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第二章・ペーリュ視点
2-2・私のこと②
しおりを挟むそんな私だが、幼い頃からただ一人、憧れている人がいた。
非常に美しい人で、私は当時、彼ほどに美しい存在を見たことがなかった。
他者を圧倒できるほどの魔力の多さと、芸術品か何かのごとくな見た目の美しさはもとより、高潔で真っ直ぐに誰に対してでも対峙しているような人だった。
ただし、その実、自身に向けられる行為に対しては、非常に疎いところのある人だったのだとは、のちのち曽祖父から聞いた話。つまり、完全無欠というわけではなく、何処か少しばかり隙が見えるような人でもあったのである。
その人は曽祖父の母、つまり高祖母だったのだが、そうは言ってもいつ見ても若々しく、まるで少年のような瑞々しさを保ったままの人だった。同時に年相応の老成したような雰囲気も纏っていて。
私はもしかしたらそんなアンバランスさに惹かれていたのかもしれない。
彼の方に、何かをしたいだとか、何かをしてほしいだとか思ったことは一度もない。
否、そのようなことは考えないようにしていたと言えばいいだろうか。
なにせ、彼の方には生涯を共に生きる伴侶がいて、つまりそれが私の高祖父でもあるのだが、当たり前に私などが付け入る隙などどこにもなく、ただ、時折お会いして言葉を交わすぐらいが精々で。それでも私にはそれで充分だったのだ。
美しい人への淡い憧れ。
恋にもなりようがないような憧憬。
彼が私に対して、何かをしてくれたというわけではなかった。
それは勿論、幼い頃から幾度か。お会いする度に気にかけて頂いて、可愛がっていただいてもいたとは思う。ただしそれは、玄孫に対する態度を逸脱しないもので、私が特別に何か、だとかいうことはなかったように記憶している。
そもそも、お会いすること自体、そう頻度の高くないことだったのだ。言うならばただ、親戚として接しただけだった。
だから、特に何かきっかけがあって、彼に惹かれるようになっただとかいうわけではない。
そういう具体性のある何かではなく、本当にただ淡く、憧れていただけだった。
どういう話になって、また、彼が当時どのような状態であったのか。私が詳しく知ることはなく、ただ、彼が150を区切りとして、死ぬつもりであることを知ったのは、彼が件の年齢へと至る、ほんの5年ほど前のことで。その時に、彼にかかわるもの皆で、引き留める為の何かになればという思いがあったのだろう、彼に今からでも、子供を産んでほしいと願っているのを知って、私もまた、同じことを彼へと願った。
憧れの人だったのだ。死んでしまう予定だなんて寂しい。可能ならばもっと生きていて欲しかった。
とは言え、それらはそれほどに強い感情であったわけではなくて。出来れば、だとかいういささか意志の弱いもの。
つまり私は憧れの人に対してであっても、それほど大きく感情を揺らすことがなかったのである。
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