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第二章・ペーリュ視点
2-10・満ち足りた日々
しおりを挟むリーファと私は毎日一緒に眠っている。
そもそも、風呂にも共に入るのだ。夕食も勿論。
リーファは、基本的には日中、王宮に隣接している魔術師塔にて魔法、魔術の研究に勤しんでいて、私の元へと戻ってくるのは決まって夕方、少し早い時間だった。
時折、研究に熱中してか遅れることもあるのだが、そのような場合は必ず、警護の者より連絡が届くようになっていて、それは早く戻ってくる時も同じ。
特にリーファが学園を卒業して、魔術師塔に勤めるようになってからはより、リーファのことで私の知らないことは、何もないと言ってもいい状態となっている。
リーファは私の作った囲いの中で、日々のびのびと平穏に過ごしていた。
もっともそれは、リーファが元々あまり活動的ではなく、どちらかというとこもって研究などをしている方が好きな性質であったからで、そういう部分は彼の方に似たのだろうと曽祖父は言っていた。
なお、そういう曽祖父ご自身もそのような性質であるらしいので、遺伝というのは不思議なものだと私は思うばかりである。父親似の曽祖父と母親似のリーファは、髪の色が近い程度で、似たところなどほとんどないのに、そういった部分は似てくるのだなと。
魔術師塔より戻ったリーファは、いつも決まって、まず私を訪ねてきてくれた。
だいたい私は執務室にいることが多いので、ひとまずはそちらへと顔を出す。
私はリーファの顔を見るとすぐに、キリのいいところで仕事を切り上げ、リーファと共に過ごす時間を持った。
今のようにして使用している部屋へと移動して、二人きりの空間を堪能する。
私の両親や兄弟は王宮にはおらず、離宮で普段過ごしていて、リーファの家族は私だけ。
時に曽祖父が訊ねてくることもあるが、その頻度は高くなく、精々が月に2、3度あるかないか。
それ以外では、私はずっとリーファと二人っきりだった。
素晴らしい時間だ。リーファと共にいられるだけで、どれだけ過ごしたって飽きない。
リーファは、今日あった出来事や今、取り組んでいる研究のことを取り留めもなく私に話して、私もリーファに伝えて問題のないことをリーファへと語った。
他には共に読書を勤しむこともあったし、時折、ゲームに興じたりもする。
かと思えば、会話もなく、ただ寄り添いあうだけの時や、どちらかが転寝をしてしまうことだってあった。
そんな風にしてゆったりと時間を過ごし、夕食を共に摂り、風呂にも共に入り、そして寝台へも二人で横になるのである。
「おやすみなさい、義兄上」
そう言いながらほわりと笑んで目をつぶるリーファは幸福そうで。それは私までもを幸福で満たした。
「おやすみ、リーファ」
ああ、リーファと共にいるだけで、これ以上ないと思う幸福が日々、更新されていく。
私は毎日、毎晩、幸福で満たされて、そして。
「リーファ」
寝入ったリーファへと伸ばす手も、また、日々のことなのである。
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