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幕間
x2-11・兄の葛藤⑪
しおりを挟むリーファがペーリュの伴侶となることは、元々決まっていることだった。
リーファが拒絶しない限り、いずれは、と。
表向きリーファがその立場となっていなかったのは、ひとえに彼自身の成長を待っていたにすぎない。なにせリーファは見た目からして成長が遅く、25になった今でさえ、十代中頃の少年のようにしか見えなかったのだから、大人になるまで待っているのだろうと、不審に思う者は誰もいなかった。
そんなリーファが子供を身ごもった。
たとえリーファ自身が認識していなかったとしても、相手など誰の目にも疑う余地はなく。リーファにそんなことが出来る存在など、はじめからペーリュ以外にいないことはあまりにも明らかで。明らか過ぎて。
リーファの今後の立場を明らかにする時期が遅くなったのは、それが故の油断だ。つまり、大きな問題だとはとらえなかったのである。
むしろいつでも構わないだろうというのがナウラティス側の認識で、それよりも数ヶ月後に迫った視察の準備の方をこそ重要視し、そのまま視察にも送り出した。
元より婚姻式も何もかも、すでに身ごもっている以上は子供が生まれてからの予定となっており、それを踏まえて公表時期も見計らっているような状況で。
まさか視察先でそれが問題となるなんて。
「これだから国の外は、と思ってしまうね」
ナウラティスの結界を軽んじている人間が、公国の、それも宰相位にまで就いていたのだ。
ここ数回のドゥナラルへの視察は、珍しくも何も問題が見つからずに終わっていたせいで、どうも形式的なものだろうと認識していたらしい。
今回のような悪事を見つける為の視察で、それを見落とすようなナウラティスの王族ではないのだけれど、優良すぎるのも考えものだということなのだろう。
特に今のドゥナラルの大公は、ナウラティス国内にいてもおかしくないような人格を有しているようだから余計に。
公女も、唆されさえしなければ、元々はそこまで突飛な行動に出るような人物ではなかったのだとか。
今、アーディの手の中にある報告書にも、今では随分と反省して、平民となり、市井へ下るようにとの大公の判断にも大人しく従ったと記してある。
同時に、公女を唆し、リーファの連れ去りを計画、実行した宰相に対し、どのように対処したかの詳細も。
罪人として捕らえられるのはもちろんのこと、ナウラティスの王族へ牙を向いたのだ。本来なら極刑でもおかしくはなかった。
にも関わらず、強制労働施設での終身刑で済ませたのは、まず、間違いなくリーファを慮ってのことだろう。
それを見定めてこの対処としたのだろう大公の慧眼には感服する他ない。否、そもそもリーファは彼の公女に対しても、最後には非常に同情的な様子を見せたということだから、それを目にしたうえでの判断だったのだろう。
リーファはおそらく、今回の件で誰かが極刑に処された、など知ったら、気にせずにはいられないだろうから。
慈悲深いと言ってしまえばそれまでで、しかしその反面、王族としての自覚も責任もいずれも伴っていないと言わざるを得なかった。
王族などという責任ある立場に立つ者は、時には非常な判断も必要となる。だが、リーファにはそんな決断など下せないことだろう。他でもないペーリュがリーファを、そう育てたのだから。
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