なお、※表示のある回はR18描写を含みます。
🌟第10回BL小説大賞での応援ありがとうございました!
🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。
BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。
佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。
ギルド職員は高ランク冒険者の執愛に気づかない
Ayari(橋本彩里)
BL
王都東支部の冒険者ギルド職員として働いているノアは、本部ギルドの嫌がらせに腹を立て飲みすぎ、酔った勢いで見知らぬ男性と夜をともにしてしまう。
かなり戸惑ったが、一夜限りだし相手もそう望んでいるだろうと挨拶もせずその場を後にした。
後日、一夜の相手が有名な高ランク冒険者パーティの一人、美貌の魔剣士ブラムウェルだと知る。
群れることを嫌い他者を寄せ付けないと噂されるブラムウェルだがノアには態度が違って……
冷淡冒険者(ノア限定で世話焼き甘えた)とマイペースギルド職員、周囲の思惑や過去が交差する。
表紙は友人絵師kouma.作です♪
平凡な俺は魔法学校で、冷徹第二王子と秘密の恋をする
ゆなな
BL
旧題:平凡な俺が魔法学校で冷たい王子様と秘密の恋を始めました
5月13日に書籍化されます。応援してくださり、ありがとうございました!
貧しい村から魔法学校に奨学生として入学した平民出身の魔法使いであるユノは成績優秀であったので生徒会に入ることになった。しかし、生徒会のメンバーは貴族や王族の者ばかりでみなユノに冷たかった。
とりわけ生徒会長も務める美しい王族のエリートであるキリヤ・シュトレインに冷たくされたことにひどく傷付いたユノ。
だが冷たくされたその夜、学園の仮面舞踏会で危険な目にあったユノを助けてくれて甘いひと時を過ごした身分が高そうな男はどことなくキリヤ・シュトレインに似ていた。
あの冷たい男がユノにこんなに甘く優しく口づけるなんてありえない。
そしてその翌日学園で顔を合わせたキリヤは昨夜の優しい男とはやはり似ても似つかないほど冷たかった。
仮面舞踏会で出会った優しくも謎に包まれた男は冷たい王子であるキリヤだったのか、それとも別の男なのか。
全寮制の魔法学園で平民出身の平凡に見えるが努力家で健気なユノが、貧しい故郷のために努力しながらも身分違いの恋に身を焦がすお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる